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親の苦手なことを、助けようと思えること。

子どもの通う保育園では、一年に一回は、一日おかあさん先生(or おとうさん先生)をするというプログラムがあります。

教室の外から見守るんじゃなく、実際に子どもたちのいる教室に入って、一緒に遊ぶのです。

基本的に一日あたりひとり(ひと世帯)でやることになっていて、今日の先生はこの人です!みたいな感じで前に立って紙芝居を読んだりするんです。

私が先生として行く日が決まったことを伝えると、子どもは大喜び。カレンダーを見ながら、その日を指折り数えるようになりました。

きっと子どもにとってはすごく嬉しくて、誇らしいイベントなんでしょうね。

で、ここでひとつ問題が、、

私、大勢の前で話すのが苦手なんです。

いくら相手が子どもといえども、何十人もわらわらいるとパニック状態になってしまい、ものすごく緊張するのです。

仕事ではできるだけそういう機会がないように調整しているんですが、、まあ、避け続けるわけにはいかないよね。。

私は1週間以上前からずっとドキドキしていて、思わず子どもにポロッと弱音を吐いてしまった日がありました。

「おかあさん、みんなの前で話すの緊張しちゃうんだよなあ、紙芝居とか読むのドキドキしちゃうなあ」という感じで。

そしたら子どもが言ったんです。

「おかあさん、大丈夫だよ!

おかあさんは『からすのパン屋さん』の絵本は読めるでしょ?

ぼくが先生に『からすのパン屋さん』にしてってお願いしておくから!」

私、感激。

まだまだ小さいと思っていた息子が、そんなことを言ってくれるようになるなんて。

泣きそうになりました。なんて優しい子なんだろう。

「ありがとう、おかあさん嬉しいよ。でも『からすのパン屋さん』は長いから、もうすこし短いのはどう?」

「そっかあ、そうだよね、じゃあ、、、『もこもこもこ』とかにする?それじゃあ短すぎるかあ」

「ありがとう、大丈夫だよ、どんな絵本でも、おかあさん、がんばって読むからね」

そんなこんなで、子どもの優しさに触れられただけで緊張もだいぶ和らぎ、迎えた当日。

先生「それでは、おかあさん、前に出て、自己紹介と普段のお仕事の内容をみんなに話してあげてください」

うーわ!

きっつー。

絵本読むだけじゃないんかい!(;o;)

まさかの何十人を前にしての自己紹介をさせられて意識が遠のきそうに緊張しましたが、まだまだ小さな子どもたちは可愛くて、私の話す一言一言に大きな声で反応してくれて、ホッとしました。

たくさんの子ども達とおままごとなどをしながら遊んでいたら、息子がニコニコ顔でやってきて、耳元で「おかあさん、『スイミー』だよ!」と言って去っていったのです。

私はなんのことかわからずポカーンとしていたんですが、そのあと先生から「おかあさん、◯◯(息子)くんが、これを読んでほしいとのことなので、皆に読んであげてください」と『スイミー』の絵本を手渡されました。

『スイミー』の絵本を私が大好きなこと、家にあって何度も読んだことがあることを、息子はしっかり覚えていて、「この絵本なら、おかあさんはドキドキしにくいだろう」と思って、先生に『スイミー』がいいってお願いしてくれたんだろうと。

それを理解したとき、熱いものがこみ上げてきました。

息子の優しさのおかげで、そこまでテンパらずに読み終えることができ、皆と楽しく給食を食べ、無事におかあさん先生を終えることができました。

あとから息子に「おかあさん先生どうだった?」と聞いたら、「絵本読むのがんばってたよ!」と労ってくれました。笑

他にも「おかあさん、人気だったねえ」「腰が痛いんだから(腰痛持ちなので)、無理して皆を抱っこしない方がよかったのに」などなど、色々フィードバックをもらいました。

たしかに色んな子から抱っこをせがまれ、お昼ご飯は私が誰のとなりで食べるかでケンカになり、わりと楽しんでもらえたようでよかったです。

息子に「おかあさんが他の子を抱っこするのどう思った?」と聞いてみたら、すこし考えて、すこし複雑そうな顔で、「お家に帰ってからはずっと一緒だからいいやと思った」と胸の内を話してくれました。

おかあさんが人気がないよりは人気があることが嬉しいんだろうけど、おかあさんが先生でいる間は自分だけのものじゃなくなることはちょっと切なくて、でもやっぱり来てくれて嬉しい、と思っていることがよく伝わってきました。

個人としては、子どもたちそれぞれの個性を見ることができて面白かったです。

親としては、子どもたちがのびのび楽しく遊んでいるようすを見られて安心しました。

母としては、息子の優しさに触れることができて、感慨深いです。

本当に苦手なジャンルのイベントなんですが、総じて行ってよかったなあと思っています。

ポロッと口から滑ったことですが、結果的に、息子に大勢の前で絵本を読むことが苦手だと話したこと、今ではよかったなと感じています。

人として苦手なことがあることは恥ずかしいことではないし、隠すこともないかなと思っています。

親は決して完璧でない、不完全な存在だとを教えること。苦手なことに向き合っている姿勢を見せることもまた教育なのかなって。

おかあさんが苦手なことを、自分なりにどうやったら緩和させてあげられるだろうかと考えて、行動に移してくれたことに、大きな意味と成長を感じました。

私に限らず、人が困っている状態を自分はどう解決できるか考える姿勢って、やっぱり生きていくうえで大切だと思うから、今回のことでなにかを感じてくれたなら、これ以上の喜びはないです。

子育てって、本当に素晴らしいなと。

もちろん大変なことはあるけど、子どもという存在は、その大変さを補ってあまりある感動をくれるなあと、常々感じています。




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