22 エントロピーが増大しない謎&女傑の話

マガジン「闘わないで楽しい入院生活」
原因不明の病気で腎臓を患い突然2ヶ月の入院生活を余儀なくされたアレクサンダーテクニーク教師の楽しい入院日記です。しょっぱなから闘いを放棄し、病院で三食を美味しくいただきながら、人生を振り返ったり、病院の風景を観察したりしながら自分を癒す過程を綴る。2017年10月〜12月までの日記です。

2017/10/22 @病室

☆彡 シャワー室で

今朝いつものようにシャワー室(個室)のドアを開けて「おはようございます。今日もお願いします。」とつぶやいたとき、今って修行っぽいといえば修行ぽいなと思った。

ナースステーションに置いてある紙が予約票。毎朝新しい紙があって30分毎に区切ってある。名前と部屋番号を入れる。(ご高齢やシャワーに入れない患者さんは、看護師さんが本人に聞いて予約を入れたり、ベッドで体をふいたりシャンプーさせてもらっている。)

初めは何もかも不安だったから、病院のシャワーを使うことにもいちいちおっかなびっくりで、30分がどれくらいか計りかね、早く早くと必死でがんばって出てきて、時計を見たらまだ10分しかたってなかった、なんてこともあった。

でも考えてみたら、私は家のお風呂でも石鹸もシャンプーも使わないしゴシゴシ洗ったり流したりしないから(シャンプーは洗面所でインドのハーブ粉使ってる)どう考えても時間がかかるわけはない。シャンプーの時だけは乾かす時間がかかるし、ふと時間を忘れてしまうから気をつけてる。

☆彡 ステロイドで眠れない

昨日は久~しぶりにぐっすり眠れてうれしかった。それでも4時ごろ目が覚めた。やはり寝薬というのはあると実感。いつも眠れないのはステロイドのせいらしい。10時半ごろに眠りについてパッと目覚めるとまだ0時とか、3時半とかだったりする。ww
そのあと寝るのはなかなか大変だから、入眠剤を飲んだりする。でも3時に飲んだら起床の6時には目覚められない。一昨日は試しに薬をのまなかったが、やはりぜんぜん眠れなかった。そして、頭の中にわくわくするアイデアがどんどん出てきた。それを夜中にスマホにメモったりして、ギリギリ5時から6時ぐらいの一時間だけ、がーっと寝ていて寝不足だった。だから昨日はぐっすり眠れたのかも。

☆彡 朝晩の行事

病院では、消灯というものがあるから、夜9時以降のパソコンはつけないし、本も読まない。友達や家族ととラインしたりはするが11時前には、抗菌ウェットティッシュで足を拭いて(なぜか朝晩これをやってる)、音叉鳴らして、気功して、瞑想して、メントレして、夜のレメディ飲んで寝る。どう考えても健康的すぎる。

早朝は、明け方から目覚めてしまい、窓の外が明るくなるのを感じながら音楽をきいたり、寝たままアレクサンダーワークの練習をしたりする。早起きの友人とチャットでやり取りすることもある。毎朝6時の点灯の前に、明け方の東京タワーの写真を撮る。点灯前は部屋が暗いからきれいに撮れるから。けれど、時々忘れてしまう。

(入院してからずっとinstagramにタワー写真毎日アップしてる。2021年時点でタワーのみのインスタになってる😅)↓

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そのあと看護師さんが来て血圧を測る。その前後に起きだして、朝のレメディ飲んで、また音叉ならして、足をまた拭いて、気功して、瞑想する。それからペットボトルを二本出して、一本はホメオパシーの水レメディを作って、もう一本はフラワーレメディを入れる。水は一日ペットボトル2本から2.5本のむ。

☆規則的になる→エントロピーの減少

わたしは自慢ではないが、以前は、どうがんばっても、日々規則的な行動を繰り返すことができない人間だった。ところがどうだ、気づくと、なぜか少しずつ、誰にも言われないのに、いろいろなことを規則的に遂行しているのに気づく。なぜなんだろう?ほっておいたらエントロピーが増大し、カオスになるのが世の常だ。ところがわたしの生活リズムはエントロピーが少なくなっていく。カオスにならないってことは、何かしらの力が働いてるってことよね。それってなんなのかな?

