「わたし」がいる仕事って楽しいんだよ。
自分を押し殺して働かなくていいんだよ。

もし、あの頃の自分に会えるならきっとそう伝える。

新卒で配属されたのは総務。それから、人事や内部監査いわゆる管理部門でずっと働いてきた。

会社を主語に、人の言葉を話していることが多かったように思う。会社で書く文章はなにかを一方的に伝える文章だ。

「いつ」とタイピングすれば「いつもお世話になっております」と単語登録された文章がでてきて、ハンコを押したようにメールを送る。

そんなわたしが、編集者として働くことになったのは３年半前。そしてコラムを１年担当したあとに、漫画の担当になった。

例えば次の記事のテーマを決めるとき、ネームがあがってきたとき、「みたむらさんはどう思います？」と聞かれる。当たり前だ。私が初心者だなんて関係なく、ライターさんから見たらわたしは担当編集者なんだから。

人事のときのように「就業規則がこうなので…」なんていうことはできない。
偉そうに漫画の技術を語れるような知識もないし、私は絶望的に絵が下手くそだからお手本を示すこともできない。

正解があるわけじゃない世界で、主語をわたしにして思ったことを話すこと。
それはとてもこわいことだった。

最初はおそるおそる、必死に見て考えて伝えることをやっていたら「これは書きたい！」「ありがとうございます、相談してよかったです！」そんな言葉がもらえた。

絵が下手で、漫画の編集経験もない。でも「読むこと」だけは大好きだったから、その人にとって１番の読み手になること。
それが数少ないできそうなことだったのだ。

最初からうまくできたわけじゃないけれど、「わたし」を主語にライターさんとコミュニケーションを繰り返しているうちに、編集は「会社の仕事」ではなくて「わたしの仕事」になっていった。

同時にライターさんとの関係も、「あなた」と「わたし」に変わっていく。

「いつ」と単語登録された言葉は使わなくなった。

◎◎さんの昨日のブログおもしろかったなぁと思いながら「おはようございます」とか「こんにちは」とか、会ってちょっと話すような気持ちでメールをするようになったから。

ライターさんの大切な想いが読者に届くように、作戦会議をして、SNSでライターさんの想いが伝わった！と思うコメントを見つけると本当にうれしくて、一緒にヒットを喜べるようになった。

子育てのこと、SNSやブログの運用のこと、うちの連載とは関係ない書籍化のこと、いろんな相談を受けたりすることも増えた。

副編集長になったときにお祝いをしてくれた人、私が担当していた連載が書籍化したことを喜んでくれた人、クラウドファンディングを応援してくれた人。どれもライターさんたちの気持ちがとてもうれしかった。

発注者と受注者ではない、１人と１人の関係がそこに生まれていた。

そんなライターさんたちのおかげで、どんどん仕事が楽しくなった。

人生の中で編集者になりたいと思ったことはなかったし、今も編集者という肩書きにあまりこだわりはない。適正にも自信はない。

だけど、担当するライターさんの隣にたって一緒にヒットを狙い、悔しかったりうれしかったりを共有できる。ライターさんの成長を近くで応援できる。

そんな編集者という仕事が、大好きになった。

他の誰でもない「わたし」として、「わたし」の意志ある仕事をすること。
仕事に「わたし」の想いを乗せて届けていくこと。

その楽しさと喜びを、私はコノビーのライターのみなさんから教えてもらったのです。

私にとってコノビーは
そんなライターさんたちと出会わせてくれた場所。
一緒に働く大好きな友人ができた場所。
私を育ててくれた場所。
とても大切な子どものような存在です。

その場所を離れて、これから新規事業で新しいメディアの立ち上げをすることになりました。

まださみしい気持ちもいっぱいですが、ライターのみなさんと「わたし」の関係はきっと変わらない。

だから、場所が変わってもいつかまた「わたし」の仕事を一緒にする機会があったらいいなと思っています。

今後について少しだけ補足をすると、私が担当し書籍化した「本当の頑張らない育児」の書籍プロモーションについては、作者であるやまもとりえさんのお手伝いを個人として行っていきます。

子育て・家族・夫婦のパートナーシップ・働き方は私自身にとっても大切なテーマで、もともとプライベートで活動していたものでもあるので、これからまたプライベートでワークショップやコンテンツの企画編集など行っていこうと考えています。

新規事業のメディアは来年オープン予定なので詳しいことはまた改めて。

そんなわけで、異動のご報告でした。
これからも応援よろしくおねがいします。