見出し画像

おじさんはノー・タイム・トゥ・ダイ観るべからず

賛否両論出ることを狙ったのか?
これだけ待たせた上にクレイグ最終章という煽り
007ファンならずともコロナ渦で溜まった鬱憤を劇場で晴らすことを期待して足を運んだ方も多いのではないでしょうか
YouTubeを観ても当たり障りの無い批評のオンパレードで、正直面白くなかったけど炎上したくないというのが見え見え
はっきり言いますが、おじさんは観ない方がいいです




以下盛大にネタばらししながら私がなぜ「おじさん」を限定して観るなというのかについてどうしても書き残したいから吐き出します
全編文句ですので不快に思う方の方が多いと思います

1. 長い!長すぎる
本来ならビール飲みながら観たかった。大した娯楽もない昨今、折角劇場まで足を運んだんだから楽しみにしてたのに、売店は販売自粛。もういいじゃないか?映画館なんで酔って大声でしゃべってウィルス飛散させる輩なんかいねぇよ。静かに飲む層しかいないっての。
仕方ないからコーヒー買った訳だけど、コーヒー程度でもあまりの長さに最後の方はトイレ行きたくて集中できない。冒頭予告編の15分さっぴいても本編2時間45分くらい。3時間はキツい。おじさんはトイレが近いんだよ。ビール飲んでたら漏らしてたねたぶん。
疾走感も薄いし、後述の通り途中でイライラ、モヤモヤするし、結末的にエンドロールでなんかあるかもしれないから観ない訳にもいかないしでとにかく最後の30分は拷問のようだった。

2. ポリティカリーにコレクトである必要はない
007は娯楽です。嫌なら観るなで何がいけないのか?これが現実の世界だとでも言うのか?荒唐無稽なスパイアクション映画ですよ。スカイフォールでマネーペニーが有色になったんだからもう十分だろうよ。
ノーミがとにかく要らない。何の役にも立たないどころか、見え見えでイライラする動きしかしない。美しき獲物たちのメイデイを見習えよ。超憎たらしかったけど最後で泣いたよ俺は。ノーミの見せ場はキューバのお誕生日会場から脱出する時に雑魚の警官どもに包囲されたところから脱出するところだけ。MI6本部でのシーンも予定調和ばかりの台詞オンパレードで聞くに堪えない。ボンド家族のピンチに間に合わないノロマ。極めつけがサフィンのアジトに潜入してからのグダグダ。ロシア人確保した後何やってたのあんた?爆弾仕掛けてボンドが帰らなかったら爆破しろって言われてたんだからそこにいちゃダメだよね?で、結局ロシア人殺すんだったら最初からやっとけよ。で、マドレーヌと娘と脱出するところゴムボートはどこから持ってきたんだ?終盤完全に空気になってることのあてつけか?ここでカジノロワイヤルを思い出して欲しいんだけど、ボンドは00になった時既に凄腕だった。とにかく何でこのウーマンが00になれたのか全く理解できない。この役回りはフィリックスで十分回せたと思う。
(note公開後追記)
Qってゲイなの?確かにあの自宅のシーンでは"he"が来るって言ってたと思うんだけど、セルフミスリードしてたわ。てっきりQはマネーペニーを食事に誘ってたのにボンドがくっついてきちゃって焦ってるのかと思ってた。Qはマネーペニーにぞっこんなんだけど、それをボンドにばれたくないから誤魔化してるのかなと勘違いした。思いっきり彼氏のために食事を準備してるとすればゲイですね。だとしたらマヂでふざけんなです。娯楽映画でそういうの本当にいらないです。私はLGBTだとかそういうのは否定しませんし、差別もしません。でもそういう方に配慮して該当キャラを登場させることが平等なのかといえばそれは違うと断言します。だったら本作品は私の嗜好である黒髪の巨乳アジアンビューティーが出てないので差別的な作品ですって大騒ぎしますか?ありとあらゆる嗜好思想人種を登場させる必要はないし、女性どうしのキスシーンを観たい人もいれば観たくない人もいるわけで、STAR WARS episode 9の最後の方で一瞬映ったそのシーンのせいで作品の余韻を全く楽しめなくなった私のような人種もいることは否定されるべきではない。最後の作品で今まで設定されていなかったにも関わらず、俳優のリアルでの属性をフィクションである映画の中に入れ込むのは禁じ手ではないのか。
こんな事を書いたら差別主義のレッテルを貼られるかもしれないが、こっちの権利はどうなるの?40年以上シリーズを楽しんできたのに、なんの予告も無しに今までの流れをことごとくひっくり返していくことが許されるのか?安っぽい価値観の押し付けに高い金払ったかと思うと(プレミアムシートで観ました)心底腹が立つ。予告編で入れておいてくれてたらPrime Videoでタダで観れるようになるまで余裕で待ってたのに。

