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【絵のあるおはなし】泳ぎ疲れた犬の話2


泳ぎ疲れた犬の話1のつづきーーー
海(みたいなもの)の中で、犬はとにかく疲れていた。なんの希望もなかった。そして、泳ぎ疲れると気を紛らわすために思い出に浸った。
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それはもっともっと昔の話。
夕日の落ちる少し前、犬は線路を走っていた。くねくね曲がる線路の先、山の向こうに、夕日が落ちるところだった。走って走って走って、光る鉄の路を味わった。伸びていくカーブは、眩しくて、美しくて、大地の形をなぞっていた。犬は目を細めた。汽車は来ない。走る犬の足元から、遠く彼方へつながっていく、地表を這う黄金の蛇。それは今、犬だけのものだった。

金色の蛇はぼくのものだった


思いきり地を蹴って走る感覚。犬は全身の力を足の裏に集めて、地球を蹴る。その重さに地球は答えて、犬を空中へほうり投げる。次の足も次の足も次の足も、順番に地球を蹴る。

「もっと早く!もっと高く!」

夢中になり弾んで走る犬は、ちっさなゴム毬のようだった。そのゴム毬を弾ませているのは大きな地球だった。ミクロとマクロの二つの毬は無心に戯れているようだった。

地面の上でゴム毬のように弾んだ

海のようなものの中で、蹴っては弾む感覚が無性に懐かしかった。押したら押し返してくれるもの、コール&レスポンスがあった。水を押してもそれは得られなかった。ただ、自分が沈まぬように必死になって泳いでいるだけ。しらんぷりして泳いでいる魚たちは、果たしてほんものなのだろうか。魚を蹴ってあそんでみようとしたら、たちまち逃げられた。

「ああ、あの地面もどこかでこんな海につづいていたのかなあ・・。」
犬は気が遠くなり、目を瞑った。

(3へつづく)


泳ぎ疲れた犬の話 1


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