2023台湾旅行記 第1部 出国前(14Oct2023)

つい先日、大学生活最後の授業が終わった。あとはテストの結果を待つだけである。そしてもし首尾よくそれに通っていれば、私は晴れて大学を卒業し、社会に放り出されることとなる。
今までテストだレポートだと、私は何かに駆り立てられていた。が、それが急に終わってしまうと、途端に暇になり、虚無感がやってくる。ひょっとすると4,50年後に定年退職した直後もこういう感情になるのだろうか。
何かやらなけらば。でも何を? そうだ、俺は文章のネタがあるじゃないか。時間がないのにかまけて発表できていなかったが今はまさに投稿するべき時じゃないか。

というわけでうだうだとした前口上となったが、以下は2023年10月に私の人生初の海外旅行として向かった台湾旅行の記録である。齢23にして初めて日本から出た男が、異国でてんやわんやする模様の赤裸々な記録である。


14日8時。私は東京駅を出発した直後の湘南新宿ラインの車内にいた。品川駅で京急に乗り換え、羽田空港へ向かい、台北行きの便に搭乗するためである。大学生活を過ごす中で、私は遅寝遅起きというライフスタイルを確立した。そのためこの時間はいつもなら私はベッドの中にいるが、今日は10時50分発に乗らなければならないので、そうはいかない。
私はやたら眠そうにしていた。だがちょうど窓の外に目をやると、寝台特急サンライズ瀬戸・出雲がすれ違い、終着の東京駅に入線していくところであった。自分の行動パターンからして平生けしてお目にかかることはないだろうが、これにより私はかえって旅情をかきたてられた。しかし朝の8時に強制的に起こされるとなると、あの列車の乗客もいささか気の毒ではある。

羽田空港には8時半を少し回ったあたりでついた。こんな早い時間帯なのに、空港はすでに色とりどりのスーツケースを片手に転がした人間だらけであった。

9時ごろであったろうか。私が乗るエバー航空189便の搭乗手続きが始まった。したがって私も列に並び始める。
やはりこういった国際空港は、人間観察をするには最高の場所である。いろいろな人種国籍の人間が一堂に会しているので、たとえ列に並びながらチラ見して、めいめいの旅行客のプロフィールを想像するだけでも飽きがこない。例えばエバー航空の隣にあったスカンジナビア航空のカウンターには、明るい髪色で長身の、いかにもな北欧人が多くみられた。日本から特に遠く離れたところから来たため、ものみな暗めの赤・青の登山用バックパックを背負っている。
そしてこちらはといえば、日台どちらもアジア人が多数派の国であるため、彼らが口を開くまで、一見違いはわからない。しかしながら観察を続けると、概して台湾人の乗客の方が若干浅黒い肌を持っているように思われた。やはり日本より南にあり、より強い太陽光線のもと生活しているからであろうか。(なお以上の記述には、話の内容上人種差別的とも受け止められかねない箇所があるが、筆者にそういった意図は全くないということを、ここに申し上げたい。)

無事に出国審査も終え、出発まで制限エリアで過ごす。思えば私がこういった場所に足を踏み入れるのは初めてだ。それもそうである、国際線に乗ること自体これが初めてなのだから。



エリア内の免税店通りを進む。ルイ・ヴィトン、ボッテガ・ヴェネタ、カルティエ… およそ自分に縁がない店がズラっと並んでいる。こんな店だらけなのに、店の外を見れば、確かに整えたスーツで背筋を整えはつらつと歩く者もいるにはいるが、使い倒したのであろうバックパックを道連れに、あてどなくここの前も通る者もいる。身なりも違えば価値観も違う。そういった人間が、この国際空港に一時的に混在している。しかし彼らが最終的にやることは、乗るべき飛行機にのって各々の目的地に向かうこと、という点では一致しているのだ。

そういえば朝飯がまだであった。私は焼きそばにしようと思った。会計をする。しかし…

この価格である。950円とは!
むろん街中であればここまで出さずともおいしい焼きそばは食べられる。だがここは制限エリアの中だ。まあしょうがない。
だが出された焼きそばは…


花見の出店で出されるものと大差ないものであったのだ。
箸袋の裏には懇切丁寧に箸の使い方が英語で説明されている。ここからメインの客層が誰なのかが垣間見えよう。味は問題なくうまい。だが私は焼きそば950円という世界を理解するのに、食い終わってからももう少し時間を要した。世界は狭いというが、それは移動時間や高層ビルが立ち並ぶ大都市の街並みと言うような見せかけのものだけで、本当は見えてない世界が周りをほじくればすぐに見えてくるものではないか。そしてその自論は、この旅を通して、間違ってなどいないと補強されることとなった。

しばらくするともう出発時刻が近づいてきた。いよいよあと数時間もせず、私は異国の土を初めて踏むことになるのだ。まっこと不思議に思えた。


もう目の前には緑の尾翼のエバー航空が待っている。そしてこれが私を台湾に連れていく!ぼくは依然興奮していた。

そして、その状態のまま機内に乗り込んだ。

                   (第1部 了)

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