今回の撮影の正解装備は?

先日取材にて撮影機材を持参のもと数泊の飛行機移動に臨んだのだが、次のことを考えて反省をまとめておこうと思う。

機材持参の飛行機移動は数年ぶりだったのだが、前は完全にバックパックに無理やりレンズを三本とボディを二個で臨んだ。そのときは写真はそれほど必須ではなかったのと、ムービーを取る予定は完全になかったことによって相対的に気楽だったのだが、確か1635f2.8、2470f2.8、135mmf1.8の三本で臨んだように思われる。望遠が単焦点のみなのは結構攻めている。それ以上に重要なのは、持ち込み機材で7.5キロか10キロ以内に収めるためにかなり気を使ったのだが、結果としては大きめのバックパック一個に機材も何もかもをぶちこんでそれでやり過ごしたのだった。これでいいことは、キャリーバッグとは異なってバックパックが軽いため、相対的に制限重量以内に収まりやすいということだ。そして撮影機材は絶対に手荷物搬入したいため、必ずこの重量以下にしなければならない。

さて今回は撮影が最重要ミッションだったため絶対に失敗できない。そのためボディは最低2個、そして適切なレンズ構成をする必要性がある。だからあまりレンズを絞れないのだが、となると物量が多くなる。ということで今回は絶対にキャリーで行くことにした。常時背負うのは絶対にありえない。キャリーはそれだけで3.5キロあり、どうも内容物は3.5キロ程度に収めねばならないようである。実際にやってみたところ、ここまでシビアに考えなくてもいいことが判明して気が抜けた面もあるが、一応制限があるのと、あと持ち歩きにあたっては可能な限り軽い方がよいため、軽さを追求する必要性を改めて感じた。これが都内なら全然問題ないのだが、遠くは本当にきつい。

今回は人物撮影が最重要で、それに付随する周辺撮影がついてくる感じだったので、ポートレートがメインである。定番は大三元ズームを持っていくことなのだが、SONYのE-mountを使用しているという前提のもと、今回は①16-35mm f4、②24-70mm f2.8、③20-70mm f4、④50mm f1.2、⑤70-180mm f2.8の5本を持っていったようである。これはツッコミどころのあるラインナップだと思うが、最初の考えとしては、まず出てくる絵が最高であるという理由から④を絶対に使いたいと思っていた。だが、これ一本で取り切れる可能性は低いので、せめて広角ズームと望遠ズームはいるだろうと考えた。①については、当初はf2.8を使うことを想定していたが、土壇場でf4に変更した。理由は、このレンジならf4でも問題なかろうと思ったのと、動画で使う可能性があったので、軽い方が望ましいと思ったからだ。70-180については、ポートレートでは必要必須になる可能性があり、サイズやレンズ的に他に代替できるレンズがなかった(28-200があったが、複数持つならこちらよりも70-180の方が絶対的に画質がよい)。そうなると②③はどうして出てきたんだということになるが、②については、広角ズームをf4通しにしたため、それなら24-35mmでf2.8が使える方がいいのではと判断したためである。そして問題の③は、ほぼ動画用である。20mmと70mmを同時に使えてしかも小さいというアドバンテージを評価した。

いま改めて振り返ってみても、狂っているとも思えるし、妥当とも思える。結果としては基本的にすべてのレンズを使用した。①は動画用と思っていたが、16mmの広角が室内風景撮りに必要になった。そして撮ってみてわかったが、16mmでも足りない……。12-24mmが必要だと思わされた。その場合、さらに持参レンズラインナップが混迷することになるのだが、スチルで16mmが必要なシチュエーションでは、16mmですら足りないという局面になってしまった。

②は結局ちょっと使用した。使用したのだが、ぶっちゃけなくてもよかったかもしれない。標準ズームがなくてよかったというのはだいぶ危険なのだが、結果的に他のレンズがカバーしてくれた。しかし、何か一本にしろと言われたら結局これになると思う。都内で仕事をするときにはこれ一本で対応することが多い。

③は動画のみで使ったが、結局ずっとこれを使用した。自分はクロップして使うこともあるので16-35の方が望ましいと思っていたが、24-70ではなく20-70なので、20mmスタートであればほぼ満足のいる広角が使えるのと、35mmでは遠すぎるが70mmあればある程度納得の寄りが撮れるということが多く、サイズのコンパクトさも含めて実に便利につけっぱなしで使うことができた。ここからは純粋にトレードオフの話になるが、24-105だったらもっといい感じに撮れたなと思うこともあるし、28-200だったらさらに個性的な絵が撮れただろうなとも思ったりした。20-70はいちばん丸い感じがする(24-70という定番ズームレンジに対して4mm広いという特徴があるため)。

