たった1人の野球部

タイトル「たった1人の野球部」

西「先生、止めても無駄だぜ!」
洲崎「おう、そうか」
西「オレはもう決めたんだ、今日で野球部を辞めるって!」
洲崎「おう、そうか」
西「野球に未練がないと言えば嘘になる。でも、オレは今日で野球部を辞めるんだ!」
洲崎「なぁ、西島、よく聞け。辞めるも何も、この学校に、野球部は無いんだ」
西「このユニホームも、もう着ないと思うと、少し寂しいな」
洲崎「なぁ、西島。先生な、なんでこいつは毎日ユニホームを着てるんだろって、不思議に思ってた。でも、今日分かったよ、お前、1人で、野球部気取ってたんだな」
西「クラスの皆んなからも止めらた、お前から野球を取ったら何が残るんだって」
洲崎「なぁ、西島。そもそも、お前には、野球もないんだぞ」
西「甲子園目指して、あんなに練習してたじゃないかって」
洲崎「なぁ、西島。悪いが、うちの学校に甲子園は無理だ」
西「確かに、うちは弱小校だ。甲子園なんて夢のまた夢かもしれない。でも、不可能を可能にするんだ、そう信じて野球に打ち込んできた」
洲崎「なぁ、西島。うちの学校は絶対に甲子園には出られない。なぜだか分かるか?なぜなら、うちの学校は、アニメ、ゲームの専門学校だからだ。高校ではないんだ!」
西「確かにオレは、この学校に野球をやるために、入った」
洲崎「普通は、アニメーターとかゲームクリエイターになるために入るんだけどな」
西「毎日、夜遅くまで、白球を追いかけた」
洲崎「校舎の前の歩道で、1人でなんかやってたな。うち専門だから、グランドないからな」
西「ユニホームは毎日、血だらけさぁ」
洲崎「下がアスファルトだから仕方がねぇよ」
西「素振りをするたびに、される職質」
洲崎「まぁ、歩道だからな。危ねぇ奴だと思われたんだろうな」
西「そんなオレも、今年で三年生。最後の夏になるはずだった」
洲崎「普通、専門って、2年で卒業するもんだけどな。3年とかなれるんだなぁって、オレも不思議だったよ」
西「でも、もう、オレに野球は出来ない……」
洲崎「一応、聞くけど、どうしてなんだ?」
西「ヒザを、やってしまったんだ」
洲崎「道路で練習するからだよー。公園とかでやれよー」
西「先生、でも、オレには新しい夢が出来たんだ」
洲崎「おぉ、なんだ?お前、ゲーム課だからゲームクリエイターとかか?」
西「オレ、指導者として、この学校に戻って来るよ」
洲崎「まぁ、良いかもしれないな。一回、ゲーム会社に就職して、経験積んだ後に、専門学校の講師っていうのも、悪くないかもな」
西「そして、教え子たちを、甲子園に連れてってやるんだ」
洲崎「それは無理なんだよ!ここ専門学校なんだよ!高校じゃねぇんだよ!」
西「先生、最後にオレの球、受けてくれないか」
洲崎「まぁ、良いけどさ。先生、こう見えても中学までは野球部だったんだ。おもいっきり投げて来いよ。お前の3年間、ぶつけて来いよ!」
西「いくよ、先生。それ!」
洲崎「めちゃくちゃ女投げだな!!」

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