そろそろマスクを外したい
そろそろマスクを外したい。だって日常のにおいを感じられないから。
とある日の23時。部室から家に帰るまでの間マスクを外したら、雨上がりのひやっとした澄んだ空気と緑のにおいで久々に脳が震えたのを覚えている。
何気ない素敵な思い出には必ずにおいが存在していた。
中高6年間を捧げたテニス部での思い出には少しツンとする新品のテニスボールのにおいがあるし、毎日礼拝をしたチャペルを思い出すと年季の入ったマホガニーから古本のような懐かしいにおいまでが蘇ってくる。いつもシャンプーのいい香りを身に纏っていた演劇部の杏ちゃんは今頃何をしているのだろうか。
わたしは大学に入学した時からマスクを着けていた所謂コロナ世代なので、そういえば大学での思い出ににおいが無いことに気付く。
もちろん部室とか図書館のにおいは分かるけれど、蘇ってくるほどまだそれらは私のものになっていない。
そろそろ大学での思い出ににおいがあってもいい頃ではないのか。
かわいいデザインのマスクでお洒落を楽しむ風潮もあったけれど、やっぱりそろそろ可愛い色のティントをつけたいしチークも久々に楽しみたい。
お願いだからそろそろマスクを外させてほしいよ