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通訳ガイドの春夏秋冬

春の書入れ時

通訳ガイドのぶんちょうです。通訳案内士にとって一番の繁忙期は桜の咲く春。各国から「あの有名な日本の桜を見ようじゃないか」とやってきます。インバウンド業界の書き入れ時と言えるのが3月から4月にかけてでしょう。

ガイドは出払い、エイジェントも予約のタイミングの遅いゲストはツアーを断わらざるを得ません。知り合いのガイドいたら紹介してとエイジェントが悲鳴をあげる季節です。

エイジェントによっては2月に合格したばかりの新人ガイドをツアーに送り込むこともあるらしいので、未経験者にとってはガイドデビューのチャンスかもしれないです。

経験を積んだガイドは、一年以上前から「予約」合戦になります。ガイドはフリーランスなので、複数のエイジェントに登録しているのが普通。自分のところにガイドをなんとか確保しようとガイドの予約をする場合もあります。

ガイドにとって、この時期は体調を崩すことが一番こわいです。一日のツアーなら、なんとかやれるけれど、1週間以上のツアーとなれば、それはかなりしんどいはずです。

どの職業も同じかもしれないけれど、ガイドも発熱くらいでは、ニコニコ笑顔でツアーをしています。帰ってくると39℃近くなんていうことも。コロナの今ではあり得ないことですね。急な代わりは繁忙期でなくとも、まず見つからないのです。エイジェントが小さいとなおさらです。


ガイドはとにかく体力の要る仕事です。一日に二,三万歩も歩きます。それが毎日続くと、けっこうこたえます。朝、待ち合わせの高級ホテルのラウンジにおいてある、ふかふかで背の高い、背もたれのついた椅子に座っていたら、いつの間にか爆睡してしまい、気づくと、ちょうど待ち合わせ時間になっていて焦ったことがありましたっけ。

1週間以上のロングツアーは、きちんと仕事をするだけでなく、ちゃんと食べる、ちゃんと寝るを意識して体力を温存しています。お客さんに時間外に飲み会に誘われても、ツアー前半は特に断っておいたほうが賢明だと思っています。お客さんの健康を気遣うのがガイドの仕事ですが、自分が倒れたら元も子もないですからね。

幸い、私は風邪をほとんど引かない体質ですが、1回だけ、2月頃にインフルエンザにかかり、急遽ピンチヒッターを探してもらったことがあります。2月は、一番ツアーの少ない時なので、私のインフルエンザのかかり方は模範ガイドです(笑)すぐに代わりのガイドが見つかりました。


春の繁忙期は大変ですが、気候が気持ちいいし、それに続く5月ごろのツアーも桜は終わったものの別の花が色とりどりに咲き、新緑が本当にきれいでいい季節です。

そして、恐怖の夏

春は忙しいものの気候のよさに救われます。でも、私にとって一番つらい季節は夏です。ロングツアー専門の人たちは7月8月のツアーが全然ないというガイドもいるのですが、この時期は夏休みで子ども連れの個人ツアーがけっこう多いのです。

あの炎天下の暑さの中で歩き続けるのはたまりません。あるとき、アメリカのエイジェントから熱中症の注意がきました。お客さんの話かと思いきや、ガイドが気をつけるようにと。日本人ガイドは仕事だからと無理をしてしまう傾向があるのを心配してくれたみたいです。優しい。

確かにツアー中は暑さとの闘いのようなもの。木陰なんて東京にはそうそうないですから。お客さんが暑さに弱いとガイドも一緒に休憩を取れるのでラッキーですが、めっぽう暑さに強い人もいるのです。

そうなると我慢大会です。あるとき、信じられないくらい暑さに強いお客さんがいました。暑さ慣れしてるとは言え、ヘロヘロになってきた私は心の中で、ゲストがそろそろ暑さにバテて「涼しいカフェに入りたい」なんて言ってくれないかなと淡い期待を抱いていました。

ところが「いつもホットヨガをやっているから、この位の暑さなら大丈夫だよ。」と。頭のなかで描いていた、クーラーの涼しい風と氷の浮かんだ冷たいアイスコーヒーの妄想が吹っ飛んだ瞬間でした。

秋そして冬

秋は2番目の繁忙期です。そう、紅葉のためです。私は寒がりなのですが、冬のツアーは意外と平気です。やはり歩いていると体が温まってくるのですね。雪が降る日でも、つらいほど寒いということはありません。

通訳ガイドの一年はこんな感じです。でも、コロナが明けても、このペースで働くことはやめようと思っています。すっかりなまった身体が言ってますから。「ぼちぼちやっていこうよ」と。

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