3. 子どもはギャン泣きする生き物です
制作者は子育てしたことあんのか?何一つ不満を言わず、確実に車いかれるだろう悪路の全力走行中も眉一つ動かさない子どもなんているわけないだろ?ママと離れたら、お腹が空いたら、キモいおっさんに抱っこされたら、ウサギのぬいぐるみ落としたら、普通は全部ギャン泣きです。いくらボンドの遺伝子が入ってても感情なさ過ぎだろ。それがかえって怖いし、違和感だらけで感情移入できない。ボンドとマドレーヌが別れた時には既にお腹にいたわけで、本人は妊娠に気付いている風の演技があったということは、妊娠後少なくとも数週間は経ってる。そこから5年後の登場だから4歳ちょいか。外国人の子どもだからかもしれないけどそうは見えなかった。いずれにしても007に子どもを登場さすのは明らかに禁じ手で、おじさん(特に娘持ちの)には生々しさが拭えなくなってしまった。

4. すきっ歯がどーしても気になる
女性の容姿のことをどうこう言ってはいけないのでしょうが、マドレーヌに魅力を感じない。ファンの方には申し訳ないんだけど、TCXの画面に大写しになるとどーーーしてもすきっ歯が好きになれなかった。
DB5の中でなんでもっと疑惑を否定しなかったの?思わせぶりなその態度の演出にいらついた。(因みに敵が何故かマドレーヌ側をしつこく撃つのも意味不明だった。ボンドを殺したいんじゃないの?)で、何故かブロフェルドの担当医に落ち着いているというご都合主義はご愛嬌とするけど、トイレでスプレー流しに落とすところは意味不明。ブロフェルドがからくり人形みたいに出てくる途中での取り乱し方も噴飯もの。ボンドの手が触れた時にボンドに忠告しなかったということは、何が起こるかわかってたんだよね?あんたボンドがまだ好きなんでしょ?握手拒否シーンとの辻褄が合わない。で、なんで母親が殺された事故物件に行くの?紙を燃やしてまで忘れたいトラウマがそこにあるんだろう?恐らく隠れ家、別荘としてキープされてたんだろうけど、マドレーヌの年齢から築20年はくだらないはずで、あんな雪深い山奥にしては綺麗すぎ。お父さんの隠れ家を見習いなさい。
あなたの子どもじゃないとか嘘つくくせにベットインはするの?このビッチが。で、最後に無線でカミングアウトって遅すぎだろ。実子かどうかなんてQのノートパソコンですぐわかりますよ。

5. 君はいったい何をしたいのかな?
本作最大の問い。
毒草大好き愉快な家族を殺された→殺した奴の家族を殺す(いかにもダメそうな妻だけど)のは分かる。娘を助けた→殺すのと同じくらい繋がりがどうとかこうとかってのはわからん。びしょ濡れの少女を家に運んで、その後何事も無かったかのように帰ったのかな?サフィンがロリコンじゃなくてよかった。肝心のミスターホワイトのことはなんであっさり諦めたんだろうか。
ホワイトも死んでるのにまだスペクター恨んでる粘着体質。MI6でさえ掴めていないスペクターメンバーのDNA情報を全員分持ってるなんてチートを使う。ブロフェルド暗殺も成功したんだからボンド一家はもう無視すればいいのにわざわざ最重要拠点に連れてきちゃうドジっ子。
僕のマドレーヌを孕ませたボンドが許せないからホームで叩くってこと?その割に防衛システムも甘いし、娘を人質にしてボン土下座を見たかっただけ?結局のところボンド、マドレーヌ、娘がどうなればサフィンの望みがかなう状態なんだかさっぱりわからない。マドレーヌに出したお茶はジキタリスだとしたら伏線回収ご苦労様です。娘を簡単に逃したくせにさっさと逃げるでもなく、手下が全滅するのをどこかで待機。嫌がらせでミサイルハッチ閉めたあと保険を行使するためにわざわざ降りてきてくれる謎の親切心。例え兵器をミサイルから守れたとしても、君そこにいたら爆死しちゃうけどいいの?
能面つけてたのは黒歴史扱いで許すとして、終始一貫行動が意味不明、無表情で瞬きをしない謎めいた冷酷な人物像みたいなのを一生懸命作ろうとするんだけど、素顔で能面を表現しようとして大失敗してるようにしか見えない。クレイグ5作の中で最も怖さがないのはなぜなのかを考えたら、サフィンが直接悪いことするシーンがないからかと思う。ホワイトのかみさんは殺したけどなんか悪妻っぽかったし、恨みを晴らしにきたという理由がある。研究所で殺したり爆破したりしたのはスペクターだし、なんとその悪の枢軸スペクターを全滅させてくれるという、しかもスペクター関係者以外を殺さない方法でというノーベル平和賞ものの大活躍。フィリックスを殺したのは手下だし、最後のアジトでも結局誰も殺さない。テロ集団のボスだからそりゃあ悪の親玉なんだけど、肝心のテロ集団が何かやらかすシーンがなく、全部ボンドとノーミにぼこられて(マドレーヌにやられる間抜けもいる)終わり。ラミはオスカー俳優でもリカバリーできないどうしようもない脚本の被害者と思わないと切ない。

