アストロノート蒟蒻を食う訓練
春雨や都庁の窓は暗すぎる
立子忌のサラダボウルに盛るひかり
声あげて笑ふをんなの春炬燵
豆の色うつすらさせて大福は
つちふるや刺繍のつぼみまたたいて
淡水魚専門店や水温む
たつしえんと鞄を落とすイースター
万愚節おとのおおきな鳩時計
眠かつた世界史（ロマノフ朝の転機）
ナイターのメガホン売りも春の風邪
焼き網の焦げを落としている春夜
まるめろや主義があるんだかないんだか
居残りの弓道場の揚雲雀
こうさぎを貰つて変える鳥曇
朝蜘蛛がピアノの蓋を横切りぬ
宇宙では液体ごはん食べてゐる
三伏や酒盗の皿に母の箸
乾電池銜へたやうな油照
白魚のやうな手つきの後手が指す
ヘアヌード解禁お花畑かな
わかつたと叫ぶ警部と探偵と
汗かわく暇なきまで波に乗る
横浜も新横浜も驟雨かな
紫蘇摘んで日記を書いてけふ終わる
おとうとに受難の続く童話かな
空豆やさやえんどうや官僚や
馬車で来て馬車で帰つて行く鸚鵡
月涼し泥人形のダンスかな
水飲んであとのまつりとなりにけり
袖にした女男（めを）も卯の花腐しかな
夏の山変身前のポーズかな
麦秋のホットワインに舌を灼く
蛍狩りツアー深夜の飛行船
花水木果てコンビニへ寄る気配