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その仮面の下に #仮面おゆうぎ会 後夜祭

長い前置き

 いや、勢いで勝手に後夜祭とかつけちゃったよ。やろう。後夜祭。有志で。

 坂るいすさんによるこちらの企画。

 この概要を読んで、これはとても面白いと感じた。名前に引っ張られる要素って少なからずあって、「誰が書いているか」で評価される要素というのは、良くも悪くも、ある。(悪いばかりでもないと思っている)

 作者を伏せてもなお、名前を出した誰かが褒めていたりすれば、「あの人が褒めているから」とスキを押す人だっているだろう。純粋に作品の中身だけで評価するのであれば、誰がスキを押したのか、今どのぐらいスキを集めているのか、そういった要素も全部見えない状態になっている必要がある。でもそんなことは現実問題難しい。

 難しいのではあるけれど、作者名だけでも伏せて作品を集めるということが、結果こんなにも面白いことだったのかと、動き出してみて改めて発見があった。これはもうTwitter などで盛り上がった様子を見ていたり参加していたりした人は皆体感したと思うけれど、想像をはるかに超えて盛り上がりましたね。

 その手腕に舌を巻きながら、このテクニックはあの人っぽい、この文体はあの人っぽい、あの人ならこんな言い回しを使うだろうか、いや、あえて偽装しているのだろうか、エトセトラ、エトセトラ。

 〆切時点で29本もの作品が集まった。

 待って。作者の見当をつけるぞ、と思って脳裏に浮かぶ小説書きの方々、全部合わせても29人もいないんですけど…。

 今回の企画は一人一作品という規定があるため、作品数=作者数となるはず。一人で2つ以上のアカウントを持っていて作品を投稿するというような人がいない限り、作品数と作者数がイコールになる。

 わたしの知らない作者がいる。

 めちゃめちゃワクワクしました。うまいなと思わされる作品がこんなにたくさん。仮面をつけてそこに立っている、まだ知らない誰か。ワクワクする。

 ほどなく、マリナ油森さんが袋とじnoteを公開された。

 余談だけどこのような途中から有料にして伏せておくのを「袋とじ」って呼ぶの最高ですね。買わないと見られない、まさに袋とじ。

 マリナさんの予想は説得力がありまくりで、いちいち頷きながら読んだ。そうそう。そうですよね、と。

おまえのはどれなんだ

 さて。わたしもこのイベントに作品を出しました。さあ、わたしの作品はどれでしょう。

 上記のマリナさんも含め、いろいろな方の予想に入れていただいていました。また、DMで「これじゃないですか?」と言ってきてくれた方もいました。わたしが「ちきしょぅ、うまいなぁ」と思って読んでいた作品に「これじゃないですか」と言ってきた人もいて、うぎゃーと喚きながら脳みそを直接かきむしりたくなったりもしました。

 まぁ大方の予想通りでありましょう。わたしの作品は、









No.8 『夕顔』です。

 けっこうわかりやすかったかもしれませんね。上に引いたマリナさんも正解しておられます。全然捻りませんでした。というかわたし、そういう器用な真似ができないっぽいです。

 告知を見て、わあ面白そう、参加したい、と思ってから、「さて何を書こうかな」と考えました。5000字。短いですね…。かつて「書き手のためのエチュード」のときに書いた「サイカイカフェ」が1話4000字程度だったのでだいたいあのぐらい。

 なにが書けるのだろう。5000字。名前を伏せて書く。伏せてもこれはあいつだとわかるようなものがいいのか、それともわからないものがいいのか。わからない方がたぶんイベント的には面白い。そういうものが書けるだろうか。一方で、こんなものはあいつしか書けない、というものを書きたいような気もする。そういうものが書けるだろうか。

 結局どうやって書いたんだっけ、と思ってアイデアノートを開いてみると、5月9日の日付でアイデアメモを書き始めていますね。

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 この時点では別名義で全然違う方向の作品を書くことも検討しています。ロマンスを描く、涼雨零音っぽくないものを別名義で出すかどうか迷っています。

 が、このアイデアは直後に没。ロマンス書いてみたいけれど書ける気がしないのでパス。

 そしてすぐ下の部分にこう書いてありました。

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「私」を見失って交番に来る女の話。まさに「夕顔」のあらすじそのまま。

 そのあと捜索願について調べ、それが今は行方不明者届という名称で、所轄の警察署に届けるものであることを知ります。それを作中に入れよう。

 また、夕顔という名前を思いついてから夕顔について調べています。朝顔があって昼顔があって夕顔。と思って調べてみると、朝顔、昼顔の仲間は夜顔という花で、夕顔はまったく別の植物であることを知りました。なんと!そうだったのか!

 それもさりげなく入れることにしました。夕顔って朝顔の仲間じゃないんだって。夕顔だけ、朝顔の仲間じゃないみたいだよ。夕顔はウリの仲間だって。

 うり二つっていう言葉もあるよね。顔と声が同じ夕顔。中身だけ別の人になっても以前とうり二つの夕顔。

 あとは一気に書いて一晩寝かせ、翌日送信しました。

 蓋を開けてみれば極めてわたしらしい作品が出来上がっていました。逆にわたしがバレないようなものを書いている、と予想した方が別の作品を予想してくれていたようでした。思い浮かべてくださった皆さん、本当にありがとうございます。正解かどうかではなく、思い浮かべてもらったことそのものがとても光栄です。

 なお、「夕顔」はのちほどNOVEL DAYS へ転載して読んでいただけるようにします。

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