6. 太りましたねあなた
Mにボンドが「デスクを大きくした?」と嫌味を言う。別れ際に捨て台詞で「デスクは同じ」すなわちあんたが小さくなったんだという嫌味。これは太ったファインズに対する陰湿な嫌がらせではないかと勘ぐりたくなる。ふと自分の中年太りの腹を見てしまった。

7. 意外ではなく痛い
ウィーショーのQはスカイフォール初登場時すごく違和感があったんだけど、何度も観るうちにすごくいいキャラだと思った。一転スペクターからコミカル路線が鼻につくようになって、今回の自宅のシーンは特に痛々しくてみていられなくなった。アジトの電源入れるシークエンスはしつこい。

こうしてみると脚本が全てを台無しにしてる。監督の交代、トラブルによる中断など色々あってヨレたのかもしれないが、クレイグが大物になり、オスカー俳優マレックの起用、パルムドール女優セドゥの再登板という強い面々の噛み合わなさも一因かもしれない。
007は昔からツッコミどころ満載で荒唐無稽なんだけど、それをその時代一流のアクション、特撮、そして何よりボンドの魅力で爽快感、ロマンス、ワクワク感で飽きさせない映画シリーズだった。だから子どもの頃から楽しみにしてたし、全作品を何回も観るに耐えるシリーズだった。本作は路線の変更をやり過ぎてるし、そのせいで説明不足感ではなく違和感を与える進行に落ちてしまっている。好評だったカジノロワイヤルにおけるボンドとヴェスパーの激しい恋は00なりたてのボンド若気の至りであって、そこから成長したボンド譚を描き続けて欲しかった。散々遊んだ末に最後は家族を得る幸せを見つけたなんて安っぽいドラマは007ファンは求めてないだろう。それに対するエクスキューズなのか、ボンドが娘に触れるシーンはなかった(と思う)。リンゴかなんかの皮を剥いてやったけど微妙なリアクションされるだけ。長年独り身なんだから軽い料理くらいはできるだろと思ったけど、そこがQとの対比になってる臭い演出。
最悪なのは家族を守るために死ぬしかないというアイアンマンルートでも、地球を守るために戦闘機でUFOに特攻するオヤジルートでもないこと。ボンドの死に必然性がなく、間抜けにもサフィンにハッチを閉じられてしまい、挙げ句の果てに銃撃されて瀕死になってしまう。あの最恐シルヴァとの闘いにも勝利し、ブロフェルドの罠から逃げ切ったボンドが、こんな雑魚いヒョロに実質負けるなんて許されない。エンドロール後にお約束のJAMES BOND WILL RETURNが出なかったら発狂してたと思う。それよりもボンドが遠くから娘を見守っているシーンが一瞬でも映る(実は生きてるというハント、ボーン落ち)のを期待してしまったが、それはベタ過ぎるとでも言うのか。おじさんがボンドに求めているのは非日常のスーパーマンの大活躍であり、何の意味もなく爆死する負け犬のストーリーでは決してない。サフィンを殺した段階でQにミサイルの非武装を依頼することだってできたはずだ。当然英国はミサイルを日本もしくはロシア領に撃ち込んだことになった訳で、日本は強い遺憾の意で終わりだけど、ロシアは報復攻撃するね。ラストでMが健在だけど、こんなことやっておいてタダで済むと思うなよ。
細かい事を言い出したらきりがないが、ノーミがバレバレでボンドの家に行くんだが、何でスマホ渡したのか意味不明。Mに電話したら切られちゃうし、MI6本部でも邪険にされるし。ノーミがボンドと接触する動機がない。カツラを取ることでセクシーさを感じさせない強キャラモードに変貌したことを表したいんだろうが、それこそステレオタイプの女性像だろう。一方のパロマはこれでもかという衣装を着させて、ドジっ子アピールからの無双でギャップ萌えを狙い過ぎで痛々しかったが、カワイイは正義で許される。
ニヤニヤアッシュはその違和感から敵だろうなと一目でわかる。死に方もショボい。車キックはスタイリッシュじゃない。モブじゃないんだからもう一捻り欲しかった。フィリックスの葉巻きとかライターとか仕込もうと思えばできたろうに。
一方サイクロプスの死に方はよかった。思えば本作は「眼」がキーワードになっている。サイクロプスの初登場シーンでは義眼がわざとらし過ぎると思ったけど、ブロフェルドのバイオニックアイ、青い目の少女と詰め込んできた。しかしラストがいただけない。マドレーヌが無線であなたの青い目よと言うが、ボンドの返事は"I know"。言わずと知れた名台詞についてる字幕が「青い目だ」!?戸田奈津子いい加減にしろ。こんなシーンで出てくるI knowっていう台詞には特別な意味があると思い込むのはスターウォーズ観過ぎなのだろうか。
サフィンがどうやって親玉になったのかはわからんけど、テロ組織は金がかかるはずで資金源が謎。007のヴィランはなんらかの大金持ちが定番。どうも兵器を売ったりしているらしく、アジトにバイヤーが乗った高速艇が2隻近づいてくるんだが、それどこいっちゃったんだろう?
で、最高に意味不明なのがフルアーマー作業員が棒で混ぜ混ぜするプール。ロシア人も落とされて死ぬくらいだから、どうやら凄い強力な液体らしいんだけど、あれはヘリオスとは無関係なのか?人が溶けるようなものなら機械で撹拌するだろ普通。何で人海戦術なんだよ。あとあの孤島でヘリオス増産した後どうやって使うつもりなんだ?てっきりミサイルのサイロだって言うからミサイル持ってるのかと思ったら、単に蓋の開け閉め合戦のための場所とは興醒めした。

