[映画]複製された男

 今夜のU-NEXTは『複製された男』。2013年の作品。

 ある日、知人に勧められて見た映画に自分とそっくりの人が出演していたら…、どうなっちゃうのかしら、という物語。

 いわゆるエンターテイメントではないアート寄りの映画が好きな人は、ぜひこの先を読む前に本編を見てほしい。きっと読んだ後で見るよりも楽しめると思う。

 逆に、ストーリーがある程度のカタルシスをもって着地するエンターテイメント作品を好む人には、この作品の幕切れは腹立たしいかもしれない。その場合はこの先を読んでから見るかどうか決めたほうが、ガッカリ感が軽減されるかもしれない。

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 アイデアはとても面白いし、見ていてハラハラする。自分とそっくりの俳優を見つけ、ストーカーのように調べあげ、なんとかして会おうとする。会ってしまってから事態が思わぬ方向へ。そういう面白さがあり、どこへ着地するんだろうとハラハラしながら見られる。

 この作品は意味深なプロローグから始まり、日常的な本編が始まる。主人公はその日常の中で、レンタルで借りて見た映画の中に自分とそっくりの俳優を見つける。そこから彼の日常に非日常が入り込んでくる、という風に見える。このストーリーが魅力的であるため、冒頭部分に仕込まれていた仕掛けのことをすっかり忘れるのですね。もちろん意図的にミスリードさせているのだろうけれど。

 中盤でチラッと、プロローグから繋がる伏線を張る。しかしこれもあっさりと流し、本編はあくまでスリリングな「自分とそっくりの男」にまつわる物語として進行する。騙されるのだな、見事に。頭の隅に引っ掛かりはする。印象的な映像がひっかかる。そのモチーフはいったいなんなんだ。でも前面に押し出されてくるのは不思議で魅力的な事態。こちらの事態も大きな展開を見せ、観念的なイメージの混入のことはなかなか意識に上ってこない。上らせないような演出になっている。

 そしてラストカットを迎える。

 このラストカットを見たとき、「なんだこれふざけんな」と思う人と、「ああそういうことかチキショー」と思う人がいそうだ。

 この作品はプロローグがとても重要だ。特に、一番最初に文字で表示される「カオスとは未解読の秩序である」というフレーズ。なるほどそうだったのかと納得はできるものの、「いや、えー? そういうあれ? うーわ、やられたわ」みたいな、いまいちスッキリしない感想ではある。見終えたときのこの感じ、なにかに似ていると思ったのだけれど、「ツイン・ピークス」かな。さんざハラハラしながら見てきたらそういう結末? という。

 どうも原作小説があるようなので、そちらも読んでみたい。映画のラストは極めて映画的なものなので、小説ではどういう幕切れなのかとても興味がある。

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