見出し画像

株主利益を無視する経営陣の企業③

株主利益を無視する経営陣の企業①
株主利益を無視する経営陣の企業②

前回の記事では、現金を大量保有しながら株主に還元していないという開かずの金庫となっている企業の例を紹介した。今回は、何故そのようなことが起こっているのか、どうすれば投資家への不利益を避けられるのかを考察していく。

*このような企業は無論、経営陣が面と向かって株主利益に反することをします、等と表明するはずもないし、彼らに本当の目的があるとしても外部の人間からしてみれば不明瞭である。そして筆者もあくまで個人投資家であり、法律等の専門知識は持ち合わせてはいない。そのため、この先はあくまでも推論に過ぎない部分が多々あることに注意されたい。

株主構成と保有割合について

経営陣が株式の50%以上を保有しているなら配当金に関して単独で可決できることに留意しておく。

引用:SaasLOG

丸八ホールディングスの場合は、持ち株会社と個人保有を合わせて2/3を保有している。

引用:kabuken

考えられる経営陣の目的

①非公開化して資産を独占する

外部投資家を失望させるような株価の下落を意図的に容認することで、経営陣は非常に割安な価格で市場に流れている全ての株式を自前で買い取り会社を非公開化することができるかもしれない。

②相続税を減らす

外部投資家を失望させるような株価の下落を意図的に容認することで、相続にかかる税金を減らすことができるかもしれない。上場していない非公開会社である場合と公開会社では、株式を相続する場合の評価方法が異なるためである。

公開会社の評価方法
市場の時価による

非公開会社の評価方法
非公開会社に対してはいくつかの評価法の中から一つが選ばれる
①純資産価額
②類似業種比準価額
   類似業種の上場会社の平均と1株あたりの配当金、利益、純資産を比較
③配当金に基づく評価

丸八ホールディングスが非公開会社と仮定すると表の大会社にあたる。評価方法は、おそらく純資産価額より類似業種比準価額の方が低くなるため、そちらが評価方法として採用されるが、それでも純資産に対する評価を免れない(丸八ホールディングスは市場価値に対して負債を差し引いても2倍の現金同等物を保有している)。

株式市場で意図的に人気のない企業を演じるメリットは確かにありそうだ。

引用:アタックスグループHP

対策

最初に断っておくと、経営権を完全に握り、還元しない経営陣に対して個人投資家ができることは唯一、そのような企業を避けることである。
通常、事業運営には大きな期待を持てないが、保有資産が市場価値を上回るような企業に投資する場合、個人投資家は今は不人気でも”いつの日にか”市場が正当な評価を下すことを期待して買う。その”いつの日にか”とは何かポジティブなニュースをきっかけにやってくることが多い。それをカタリストという。例えば企業が自社株買いを発表する、割安だと判断した機関投資家が大量の株式を取得する等だ。

しかし、経営権を完全に握り、投資家に還元しない企業にはカタリストが起きる可能性は低い。なぜなら、突然経営陣の気が変わって自社株買いを始めることはなさそうだし、機関投資家が株式を購入すること*は決してないからだ。
*機関投資家が影響力を行使できないため。経営への口出しや、レバレッジドバイアウト(借り入れを行い企業を丸ごと買収してから、資産を株主に還元する)ができない。

企業の経営状況が良く、一株当たり利益EPSを順調に伸ばしているなら他の投資家の注目を集められる可能性は大いにある。しかし、丸八ホールディングスのような10年もの間ビジネスで無風状態の企業にはそれも期待できないのである。

現に、丸八ホールディングスの株価は純資産額だけで評価しても一株当たり¥1600の価値はあるが、2016年からの株価チャートを見るとおよそ800円前後で推移している。2016年から7年間じっと我慢して保有していたとしても全く株価が変わらない。このような状況に陥ることをバリュートラップと呼ぶ。投資家はバリュートラップを回避するためにカタリストの可能性を考慮しつつ投資する必要があるということだ。

引用:日経新聞HP


まとめ:投資を避けるべき企業の特徴

簡単にまとめると、企業の保有資産に対し市場価格が割安な銘柄を調査する場合、以下のような状況なら投資をお勧めできない。

  • 経営陣が完全に会社を支配している (カタリストが見込めない)

  • 経営陣が株主還元に消極的 (現金があるのに自社株買いを行わない)

かつ、ビジネスについて以下のいずれかを満たす。

  • EPS成長に期待できない (少なくとも過去10年で30%のEPS成長が必要)

  • 売上高が過去10年と比較して減少傾向である

  • 過去10年間で赤字を計上している


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?