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『月日は残酷』を突きつける息子

暖かい日差しが部屋に差し込んでいた昼下がり。

ノートパソコンのディスプレイに映し出された3年間の思い出を、妻と息子(3歳)と見ていた。

息子が産まれた時や離乳食を始めた時の写真。

動物園やキャンプに行った時の写真など、3人の思い出の空間には笑顔が飛び交い、暖かい風が渦巻いている。

見終わった後、妻が息子に「トットと出会った時の写真も見たい?」と。

意味を理解しているのかは疑わしいが、「見たい!見たい!」とはしゃぐ息子。

10年程前の写真がディスプレイに映し出されている。

「若いね。この頃も楽しかったよね~。」

この言葉に同意する私と思い出に浸る妻に、息子が聞いてくる。

「カッカはどれ?」

「これだよ。」若かりし頃の自分の写真を指さす妻。

眉にしわをよせた息子が言う。

「ちがう、カッカじゃない。」

「これカッカだよ。」ディスプレイの中の自分と、今の自分を交互に指さす妻。

息子は写真の妻をもう一度見た後、横に座っている妻の顔をじっと見て一言。

「今とぜんぜん似てないね。」

今とぜんぜん似てない?

どういう意味なんだろう?

3人の、イヤ、妻と私2人の空間に冷たい風が吹き込んできた。

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