④は最初からこれを使う気満々だったのでとても多用したが、基本的には素晴らしいレンズである。類似の画角のレンズと比較したときにどう考えても突出した素晴らしい写りをする。前回も別なところで人物撮りをしたが、絞って安定の写りをするところは当然そうなのだが、開放付近で幻想的な写りをするのでとてもよい。写りだけならPlanarも同じくらい素晴らしいが、AFの速度に大きな違いがあるのでF1.2が優れている。なのだが、50mmという画角の限界は越えられないところがあり、今回の撮影では結構50で寄ってひしゃげるな、と思うパターンが多く、しかし引いて撮ると何か変だとなるので、やはり50mmは50mmだった。ポートレートレンジは一般に85mmとされるが、普通にそういうことである。

ということで⑤は必要になるのだが、本当に実に持っていってよかった。顔に寄るにもバストアップを撮るにも実に重宝で、f2.8もありがたい。85mm f1.4や135mm f1.8は開放で使うと幻想的になりすぎる上、2本持ったら2キロに迫りそうだ。ズームはせいぜい1キロ弱なので、便利さのレベルが違う。ただ、性能は70-200mm f2.8の方が優れているので、悩ましいところである。70-180の方が少し軽いのと、さらに軽量化した後期型も存在している。

さてここまでを踏まえて改めて色々考えると、まずムービー用とスチル用を兼用みたいな発想は、かなり妥協をしないと成立しないということが言える。妥協ポイントは明るさとズームレンジである。

速攻で諦めるべきはF2.0未満の単焦点で、2.8で十分基本的にはボケるといえる。特別にアーティスティックなものを撮りたいか、何がなんでも背景を見えないくらいボカしたい場合には必要になるし、たとえば自撮りVlogをしようと思ったら映り込みを初期から除外したいなどの理由によってF1.8以下を使う必然性が出てくるのだが、これを諦めたい。最悪、背景はエフェクトでぼかすこともできなくもない(とても面倒だが)。夜間で撮影するからF値を下げたいというニーズも、ISOを上げて対応するべきだ(できる)。

……最低でもこれくらい強く念じないと人間はすぐに明るい単焦点を持っていきたくなってしまう。

明るさを諦めたら次はズームレンジと重量の問題である。広角でなければ撮れない、望遠でないと撮れないというものはある。一般に大三元ズームでは16mmから200mmをカバーするようになっているので、これは基本である。その上で400mmやら600mmは超望遠としてシチュエーションごとに考えることになる。

超望遠が必要なシチュエーションはほとんど他のレンズは必要ない。たとえば野鳥撮影とか。僕の場合は格闘技の撮影をよくするが、ほとんど400-600mmを使うことになるので、こういう場合は他のレンズは必要なくなる。こういう感じで取材の内容を強くイメージしておくことは当然大事であるが、どこまで時間をかけられるかわからないので、そういう場合は大三元セットで行くことになる。これは思考というステップを省略できるので、そんなに悪いわけではない。

その上でいえることは、無理やり1本で頑張るのであれば、当然標準ズームになる。しかし、24mmより広いものは撮れないし、70mmより遠いものは撮れない。なので、状況によっては標準だけだと破綻する。そう考えると、標準をパスして、広角と望遠だけを持っていくという選択肢が出てくる。これは意外と悪くない気がしてきた。常識で考えると標準を脱落させるとめっちゃ不安になる。1本で諦める場合にはありえないが、2本勝負ならこれはありえる。

2本勝負にする場合、逆説的だが、ムービー用に3本目を設定する選択肢が出てくる。となるとそのときに最適なのはおそらく20-70である。2470 f2.8の新型を使う選択肢がオプションになるが、金額的に高すぎるのと、20-70よりも重いというネックがある。映像では広角が欲しいので、20mmの重要度がスチルより高く、70mm F4なら、けっこうボケ感を出すことができる。音声収録だけ不安が残るが、鋭指向性のあるマイクかガンマイクを装着することでケアできる可能性が高い。

