見出し画像

【映画感想】とうかぶ観てきた

新作歌舞伎 刀剣乱舞 月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)を観てきました。
シネマ歌舞伎2024年度の一発目で最新作、多分今期の一番の目玉なのでは。
歌舞伎も刀剣乱舞も歴史モノも知らない…という方でも映画館で気軽に楽しめる一本です。

公式サイトはこちら。

あらすじ
時は西暦2205年。室町時代後期の歴史を改変するために時間遡行軍が出撃した報告を受け、審神者は三日月宗近(みかづきむねちか)、小烏丸(こがらすまる)、髭切(ひげきり)、膝丸(ひざまる)、同田貫正国(どうだぬきまさくに)、小狐丸(こぎつねまる)の六振りを呼び出し、永禄年間(1558~1570)に向かわせる。しかし三日月宗近は、逡巡する様子を見せる。実は時の将軍足利義輝は、三日月宗近の最初の主であったとも、その愛刀であったとも伝わるためである。

やがて永禄の世に顕現した刀剣男士たちは、足利義輝や紅梅姫、執権の松永弾正、久直親子たちと交錯しながら、歴史を守るための戦いに身を投じていく……。

シネマ歌舞伎公式サイトより

ゲームそのままにキャラクターを再現する2.5次元とはまた違う、歌舞伎ならではの表現やキャラクターの再現がとても良い!
そもそも刀剣を扱う演技の多い歌舞伎と相性が悪いわけがない!和の楽器の生演奏が合わないわけがない!布からこだわりまくる衣装が映えないわけがない!
どうしても漫画やゲーム原作となると尻込みしてしまって舞台は行けず(とうらぶも歌舞伎もド素人なので)、予告で気になって観に行ってから生でも観たかった…と思うなどしています。

※以下、歌舞伎は映画館でちょこちょこ観ている程度、刀剣乱舞はリリース当初にちょこっとプレイして実写映画を観た程度のド素人の感想です。

三日月宗近、良すぎんか?

浮世離れした感じはゲームのイメージ通りなんだけど、鍛刀シーンの直後、付喪神っぽさというか無機質な感じがあるのに審神者との会話で人間らしい葛藤が垣間見えて、最後はニヤリと笑ってみせる。なんだこの引き込まれるような魅力は。
尾上松也さんの演技力よ。
原作のイラストや実写映画ではほんわかおじいちゃん(人格)というイメージだったんだけど
歌舞伎では付喪神の神の部分がちょっと濃いめだな、と感じた。
それにしてもあの髪型をそのまま再現じゃなく、要素を残しつつポニテにしたの最高では…髪飾りやアシンメトリーなサイド、てっぺんのぴょこんと跳ねたところ…
衣装も時代に合わせつつゲームのイメージにも寄せつつ歌舞伎らしさもありで動きも美しい。
袴の飾り(貼り付けてる模様みたいの)が足を運ぶたびに揺れてるようでめちゃくちゃ格好いい!
そして裃!三日月宗近に裃を着せるという発想がなかった!一人だけ裃を着ている!
ふんわりにこやかな原作の雰囲気とはちょっと違って、凛々しくてどこか儚げなお顔なのも素敵。ポスターのビジュだと眉毛は細めで緩く弧を描きつつ真っすぐ(三日月っぽい?)なのに、実際の舞台上だと少し太めになってキリリと上向きでまた雰囲気が違う。
ほとんど笑顔はないんだけど、メタ発言で客席に向かってあれこれしてる時と、最後に見栄を切った時に笑顔が出るのが良くて
特に最後のニヤリがすげーいい!(語彙が消える)
昔の主である義輝の前ですら微笑みもしなかった男が、あの瞬間にニヤリと笑うなんてずるいだろ…自信ありげにも安堵にも見えるし、どこか厭世的にも見えるし、それこそ歌舞伎本丸においでくださった審神者の皆様に向けてのサービスにも見えるし…
三日月宗近の人間味みたいなものがたまらんかったです。

紅梅姫の恋

三日月宗近に惚れるのはよう分かる。
むしろ惚れない理由がなかろう。
落ちぶれてもなんとか兄・義輝と仲睦まじく暮らしてたけど従者以外に他人との接点もなく、時間遡行軍の急襲から助けられたと思ったら兄の将軍への道を予言され、仕えることは出来ないと言いつつも都に移っても面倒を見てくれるんだぞ…
ほぼ初めて外の世界の人と知り合った上に、未来世から来てる&付喪神なのでミステリアスな魅力があり、身の上を明かさないからこそ惹かれてしまう
そして何より、下心や野心がないイケメンなのである。
そりゃ惚れるわよ…都に出たらありとあらゆる理由から紅梅姫に近付く人間ばかりだと思うので、そんな中で欲もなく淡々と見守っているだけの三日月宗近には惚れるしかないのよ…
ゲームとかでも描かれてる、三日月の光というか目に描かれている三日月、2.5舞台や映画みたいにカラコンはしてないけど設定としては同じなんだろうな…あれに関しても兄弟して良いと言っているの、宗近との距離感が自然と分かっていい台詞だなぁ〜と思った