朝ごはんは7時すぎだから、その前にデイルームに行って、体のアラインメントを整えて、足首を回して、背伸びとかプリエみたいなことをして、太極拳の一部なんかを少しする。ほんの30分もかからない。体重を量り、部屋に戻り、顔洗って手洗いうがいして御飯の写真をとってからゆっくり噛んで味わって食べる。

食べたら薬飲んで(一度忘れて大変だったから、忘れないように御飯のお盆に置くことにした)歯を磨いて(歯周病菌注意)、シャワーの予約状況を見に行く。スタートは八時半だけど、その枠に名前が入っていることはほとんどない。だからそこに名前を書く。

シャワーなんて毎日入らなくてもいいんだけど、なんとなく、温泉に来た人のようにほぼ毎日入ってる。その度に新しい甚平とタオルセットをもらう。

シャワーの後は、シャワー室の壁や床を熱い湯で流し、髪の毛が落ちていたりすると嫌だから、脱衣所の床をチェックして洗面所の周りの水滴をふいたりする。こういうの家でもやればよかった。髪の毛をとかして三つ編みにして「ありがとうございました」とシャワー室でつぶやいて、マスクをして帰ってくる。

書くと勤勉な人みたいに思われるかもしれないけど、すべてちょっとしたことだ。そして、この時点でまだ朝九時前ってどうよ?笑

同じことを続けることがもともと嫌いだから、毎日なにかを続けるつもりなど毛頭ないのだが(一生懸命やるつもりもまったくないし・・・)
なぜか、そうなってきてしまった。
私の人生で一番健康的と思われる生活。

☆彡 今日話したかっこいいマダム

7時ごろデイルームで体を動かしていると、人がたまに来る。御飯が配られるから。
基本的にみんなの朝は食パンがついてくる(私は御飯)。それで、デイルームにあるトースター目当てに入れ代わり立ち代わり来て自分のパンを焼いていく。
同じくデイルームにある大きな体重計で御飯前の体重を量るミッションがあるご高齢もいて、いい感じにボケた面白いことを看護師さんにいいながら連れてきてもらって、体重計に乗る。おはようございますと言いながら、私はそこら辺で何気なく椅子の背をもって背伸びとかしている。

今朝、パンを焼きに来たご婦人は、時々デイルームで見るご年配で、何度か挨拶したことがあった。ピンクの甚平の上にいつも長い白の薄手のダウンコートを着ていて、点滴をガラガラ引きながら、携帯電話片手に忙しそうに話してるから目立つ。

おはようございます。というと、おはようございますと返してくれて、パンを焼きながらちらっとこっちを見て言った。

「えらいわねえ、毎日ストレッチしているの。」
「はい。ステロイドやってるんで、筋力が落ちるらしいから。」
「ふーん。今何粒?」
「え?」
「ステロイド、今、何粒のんでんの?」
「えっと、今、1日8粒です。」
「ふうん。そっか。じゃまだだね。4粒にならないと退院できないよ。」
「えっ!!!そうなんですか。」
その人は、知ってる風に笑っていた。
「そういう決まりなのよ」って言ってたけど、後で医師に確認したら決まりというより指標的なもので人によるらしい。

「・・・どこが悪いんですか。」と聞いてみた。
「私はね、腎臓。こないだ現場で倒れたのよ。」
(・・・現場?)
「もう10年ぐらいずっとなんだけど、透析には絶対やりたくないって思ってるの。友達が透析やって死んじゃったから。私のは、糖尿からくる腎臓病じゃなくてね、腎臓のところのなんか病気。もう腎臓一個つぶれてるのよ。もう一個は30パーセントくらいかなー。」
「そうなんですか。大変ですね。。。現場、ってどんなお仕事されているんですか?」
「私はね、インターシティーとかあそこらへんのビルの全部のガラスを仕切ってんのよ。
 男の人よりさ、女のほうが仕事がめんどくさくない、ってんであたしんとこにみんな頼んでくるの。それで毎日毎晩お酒飲んでたらからだ壊しちゃってさ!」
「うわ、なんかかっこいいですね!現場監督みたいな感じですか。・・・じゃ、こうしてたまに入院して治療するんですか?」
「いやいや、普段は薬と食事でやってるのよ。あたしはもうすぐ退院よ。」

女傑っぽくて素敵だった。

「ムーンフェースになりましたか」と聞いてみた。
「んー、なったわね。」
「いつ頃それってでるんでしょうか。」
「いつ始めたの?」
「二週間くらい前です。」
「じゃ、まだまだ。何か月か後とかよ。」
「えー、そうなんですか。どれぐらい続くんですか。」
「何か月かじゃないかな。」

最近ムーンフェースのことが気になっている。

「じゃ、お大事に」

患者さんと話すと、だいたい最後は「ではお大事に」で終わる。なんだかほかの国に来たみたい。

今日もマティスのことを書くのを忘れた。
今8時前でしょ。8時になると面会時間が終了。看護師さんが血糖値計りに来て、書いたものをアップして、そこから一時間で寝る支度をする。投稿書くのなんかは一時間以内にできちゃうからちょっとしたことだ。

さて、これから、一日分の食事の紙(食事についてくるメニューの紙🤣)をノートに貼ってイラストを描いて思い出して、残りの時間は「ねじ巻き鳥クロニクル」の英語版を一ページくらい、こそこそ声に出して読む。これは読経みたいな感じ。www

今日もこれから9時に消灯したら、東京タワー写真をとってインスタにアップして、寝床をセットして(これについてはまた説明が必要)あまりにもまだ時間が早いのでうだうだして寝る。

すべて自分の未来のためにする。
写真は病院の壁に貼ってあるマティスの版画「水槽で泳ぐ女」

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