さてそれを踏まえてスチル用レンズだが、自分は今回16-35 F4を使用したが、このレンジについては16-35F2.8の新型が、重量的には最適解かもしれない。広角ではあまりボカさないと思うが、ボケが必要になったときにはF4では厳しく、35mmでF2.8あればかなり潰しが効くからだ。しかし、スチルには別口の問題があって、今回、室内で撮影をしたのだが、全景を撮ろうとしたら16mmでもカバーできなかった。12mmが必要なシチュエーションである。GoProを持っていけばよかったとこの場面で気づいたがたまたま持ってきておらず、ましてや仮にあったとしても一眼画質ではない(とはいえ24MPくらいあると思うので、絞って撮るならGoProでも全然あったほうがマシだった)。広角については、12-24のレンズが必要で、F2.8は高すぎるので、F4が現実的な選択肢になる。性能はF2.8の方がいいが、2.8のボケが必要になることはまずない。

ということはスチル用に1224F4、70-180(か70-200)F2.8、ムービー用に20-70F4が最適セットな気がする。ボディはスチル用とムービー用に一応それっぽいものを持っていくことにするとして(今回はスチル用はα9、ムービー用はZV-E1で、バックアップとしてα7RⅢを持っていった)、標準域が必要になったらレンズを付け替える、という流れだ。ここで重量を確認すると、1224は565g、70-180は1型が810g、2型が855g、70-200が1045gである。あれ、1型がいちばん軽いんじゃん……。そして20-70が488g……抑えの28-200が575gである。ということ超広角をGoProで済ませたらレンズ2本でいける……ゴクり。ちなみに16-35PZは353gである。GoProは154gなのでさすがにこちらの方が軽いが、PZは置き換える選択肢にはなる。いやー12mm諦める方が妥当なのでは、と思えてしまう。12mm必要になることなんてあるのかよと衝撃を受けるばかりだ。16mmで我慢できるようになんとか現場で工夫をすることを考えたくもなる。

さらに向こう見ずなことを言えば、ボディも二台ではなく一台で済ませられたら最高だ。とはいえそうなると映像を撮りながら撮影みたいなことはできなくなる。Vを回しながら写真撮影、というのを諦める前提であれば、α7 Ⅳ一択な気がする(α1を除外すれば)。理由は、クリエイティブルック搭載型のカメラで、フルサイズで、ダブルスロットで、24MP以上の、連写ができるカメラが多分これだけだからだ。諦められる可能性があるのはダブルスロットだけだが、そうなるとα7CⅡも選択肢に入る。そういえばα7RⅤもあったが、61MPは逆にでかすぎる。連写しなくていいならFX3でも写真がいけそうに見えるが、12MPなので印刷用にはかなり不安が残る。いや、A4までなら行けるかもしれないが、商業印刷ではやったことないので怖すぎる。同人誌かなんかで試しておきたいが、自分の実感だと24MPあれば使い物になる。

とここまで書いておいてなんだが、4Kの4:2:2(10bit)でどれくらい撮れるかが最重要なところ、マジでYouTuberは8bitの4Kで検証して「4Kでめっちゃ撮れた!」みたいな詐欺みたいなことしか言っていないのでキレそうになるのだが、4:2:2でどうなのかを改めて調べてみた。全然データがなくて、ようやく一個検証を見つけたが、それによるとHS 4k 24P 4:2:2で、2時間14分録画できたようだ(https://note.com/yuicci/n/n750c764987a3)。

これだけいけるならいける! が、一応FX30も選択肢には入る。だが俺は冷静に考えるとα7SⅢとZV-E1を持っているので根本的には必要ないかもしれないが、現役ながら旧機種のα7Ⅲやα7RⅢに問題を感じているのでこういうことを気にしている。問題は複合的だが、もっぱら動画性能である。これらの機種は当時まで存在していた輸入上の規制で、連続撮影時間が30分までになっていた。これがだるくて、なんとなく回しっぱなしにしているといいところで切れるということが頻発する。普通に考えて1時間くらいは回せた方がいいに決まっている。もう一つの問題は8bitでしか撮れないことで、それに付随してSONYの旧機種はちょっと色味が悪いのでそこも気になる。ただ悪いのもさることながら、新機種とは色のベースが違うので映りが異なって同時に使いにくい気がするというのも懸念材料である。