そして紅梅姫が勇気を振り絞って告白をしたところで、叶わぬ恋ですよとばっさり断る宗近の優しさよ…
変に期待させるでもなく、淡々と…
付喪神だから恋愛に対する感情が分からない、紅梅姫には好意を持ってないのかなと一瞬思ったけど、感情はちゃんとあるし想いには気付いていそうだったので嫌っているとかではなく
あの後彼女が俗世を離れることを知っているから歴史を変えないように努めている(己の役目を果たしている)とか
生半可な答えを出して期待を持たせてしまうより、すっぱり振って諦めてもらおうとしているとか
嫌いじゃないからこそしっかり伝えているんだろうな、と解釈した…のですが…そういうのが切なくて悲しくてでもどうしようもなく惹かれるオタクなのでウスイホン書きたい欲に変換されて…しまうっ…(NL大好き百合おじさんの意見)

絶対に結ばれない純潔系三日月宗近と紅梅姫のウスイホンはどこですか…

松永弾正といえば

御子息の「清廉潔白な父上が謀反など企てるわけがない!」みたいな台詞…それはギャグで(以下略
企てまくっとるのよ、他作品の松永弾正は!
平蜘蛛茶釜爆破おじさん(それも創作)なので、忠臣という言葉がまったく似合わない名前、それが松永弾正。
パラレルワールドの松永弾正だと思うことで乗り切りました。だって歌舞伎だもの。

刀剣男子たちについての感想

同田貫、原作ゲームで好きなキャラなので時代が一人だけ後のあの中にいるのは嬉しかった!
二役だから仕方ないとはいえ、もっと同田貫が暴れてるの観たかったな〜…
舞の時、一人だけ超パワフルで格好良かったし、喧嘩っ早くて小烏丸にタイマン挑むのもすごい良かったので…服装が案外原作に近くてしっくりきた

小烏丸は原作絵では中性的で細身で小柄に見えてたんだけど、実写映画で案外男性っぽい見た目だったので「やっぱり男子だから実写にするとこうなのか…」ってちょっとびっくりしてたんだけど
まさかの女形!
あのとんでもない髪型をそう作るか、という装飾で、そのまま再現してないからこその良さがあった
同田貫と膝丸に喧嘩売ったりタイマン張ったりするの、ちょっと意外…宗近以上に浮世離れしたキャラだと思ってたので…
後半ちょっとだけ袴を穿いてるのも格好良くて素敵だけど、前半の衣装も優雅で素敵だったなぁ!

髭切膝丸兄弟、原作の洋装は格好良いけど、和装になると衣装がちょっと地味かも…なんて思ってたのに
脱いだらすごい…よき…ちゃんと対になってるぅ…
膝丸の前髪のぴょんとしたのはちゃんと再現されててツンツンに尖ってるのに動くと揺れてる…謎の技術…!
最初、紅梅姫と髭切を同一人物が演じているとは分かってなかったので、途中のメタなシーンでやっと気が付いた
可愛くて格好いい…どうなっとるんや…

小狐丸はほとんど出番がなぁ…原作のチャラいイメージはあるんだけど…そりゃそうよ、二役が…
尾上右近さんのお顔立ちがまさに浮世絵の歌舞伎役者って感じなので、浮世絵に描かれた小狐丸!って感じだった
いや、本当、出番がよ…

その他の感想

室町後期なのに江戸時代なんだ…と途中までは謎だらけだったけど、歌舞伎って現パロならぬ江戸時代パロみたいのよくやるからそうなんだろうなーと思うことにした
室町時代には裃を着ないし、女の人は髷を結わないし、茶碗はあれど湯呑みはないし、弾正とはいえあそこまでびっしりの畳の部屋ってのもないだろうし…
不思議な世界…

音楽、すごい良いんだけどサントラが配信で2曲だけ…もっと聴きたい…エンディング(?)の各キャラのテーマ曲を個別に聴きたい…舞を踊ってるシーンでのキャラソン(違)も聴きたい…
あの曲、小烏丸だけ女性ボーカルなのがまたいい…
ソロの琵琶の方も素敵だったし、クライマックスの一騎撃ちの曲もじっくり聴きたい…
サントラ…サントラが聴きたいんです…

最初の鍛刀シーンでの刀鍛冶の二人が対になってる衣装で、生地と形は同じなのに紫と緑の配色が逆なの…オタクが好きなやつ…
鉄琴で刀を打ってるところを表現するとは…長唄と合わせてるのも素敵だったからサントラを…

とうかぶはいいぞ

台詞の言い回しはちょっと独特だけど、特に分からない台詞もないし、時代劇が観れる程度なら全然平気
長唄もなんとなく単語とか聞き取れるし、難しくない
世界観の説明も最初に字幕でどどんと出てくるのですんなり入れるし、キャラの自己紹介もあるから予習いらず
現代劇と同じく、普通に会話することがほとんどなので身構えなくてOK
何も知らずにパッと見ても楽しめる!
とうかぶ、是非気軽に観て欲しいです!

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?