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歌舞伎町ではちゃけたガイド

通訳ガイドのぶんちょうです。
「旅は楽しんだもん勝ち」の記事に登場した、めちゃくちゃ旅の楽しみ方を知ってるゲストの話の続きです。

さて前日は竹下通りで、食べ歩きしまくりの楽しいの中年グループさんたち。本日は新宿は歌舞伎町へと繰り出しました。

暮れかかる頃の新宿は、昼間とも夜とも違う微妙な雰囲気を醸し出してくれます。

昼間の東新宿はクセが強すぎて私は苦手。また、どっぷり暮れた後の、真夜中に向かってあやしげな街に変貌して行くような夜の時間帯もまた私には溶け込めない世界です。

ちょうどその、間っこの時間、日暮れ時は、風向きが変わる前のような一瞬の静けさみたいなものをこの繁華街新宿に、かすかに感じます。

実際には24時間、静寂とは無縁のような騒々しい新宿の街ですが、私にはそんな気がするのです。

さて、ゲストの50代3人組アメリカ人は、ここ新宿に連れてきてもらえるのを、とても楽しみにしていました。

その理由は、日本のドラマ「深夜食堂」でした。それって、私の大好きなやつ!あの歌舞伎町を舞台にした人間ドラマが泣かせるんです。

日本のドラマを観ている外国人は思ったより多く、日本のドラマや映画を見てくれていると思うと、なんだかお客様をぐっと身近に感じたりします。

ドラマ(映画にもなりました)の「深夜食堂」は歌舞伎町にある小さな食堂の経営者(小林薫さん)とそこに集まる人達の泣ける話です。

これを観ててくれてるなんて!と俄然張り切りたくなるガイドの私です。思わずドラマのオープニング部分をゲストに見せて「こ、この場面、まさにここよー!」と興奮する私です。

そして、ここがあの新宿かーとスキップして喜んでくれました。

それにしても、大都会東京の、しかも真夜中の歌舞伎町の食堂に集まる人間たちという、日本人から見ても特殊な世界を描いたこのドラマ。外国人の目にはどう映るのでしょうか。

日本食が好きなゲストだったので、肉じゃがやタコウインナーなど旅行者がいくようなレストランでは出てこないような家庭料理を見るのも、きっと新鮮だったことでしょう。

歌舞伎町はゴールデン街を案内していると、どこかで一杯やりたいと。それではと、入ったバーでウイスキーをワンショット注文。すると一気に飲んでしまいました!唖然としていた私の顔を見て爆笑するゲストたち。私もつられて爆笑です。

次にゲストが見つけたのはゲームセンター。日本でクレーンゲームをやってみるのが夢だったみたいです。普通ならゲームをしたいから連れてってとか、バーで飲みたいから連れてってと言われるのですが、この人たちは違いました。

自分で楽しそうなことを見つけるのが得意なんです。通りがかった場所で珍しいものを見つけてはやってみる。その後、皆で必ず爆笑するのです。
なんて素敵な人たちなんでしょう!

クレーンゲームも、もちろんはまりました。おじさん、おばさんがクレーンの周りを囲んで、ひとりがゲームしているのをじっと見つめます。うすっぺらな金属のクレーンが獲物のぬいぐるみをめがけて動きます。

いい感じのところに行くのに、最後はぬいぐるみの表面を滑るようにしてクレーンはするりと獲物から離れてしまう。あの、お決まりのやつです。そしてぎゃーと言って大爆笑。

私まで思わず「あ、もうちょと前、右」などとクレーンの位置指導。このゲストたちのパワフルな雰囲気に完全に飲まれていました。

こうして全部で三日間、毎分のように笑う楽しいグループのおかげでとても楽しいツアーになりました。普通はツアーを楽しくするのはガイドの役割なんだけど、完敗です。

このゲスト、笑って騒いでばかりのようですが、実はすごく人間ができているなと思ったのです。色々な場所を教えてあげる度に「おいしい場所に連れてきてくれてありがとう」とか「あなたのおかげでスムースに切符が買えたよ」と当たり前のことをしてあげただけなのに、いつもいつもお礼を言ってくれるのです。

また、お店で服を選んでいるときも、広げた服を全部きれいにたたむのです。しかも、ささっと上手に。お店の人がやってくれますから心配しないでと言っても、「いいのよ。いつもこうしてるの」と。

夫婦と奥さんの妹と、こうしてよく世界中を旅しているとのこと。きっと世界中に笑顔と幸せを振りまいているのでしょう。私も彼らのおかげで、とても気持ちよくツアーができたのです。

感謝の言葉をいつも伝えてくれる笑顔の素敵な人に出会え、忘れられないツアーがまたひとつ増えました。





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