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7インチレコードの力強さとは?

こんにちは、こんばんは。

これまで、もっぱらレコード(LP)の写真とその音楽についてやら、個人的体験を書いてきましたが、今回はちょっと毛並みを変えてみようかなとレコードそのものにスポットを当てるようなタイトルを付けました。

そもそもで皆さんレコードにはいろいろな種類があるのをご存知でしょうか?

こんな書き方をすると専門家のような言いぶりになってしまいますが、なるべくシンプルに説明させていただきますね。

1-1.SP盤とVinyl(ビニール盤)

まずは材質での違いでSP盤とVinyl(ビニール盤)があります。

<SP盤>

Standard Play盤と言われますが、これは一般的に蓄音機で聞かれるようなレコードで回転数が78rpm(1分間に78回転)で、材質がシェラック混合物という、カイガラムシが発する樹脂を中心にできたものらしいです。これが経年変化に弱く、そもそもで割れやすいという特徴でした。

<Vinyl(ビニール盤)>

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こちらは上記のSPとは異なりポリ塩化ビニルで作られたもので、シェラックに比べ弾性があり、割れにくく丈夫で、しかも薄く軽くなり、円盤そのものもシェラックに比べ加工しやすく、円盤そのものを大きくしたLP盤や、真ん中を大きく開けたシングル盤など用途によってさまざまな形で作られました。

※本来はこういう分け方ではないのですが、便宜上です。

なんで、海外の方がレコードを"Vinyl"と表現するのも、上記からなのと、実はそのビニール盤にも種類があるからなんですよね。日本では、「レコード」と言ったり、「LP」と言ったりしますが、これだと実は、上記のSP盤を含んでしまったり、シングルやEP盤と言われるサイズ違いのものを逆に含まなかったりしてしまいますね。

1-2.Vinyl(ビニール盤)の種類

これはざっくりですが、3種類あると思って頂ければです。

<LP>

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Long Playの略なんですが、こちらは回転数が33rpm(1分間に33回転)のもので直径が12インチ(30センチ)ないしは10インチ(25センチ)で、曲数も片面20分ほど録音できる。いわゆる今、多くの方が想像するあの大きなレコードジャケットの中にあるレコードがコレ、ですね。

<シングル盤>

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便宜上シングル盤としていますが、サイズが7インチ(17センチ)で45rpmのものです。基本的には片面に1曲でもう片面にカップリングの計2曲、5分づつ程度(最大は7分くらいらしいのですが)のものです。特にアメリカではジュークボックスの普及とともに、真ん中がそのオートチェンジャーに対応するために上記のLP盤よりも大きく穴を開けられ、ドーナツ盤として愛称されるものが多いです。(一方で1960年代のイギリス盤を始めヨーロッパ各国や日本盤は家庭で聞かれることが多かったのか、中心に折り取ることができるLPと同じ大きさの穴がついたものが主でした)

<EP盤>

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上記のシングル盤と大きさや回転数は同じですが、数曲収録されたもの。あるいはLPの10インチ盤。この辺は定義付けがもう少しされてもいいものかもですが、上記と比べると個体数は少ないかもです。割とイギリスを除いたヨーロッパ盤ではこういうのがあるイメージです。

1-3.レコードはLPから入り、7インチシングルにハマれ!

まあ、最後になんですが、要はもしレコードを聴いてみたいという方、つまり初心者の方はまずLP盤から始めましょうということなんですよね。やっぱりアルバム単位で聞いたりすることと、最近、レコード熱が高まり、レコードの中古価格もちょっと高くなって、1000円以下だと少なくって来ている気がするからです。

アルバム単位という話では、例えばビーチボーイズの「ペットサウンズ」という大名盤を取って考えてみましょう。最初、自分はCDで、確か某レンタルショップ(Tカードを使うところ)で借りたのをiPodなりに取り込んで聞いたのですが、"God only knows"の順番に不思議さを感じてました。もちろん、この曲から何となく第2章的な感じはしたのですが、、、その後レコード(LP盤)を買って気付いたのですが、実はB面の最初がその曲だったんですね。これはすごい発見でした。

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アルバムを続けて聞くのと、レコードで聞くのはやっぱり違うなと思うのは、一つ、聞く間にインターバルがあるということです。例えばクラシックでも実際のコンサートでは交響曲なんか、2番と3番との間に少し休憩があるように、レコードでは休憩があるんです。その休憩、インターバルがあるからこそ、一息ついて、集中してそのアルバムなりレコードに向き合えますし、ましてや、当時のミュージシャンたちもレコードでアルバムを作る、このインターバルを意識して一つの作品を作り上げていったことから、レコード、LP盤でその音楽に向き合う必要があるのかなと思います。もちろん本当に名盤と言われるようなものはそのような価値観も超えて届くものもあるのですが、やはりレコード時代のアルバムはそのように聞くことが求められるような気もします。

だもんで、専らLP盤ばかり収集して聴いていたのですが、最近はすっかりシングル盤にハマってしまいました。これは最近、50~60年代のアメリカンミュージック、特にソウルにハマる様になったからなんですね。もうこの時代の7インチシングル盤でソウルを聴いてしまうと、LPには戻れない!っていうくらい、力強い音が出るんですよね。音質がいいとかクリアとかではなく、もうとにかく力強い、つまり、ベース音とドラムがLPと比べてしっかりとなっているんですよね。

なんでなんでしょうかね…、自分なりに考察してみました。

2-1.シングル主体の文化

さきのシングル盤の説明で、アメリカではドーナツ盤が多いと言いましたが、これはやはりジュークボックスの普及率の高さではないかなと思います。特に第2次世界大戦後から1950年代にかけて、ジュークボックスが急速に普及して、いわゆる若者が集まるようなバーを中心にそれが行き渡っていったと考えれます。他方、日本ではその時代では高価で輸入に頼らずを得なかったことと、ヨーロッパでは第2次世界大戦後の荒廃からの立ち直りと東西冷戦もあったりとまだ音楽を娯楽として浸透しずらかったこと、正し、イギリスではそういったことはなく、一方でアメリカほどの人口も多くなくまだニーズが少なかったことがあるかと思います。

2-2.ジュークボックスで音楽を聴くということは?

