見出し画像

シンプルに羨ましい

楽しみにしてた格闘技の試合があった。

 開始前からとんでもなく盛り上げてたある選手が負けてしまった。完全に力負けだ、運悪く1発が入って負けたとかではなく、実力で競り負けた内容だった。この試合は久々に楽しみにしていた。

 対戦相手の選手ことも好きだった。他の団体でチャンピオンになった時から見てた、単なる格闘ファン目線だけど。

 1戦1敗のある選手より、9戦6勝3敗の相手選手のほうが実力は上なのはわかっていた。だけど応援してる選手が勝つかもなと思っていた。前回の敗戦からアメリカでの修行を経て、本人も自信満々、周囲の関係者も専門家も「圧倒的に戦闘力を増した、余裕で勝てるだろう」と太鼓判を押していた。

 しかし、実際は何も出来なかった、立ったまま漬けられてレフリーがブレイクしなきゃ身動きすら取れなかった。壁際で警察に押さえつけられてる容疑者みたいになってた。しかも相手選手は試合中に両手を骨折していた。完敗だった、3ー0のフル判定負けだ。

 試合後にその選手は泣いていた、今後は今まで大口を叩いてきた反動も来るだろう、その選手に散々馬鹿にされていた選手、そのファンから倍返しの批判・非難が殺到するだろう。

 たけど人目を憚らず泣いているある選手を見て、羨ましいなって思ってしまった。そこまで熱くなれる、自分を懸けられるものがある。

 生きてるって感じがするじゃないか、好きなことを命懸けで挑戦して、自信を持って挑んだ試合で完敗し、悔し涙を流す、そしてまた練習の日々を送り、強くなる。

 「こんな気持ちを味わえるのはリングに立つ勇気があるやつだけ」

 「頭突き男」がいつも負けた後にいつも言っていることだが、今回ばかりは本当にそうだなって思った。

 人違いで「頭突き男」が来る前の俺なら、今回の平本選手の負けもきっと揶揄していたと思う。「頭突き男」が来なかったら俺はきっとそういう視点でいつまでも世の中を見ていた。

 結局のところ、俺は頭突き男に「廃悪修善」を学ぶ機会を貰ったということになる。

 頭突き男には感謝してる、これもまた本心だ、人生をそこから少なからず学んだから。

 元々大して頭突き男のことを知らなかったから「こいつはなんで人気があるんだ?」って疑問で仕方なかったけど、知っていくと人気や支持があることに納得できる部分も結構あった。

 そして、自分が本気で熱くならなきゃ、他人なんて巻き込める訳がない、今回の試合、そして頭突き男からはそういうことも学んだ。

 冷めた世の中、なにかと暑苦しいと嫌厭される世の中だけど、芯に熱い気持ちがあるからこそ人を感動させられる、巻き込める、感動するものを作り上げられるのは間違いない。

 静かな炎でも良い、毒ガス撒き散らす炎でも良い、ただ炎が自分の中で燃えてないと話にならない。

 負けたといえど、展開のない試合といえど、ある選手の試合からは感じるもの、学べるものがが沢山あった。

それが「生き様」ってやつなのかもしれない。

俺はシンプルに燃えてる人が羨ましい。

俺も燃えたい、とにかく燃えたい。

ナイストライな試合ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?