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「振込手数料、そんなにするんですか?」88歳母がネットバンキングを認めた日

「お墓を整理したから、石屋さんにね、この現金を振り込みたいの」
「振込先は信用金庫だから、近所の信用金庫から振り込みたいの」
「昔は郵便局が安かったけど、今は高いからね」

言い出したら実行するまで絶対に言い続ける母。
「家からでも振込できるんだけどなぁ」
こう言っても納得しない。ここは抗わず、彼女のしたい事を実際にしてみるに限ると経験上学んだワタシ。

「窓口よりは機械の方が安いでしょ」
「でも後ろに人が並んでいると嫌なのよ、画面にごちゃごちゃ書いてあって、読むのに時間がかかるから、人が並ぶと申し訳なくて」

これは「一緒に行ってよ」の合図。
運動がてら近くの信用金庫に行く。

「あら、すいてるわ。よかった」

さっそくATMで振込手続き開始。
母はATMの正面に陣取り、私は横から画面を見る。
その位置関係で、操作画面をタッチし始めるワタシ。
私の指が止まるや否や、正面位置に陣取った母は「戻る」ボタンを押す。

私が画面操作をすると「戻る」ボタンを押して、必ず自分で最初から操作をしようとするんだった!しまった、忘れてた、覚えておこう。

「沢山書いてあるから読むのに時間がかかるのよ」
母の指が最初に止まる画面は「振込詐欺にあたりませんか?」という注意喚起の文字がズラリと並ぶ。

「確かになー、文字も小さいし目が悪くなったら、読むの大変だろうな」「画面に大きく振込詐欺にあたりませんか?とだけ表示している方が分かりやすいだろうな」

高齢者にやさしいデザインってこういう事なんだろうな。

振込先情報が書かれている請求書とATM画面を交互に見ながら、一文字づつタッチする母。
請求書を見ている最中に、コートの袖口が画面に当たった。
入力画面は既に次の画面に移行してしまった。
ATM画面に目線が戻った母は「あら?どうなってんの?」

冬は、たぶん、こんな事あるあるなんだろうな。

いよいよ振込完了かと思いきや、
「入力された金額は限度額を超えるため、お振込み出来ません」

ここまで頑張って入力した母の操作は水の泡・・・

「もういいわ、窓口で振り込むわ」
「窓口で振り込んだら、振込手数料が倍ぐらい違うかもよ」
「倍も違わないでしょ。100円ぐらいは高いかもしれないけど」

窓口のお姉さんは優しく振込手数料額を説明してくれた。

「お口座にこの現金をお預け頂いて、ATMでキャッシュカードを使って振込手続きをしていただければ550円、窓口ですと1100円になってしまいます」

「まぁ、振込手数料、そんなにするんですか?」
ぎょえー、ホントに倍違うんだ!私もビックリした。

「この口座はキャッシュカード作ってないの」
「帰ります」

帰り道、
「お母さんの○○銀行口座はインターネットバンキングできるようにしてあるから、あそこから振込手続きしちゃおうか?」
「そうしてください。通帳とカードを持って、もう一度銀行に行くの?」
「家から出来るのよ」
「あら、そうなの?簡単ね。ハルメク(母が購読している雑誌)にも家から出来るって書いてあったわ。もうそういう時代なのね」

「お母さん、振込しといたよ」
「ありがとうございます。手数料は?」
「220円だったよ」
「・・・」「便利ね」

こうして母はネットバンキングというシステムを理解し認めた、と思う。



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