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女性は体温が高いから寿司ネタが腐る?

通訳ガイドのぶんちょうです。
外国人のお客様から「女性は体温が高いから寿司職人になれないって言うのは本当か?」と聞かれた。

今まで、色々な日本に関する質問を受けてきたが、この質問は初めてで、かつ衝撃的だった。

一体、どういう意味だろうか。
逆にこちらが尋ねる。
すると「体温が高いと寿司ネタの魚が腐る」と言う話を、けっこうな頻度で耳にすると言う。

日本には、女人禁制に関する昔からのしきたりが多いのは確かだ。
少し前に話題となったが、相撲で女性が土俵に上がらないことは、江戸時代からの、いわゆる伝統だ。

この「いわゆる伝統」が時に、現代に混乱をきたす。相撲協会の理事長を巻き込んで伝統をどう「解釈」するかで揉めた。

神事のしきたりだからーー。これで納得する世の中ではなくなってきている。
女性蔑視という言葉さえ出てくる。

日本人でさえ、正しい答えが出せないでいるのだから、文化の違う外国人に納得できるような答えを出すのは至難の業だ。

富士山も明治時代になる前は女性の登山禁止。江戸時代に男装をして登った女性がいたのは面白い。いやいや、興味深いと言う意味だ。こと女性に関する話題は、言葉に慎重になる。女性の私でさえも。男性にとってはなおさらだろうと思う。

富士登山のような昔に終わった話ならば、ことは比較的簡単なのだが、相撲の土俵や、今回の質問のような現代に関わることを、おいそれと答えるわけにはいかないのである。

特に欧米人の目からは、国会の女性議員の数や企業の幹部職員の数だけから、日本の女性の地位がとても低いのだろうと思われがちなのだ。

昔の話ならば比較的簡単とは言ったが、昔はね、そうだったのよ。今は違うから大丈夫よ。などと言えるはずもない。

その背景には神道の考えがあり、そして、それを説明するためには、神道とは何ぞや?からの説明が必要なのだ。

だから、女性は寿司握れないのか。などと聞かれた私はクラッとした。日本人のなかでは、いかにもありそうなハナシだが、それを欧米人の知識層が知っている。それをどう説明していくか。

まず日本語でググると確かに、そういうハナシは存在していた。少なくとも過去にはあったようだ。

それならと、英語でググると...…記事が出てきた! "The Guardian" と言う有名なイギリスの新聞である。お、おぬしのせいか!

それによると、某有名寿司職人が「女性は月経周期が味覚に影響するため、寿司職人としては劣っている。また、女性は体温が高く、新鮮なネタに悪影響を与えるという説や、化粧品によって嗅覚が鈍くなるという説もある」と語っているとのこと。

どんな文脈でこの発言が出たのかまでの言及はなかったが、なんとも驚きの記事で、これを読んだ外国人がガイドに質問するのは当然だろうと思った。

記事には、女性の寿司職人の言葉が続く。「私たちは香水もマニキュアもつけませんし、お客さまに身だしなみを整えていることがわかる程度の化粧はしています。そうしないと失礼ですからね」と。

もうひとつ例を挙げると、日本酒の製造も江戸時代は禁止されていた。これに関しては理由はよくわからない。

ただ、いずれのケースにおいても神道との関わりがあることは確かだ。富士山は神の宿る神聖な場所。相撲は元を辿れば神事に行き着く。日本酒は神に捧げるお供えものである。寿司の材料である米もまた然りである。

神道における「穢れ」には死や出産や月経がある。だから、さまざまなことが女人禁制とされると言われている。

でも、本当にそうなのだろうか。江戸時代の富士登山は命がけだった。相撲は危険なスポーツ。日本酒造りも危険を伴う過酷な肉体労働だった。ならば、女性たちを危険から守るという意味あいもあったのではないかと、私の勝手が憶測であるが、思うことがある。

ならば、寿司作りはどうなのであろう。まさか包丁を使う危険から、と言う発想はあまりに現実的ではない。なにか女性に寿司を握らせたくない理由があったのではないだろうか。

件のお寿司屋さんに出向いて話を聞いてみたいけど、なんとも高級なお寿司屋さんで、私のようなびびりでは聞くのも緊張してしまいそうなんだなぁ。



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