これは想像によるものですが、一つは音質が良くないということと、もう一つはアンプとスピーカーが一体化しているということ。当時はまだ、音の増幅には真空管が使われており、電力が弱く、代わりにスピーカーは能率の高い(音の伝える力が高い)もので補う方式でしたが、ジュークボックスではその構造柄、もちろん様々な曲を収納するため大型化は図られましたが、やはりスピーカー一体型のものも大きく能率が限られたものも多かったため、シングル自体に音の強さを求めたことでシングル制作そのものにも、そういう技術的な側面で焦点があてられたこともあると思います。

2-3.シングル文化の発展

もう一つというか、やはり大きな理由はシングル文化が発展していったことだと思います。音楽をかけるラジオが曲主体で流していたこと、アルバム(LP)が高価であったこととか、人種や階級による聴く音楽に違いがシングル文化を醸成したのかなと思います。

当時の若者たちは、流行りの歌をラジオで聞き、それをみんなで共有するためにバーのジュークボックスでかけるというサイクルがあることと、ボブ・ディランのようなフォークミュージシャンは早くからアルバムでの曲制作でしたが、ソウル系では、LP文化の根付きはなく、所謂70年代のニュー・ソウルでのアルバム文化が花開くまではもっぱら、上記のようなサイクルで音楽が求められました。

2-4.フィル・スペクター、ビーチボーイズ、モータウンのシングル盤

シングル盤を聴くなら、まずは彼らのを聴いてください。明らかに意図して、シングル盤の方へ主眼を置き、作っていたような気がします。

フィル・スペクターはラジオ→ジュークボックスでの音楽、つまり現場で踊れる音楽を意識していたはずです。モノラル録音への偏狂(これはビーチボーイズのブライアンにも通ずるのですが)やウォールオブサウンドと言われる録音方法はまさに、ジュークボックスで聞かれることを意識したものです。それを習ったブライアン・ウィルソンもそういうシングル盤を主眼として曲を作り上げていきました。(初期ですよ、それこそTODAYからペットサウンズに至るころにはアルバムを意識した曲作りでしたので。ただアメリカのシングル主体の音楽文化はやはり無視できるものでもなかったのかも)

一方でモータウンも違った理由もありますが、やはりフィル・スペクターやビーチボーイズのコーラス力も吸収しつつ、シングル盤を作っていきました。その違った理由というのは、録音方法だと思います。ベースが特に際立って聞こえるのですが、これは、もちろん世界一のベースプレイヤーでもあるジェームス・ジェマーソンによるところもありますが、何よりも、ギター・ベースなどはライン録音だったことです。ライン録音というのは、こういうエレクトリック楽器はいったん音を出すためにアンプを使って音を出すのですが、モータウンでは録音スペースが極度に狭く、またマイク数も少なかったため、ラインで音が拾えるものはライン、いわゆるアンプで出力された音を拾うのでなく、ミキシング卓へさして音を拾われたことも大きいと思います。あとは、当時のモータウンのマーケティング施策ですかね。白人にも聞かれる音楽を主眼していたこととか様々な理由が重なっていると思います。

と、様々な自分なりの考察がありますが、あとはとにかく聞いてみることです。元も子もないことを言ってしまいましたが(笑)

でも、本当に音が違います。それがわかる1枚を紹介させてください。

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Frederick knight の"I've Been Lonely for So Long"というシングルです。これはメンフィス・ソウルの雄であるスタックスレコードから1973年に発表されたものです。スタックスは1960年代のブッカー&ザMGズがバックバンド時代のシングルで言うと「青盤」と言われるシングル盤の中心が青い紙の貼られているものが音質とその演奏力の高さからシングル盤としての力強さにも定評あるものが多いのですが、この曲は本当にシングルで聞くと化けました。その後たまたまLPでも手に入れたのです、全然違います。やはり、出だしの音の強さとベースの輪郭、そしてドラムの高音のクリア度がLPと比べて段違いにいいのです。曲自体もいわゆるスタックスの南部丸出しの泥臭いというよりも、もちろんどこか田舎臭いシンプルさはあるのですが、綺麗なメロディーと優しく少し高い声で歌う感じにとても好感が持てます。

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なので、LPを買った後でも、これはもっぱらシングルで聴いてしまいます。

※とか言ってますが、ぜひアルバムも聴いて下さい。1970年代はマーヴィン・ゲイ、スティーヴィ・ワンダー、カーティス・メイフィールド、ドニー・ハサウェイの大名作がありすぎて他のソウルミュージシャンが、というかファンクもJBが完全に開眼し、p-ファンクやらスライ、アースとかもうブラックミュージック界隈はみんな怒涛の勢いすぎて、、、スタックスは基本アイザック・ヘイズを除いては、見過ごされがちですが…いっぱい良い方がいるんですよ…涙
あと、アルバムジャケットの写っている方が歌い手ご本人ですが、アウトレイジの加瀬亮にも似た雰囲気をもっているのは…まあ、アレですが笑。甘〜い声ですよ。

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