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4年後、息子の悔しさと共に雪辱を

パシュート

3人一組で隊列を組んで滑りタイムを競うスピードスケート。

先日閉幕した北京2022オリンピックで私が1番楽しみにしていた競技が、女子団体パシュート。

前回の平昌五輪で金メダルを獲得したメンバーで今回も挑み、決勝に駒をすすめた。

その決勝が、息子(3歳)を保育園に迎えに行った帰りの車中で始まった。

家までは目と鼻の先ではあったが、私は車を止め、カーテレビを指さし、後座席のチャイルドシートに座る息子に言った。

「この白い服を着たお姉ちゃんたち3人が、日本を代表して頑張ってくれてるんだよ。一緒に応援しよう」。

平昌五輪の時にはまだ産声をあげていなかった息子はポカンとしながも、私の熱い想いに、こくんとうなずいてくれた。

金メダルをかけた戦いの幕が切って落とされた。

狭苦しい車内で、私は声をあげて応援した。

息子もつられ、「がんばれーがんばれー!」と。

日の丸を背負った女子選手たちが、ゼロコンマ何秒かでリードしている。

最終コーナー。

優勝は、頂点は、金メダルは目前!

と思ったその時、選手の1人が転倒。

私は「あぁーーー!」と車外まで響き渡らんばかりの声を放ち、両手で頭を抱え込んだ。

声をあげて応援していた息子も口を閉ざし、車内が静まり帰った。

「悔しいね、負けちゃった。でも2番、銀メダル。お姉ちゃんたちすごいよ!」

私は自分自身に言い聞かせるかのように息子に言い、車のエンジンをかけアクセルを踏んだ。

家の駐車場に着きリアドアを開けると、チャイルドシートに座る息子はうつむき加減。

「どうした?」私がたずねると、息子は目にいっぱいの涙をため、大声で泣き出した。

私は急いで抱きかかえ「どうした、どうした?」何度聞いても、息子はわんわんと泣くばかり。

まさかと思いながら「お姉ちゃんたちが負けたのがイヤだったの?」そう聞くと、息子は絞り出すような声でこう言った。

「くやしい」

夕日が差し込む部屋の中で、私に抱きかかえられている息子は、ひとしきり泣いていた。

4年後、彼女たちの悔しさとともに、息子の悔しさも果たしてほしい。

そんな切なる思いを胸に秘めながら、心身ともに成長している息子の頭を何度もなでた。

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