月刊佐藤良唯 vol.1

4月、僕は走っていた。
何かを忘れようとして、
今、目の前に起きている問題から目を背けようとして。
立ち止まると、
何かが自分の中で壊れそうな気がして。
とにかく予定を詰めた。
走り抜いた、4月だったと思う。

これは僕の恋愛の話だ。

会えない時間がもどかしい。
でもやりたい事には真っ直ぐ突き進んでね。
あと、あなたは頑張り屋さんだから頑張るのもいいけどちゃんと休みなよ。
ゆるく頑張ってね。

彼女はそう言って僕の元を去っていった。

悲しいかった、切なかった。
別れたくないと言いたかった。

でも、
不安定な世界へと再び足を踏み入れた自分にその権利はないのだと思う。
結婚をし、子供を産み。幸せに暮らしていく。
それが彼女の夢であり望みだ。

僕にはまだその望みを叶える程の人間としての度量はなかったし、覚悟もなかった。
ただ漠然とこの人と一緒に歳を重ねていけたらという思いだけだった。

何も言えなかった。
ただ幸せになってください。
自分よりも素敵な人はきっといるはずだと。
あなたは素敵な人だから。

そう思った。


そして阿保ほど酒に溺れた。
酒を飲んで、酒を飲んで、酒を飲んで、酒を飲んだ。

気がついたらバスで寝過ごし、

新座にいた。

暗かった。
ここはどこだ?まぁいいか。
トイレへ行きたい。

とりあえずコンビニへ行きトイレへと言った。
小便をしているとバランスが取れなくなってトイレのタンクへ思いっきり頭を打った。
と言うか顔面を打ち付けた。

もうやぶれかぶれである。
自分のことをハムレットのように感じた。
練馬のハムレット。
もしかしたらこの日ぐらいはそう思っても許されるのではないのかすら思った。

そして練馬のハムレットはコンビニを出た。

警察官2人に囲まれた。
帰れますか?と。

初めてだ。
警察官2人に囲まれたことは。

俺は気狂いなのか?
気狂いを演じているのか?
酔っ払いなのか?
酔っ払ってるふりをしてるのか?

いや違う。
いま一番大事なのは、

帰れるか、帰れないか、それが問題だ。

なんやかんやでバス停へと向かい。
家路へと着いた。

この瞬間、
張り詰めていた糸が切れたようにガクッと躓いた。

というか、我に帰ったのだと思う。

現実に目を背けて、
やるべきことから逃げ、
酒に溺れた自分という情けない人間が1人。

六畳の部屋にただよっていた。

翌朝、目が覚めた。
身体が動かなかった。
左目がパンパンに腫れていた。

3月下旬からほとんど休むことなく、
自分に嘘をつき、走り抜いた代償だと思う。

本当に大切な人とは、失って初めて気がつくものだとそんな当たり前の事を25歳にして初めて気がついた。

それから2日間、眠り続けた。

あぁ、良く寝た。
酒を飲もうと思った。

今日はやめておこう。

そうして、
牛乳1リットルを飲み干した。

お腹がギュルギュル言いはじめた。

練馬のハムレット。
いや、傷だらけの天使かもしれない。

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