ただ、なんとなーくYouTubeを見ていて気づいたのだが、バラエティっぽい動画屋はそもそも8bitのFHD 30Kとかでブイブイ回している気もするし、10bit最高みたいなことを言っている4K推しをしている連中も実は4K 8bitで撮っていたりするので「最新機種いらなくない????」となっていることに最近気づいた。一方でBMPCCなどを回しているガチ勢はそもそもSONYを馬鹿にしていて、まあBMPCCは10bitどころか12bitでやっているので、それはそうも言いたくなるわなとは思うところだ。最近は10bitのFX3で『ザ・クリエイター』のようなハリウッド映画や、岩井俊二の『キリエのうた』などが撮られていることもわかり、機動性と10bitの組み合わせのポテンシャルがかなり評価されているという事実もある。しかし10bit以上の撮影は電池も異常に必要になるしファイルサイズはヤバいという言葉では言い表せられないほど膨れ上がるので、現実的にどこまで意味があるのかというとこれは確かに微妙である。REDなどを使っている人もいるはいるが、撮影機としてはBMPCCでプロユースの映画作品が作れるし、そもそもFX3が現場投入されていることを考えれば10bitで十分かつ限界だと思う。ということは個人ユースでは8bitでも十分かつ編集と管理のフローを考えれば妥当だという事実に直面するわけだが……。

そして旧機種であろうとも写真ではほとんど何の問題もない。α7Ⅲで回しているプロカメラマンを見てきたというのもあるが、冷静に考えるとそれに先立つ一眼レフで、Canonの5D Mark Ⅱのような(最高の名機ではあるが)カメラが歴史に残る写真を撮ってきたことを考えればそれは問題ないに決まっている(色味は5Dの方がαの旧機種よりいいとは思うのだが)。現場でもα7RⅢやα9は革命的機種とされていて、これらの登場で一眼レフからミラーレスに移行した人はかなり多数に上る。フラットに考えるとCanonのR5やNikonのZ9、Z8などのより優れた機種もあるし、また一眼レフであればD850が完成された機種だし、フラッグシップの1DXのMK2からMK3あたり、それからD5やD6はたいへん素晴らしい。素晴らしいのだが、プロスポーツやファッションショーでない限りでは必ず欲しいが、それ以外の場面ではほぼいらないため、適材適所ということになる。つまり、画質というよりは、速写性や堅牢性、ホワイトバランスの感度やデータ移行のなめらかさといったユーザビリティの面でよりシビアなものが必要なときにありがたいだけで、それは画質とはまた違った話とは言うことができる。仕事はビジネスなので、費用対効果を考えることは大事だ。

αの旧機種が30分以上撮影できるのなら、ほとんど問題ないのにな、というのが実は唯一の引っかかりかもしれない……。しかしまあYouTubeのような動画を撮る分にはむしろ10分程度のコンテンツになるはずなのだから、むしろ足るを知るという点では、制限を利用してものづくりをするのも大事だとも思えてくる。

ワンオペだったり能力不足だったりするユーザーにとって最大の利点は便利な機材を使うことなのだが、無限にお金がない以上は工夫も必要だし、無限にお金がある場合には人間に金をかけたほうがいいパターンの方が遥かに多いのだった。まあレンズやカメラよりも大事なものはたくさんあります。

もう一つα絡みで言えば、定番のレンズセットは24-105mm F4と55mm F1.8の二本組で、僕もこの2つを使っていた。動画をあまりやっていなかったので、24105のありがたみを理論的にしか捉えていなかったが、今となってはこの2本はだいぶ割り切って入るが実に汎用性のある素晴らしいセットだな、と思う。たぶん、色々となんとかなることが多い気がする。画角を網羅するなら、1635の何かと、28200がいいと思うが、俺もこの割り切りセットでものを考え直すべきかもしれない。単焦点は楽しいが、スタジオで使うのではなければ非常に危険な贅沢品だ。


#追記

余談だがこれの他にスマホとGRⅢとOSMO POCKET初代を持っていった。写真機としてはGRの稼働率はめっちゃ高く、この装備でキャリーをがらがら転がしながらでも撮影することができた。一方、抑えでもっていったOSMOは全く使えなかった。これはGRは首掛けしていたが、OSMOはカバンの中に入っていたからだし、シャッターを一回切ればいいのと、回し続けなければならないのでは違う、という違いでもある。ただ、シネマティックな感じの画質を考慮しないのであれば、最近出たOsmo Pocket 3を使うのが動画としては一番軽快かつ高品質な選択肢な気がする。ただ初代も結構使えるし、28mmという画角の狭さがネックになっていたが、逆に他の機種が広角になっていったのを考えると、28mmが再評価される可能性もあると思った。最軽量機材の求道は果てしない(iPhone 15 Pro Maxを買えばそれで終了という説もあるが)。

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