演出も酷過ぎる。ボン土下座は唖然とした。あんなこと思いつくのはフクナガ以外考えられないが、日本人にとって土下座というのは謝罪であって、娘を返しての場面には相応しくない。ボンドがサフィンに謝るとしたらマドレーヌに種付けしてしまったことだろうが、ロリコンサフィンはおばさんには興味ないはずだ。
ブロフェルド対面シーンでマドレーヌに嵌められてナノボットを擦りつけられた後、やたらと手を振る演技はわざとらし過ぎる。ボンドが今までこんな動きをした事があるか?監督は全作見返してみろ。挙句掴みかかって直接手を触れてしまうが、だったらその前のオーバーリアクションは絶対いらなかった。静から動で衝動的に行く方がボンドらしいはず。
ヴェスパーの墓爆破、アジトの手榴弾はどう見てもモロにくらっているし、サフィンにモロ2発ぶち込まれてんのに平然としてるのはあり得ないだろう。いくらスーパーマンでも無理なもんは無理。それを華麗に危機一髪かわすのがボンドだろうよ。
(note公開後追記)
ウサギのぬいぐるみについて書いている方がいた。最後のシーンで(数年後にでも)娘にぬいぐるみが送り返されてきて、そこにNo Time To Dieとメッセージが添えられているなんて演出はどうだろうかという趣旨だったと思う。なるほどと思った。要するにボンドは死んでおらず、ヘリオスを無効化する方法が開発され、ぬいぐるみの除染が達成された世界線ということ。これならばぬいぐるみがいい伏線になってるしいいなと思った。
伏線と言えば娘が車内で蚊に刺されたとかなんとかのシーンがあったけど、どうやって回収したのかいまだにわからない。蚊は嫌われ者だとかなんとか言ってたと思うんだけど何を暗示してるんだ?とにかく娘の登場は不要だったし、演技・演出もありえないし、なんだか意味不明で終わった。

要するにおじさんが本作を観るべきではない理由は
○古き良き007要素を排除していること
○ボンドガールをウィメンと言い換えたのは本当のガールを出すからというネタバレ
○娘が出てきて現実感が出てしまいスパイの冒険譚として脳死状態で楽しめなくなったこと
○父になったのに子どもを抱きしめるという幸せさえ与えないというのは子持ちおじさんには全く共感できないし、そんな別れには涙も出ずむしろ怒りが込み上げる
だから若い世代の方にはおじさんが怒る要素が当てはまらないし、女性にはボンドの愛憎劇、微妙な美人のマドレーヌを素直に受け入れることが可能で、その意味では観るに値する作品に仕上がっている。特にカジノロワイヤルからシリーズを見始めた人には大団円にまとめたクレイグ最終作として相応しい作品に位置付けられるだろう。
あるYouTuberがJAMES BOND WILL RETURNを観てマーベルみたいだと言っていた。事実関係からはピント外れの意見ではあるが、確かに本作はソニーからユニバーサルに配給が変わっていたことも影響があるのかもしれない。
スターウォーズがルーカスからディズニーに移ってオールドファンを失望させ、ラストジェダイの大幅路線変更で総スカンを食ったのは記憶に新しいが、後世において本作は007におけるラストジェダイ的位置付けになることであろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?