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クラシック音楽用の最高モニタースピーカー

ハイファイ・オーディオ全盛の時代にそれに適したモニタースピーカーが必要だろうと思っている今日この頃。ここ2か月間の間にいろいろなスピーカーを視聴してきました。当初はモニタースピーカーでなくてもオーディオ用のスピーカーでもよいのかなあと思い、オーディオ店をいろいろとめぐって試聴してみたもののあまり良いものがありませんでした。日ごろからモニタースピーカーで音楽を聴いているので、こうしたオーディオ用スピーカーでそれこそ100万円越えのものもいろいろと聴いてみましたが、真実の音に対し薄い電気的なベールが被さっている感じがもどかしいのです。

いい音の感じ方は千差万別。低音がずんずんと鳴り、アタックの速い音やシンバルを叩く高域を求めている人もいれば、歌声がよく聴こえ、中域が明るく目立つ音が好みの人もいるでしょう。ギターを弾いたときに残る楽器の雑音すら良く聴こえるくらい解像度の高い音など。楽器を弾く人と弾かない人では音のとらえ方が違うのもわかります。バイオリン弾きは高音がよくわかるけれども、打楽器奏者のように低域の感度や超高精度のビートの聴き分けに欠けるのもありがちです。

しかしながらそこに人間の好みのような曖昧さを入れたとしたら真のレファレンス・モニタースピーカーになり得ません。もっと音に対し禁欲的であらねばならないのです。

私の求めている音というのは、バイオリンなどの弦楽器がそのまま鳴っている音、つまりコンサートホールで聴くそのものの音です。やはりそのような用途を考えるのであればスタジオ用モニタースピーカーであろうということでいろいろと試聴。そしてようやくたどりついたのが、reProducer Audio社のEpic5というニアフィールドスピーカーでした。そしてそのシリーズのミッド・フィールド・スピーカーEpic55の試聴が本日可能とのことで渋谷ロックオンカンパニーに行ってきました。

おそらくバイオリンのソロ、弦楽四重奏曲、オーケストラ曲の再現に関しては他に類がないくらい正確さをもって鳴る稀有のスピーカーで、これに匹敵できたのはノイマン社のKH120Aでした。違いはKH120Aの音が乾いた音だったのに対しEpic55の方がコンサートホールで聴かれる良質な残響が乗っている感じでした。パッシブ・ラジエーターがスピーカーの底についているのでその影響かもしれませんが悪いものではないです。こちらの方がコンサートホールで聴く感覚に近いです。クラシックファーンには浜離宮朝日ホールのような床から音が立ち上げってくる感じといった方がわかりやすいですかね。KH120Aはそうした付加している部分がなく出音を忠実に出しているスタジオルーム内での演奏という感じで、音響エンジニアから高い評価を得ているのはわかるような気がします。どちらのスピーカーを選ぶかは、その人の考え方によると思います。私は演奏者なのでEpic55の方が好みですが、KH120Aの場合、後からリバーブをかけるなどの処理はやりやすいと思います。

●Epic55、Epic5、KH120Aでの試聴

渋谷ロックオンカンパニーさんの音響室で試聴させてもらいました。音源はCDだと音響装置に音質的に完全に負けてしまうので24bit9600HzにアップサンプリングしたWaveファイルをUSBメモリに格納して準備しておきました。

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●バイオリンとピアノのデュオ
ラフマニノフピアノコンチェルトNo2のアダージョをクライスラー編曲したもの。クレーメル(バイオリン)&トリトノフ(ピアノ)
Epic55、Epic5はバイオリンの繊細な音がしっかり再現できており、楽器音のノイズまでも正確に再現。感覚的にトッパンホールの前の席で聴いている感じで違和感なし。
KH120Aだとスピーカーの口径が小さい分、ピアノ低音部で濁る。
●弦楽四重奏
ベートーヴェン:弦楽四重奏第10番ハープ:第一楽章 アルバンベルク・カルテット
Epic55で驚いたのは奏者の位置と奥行きがはっきりわかること。ピチカートを弾く手の動きも聴きとれるレベル。KH120Aも同レベル。これは一般の高級オーディオでも再現できないくらいの解像度だと思います。
●オーケストラ
ショスタコーヴィチの交響曲第4番:ハイティンク指揮:シカゴ交響楽団
Epic55で聴いたとき最終楽章のコーダーでティンパニソロが入るところには仰天しました。ティンパニの皮の震えが明確に聴こえてきました。上質のコンサートホールでもここまではっきりと聴こえないと思います。
この曲の第一楽章は大編成の曲なんで各楽器の分離がどうなっているのか聴きどころなんですけども木管楽器の金管群、弦楽群、打楽器の各奏者の音がはっきりわかり、これだけの大編成でありながら第一フルート奏者と第二フルート奏者の区別もできるくらいの超解像度。生演奏だとデットな日比谷公会堂ホールでないと聴き分けができないくらいでしたね。それでいて響きは紀尾井ホールのように瑞々しいのだから驚きました。マイクがどこに吊り下げられていてどのマイクを使っているのかもわかるような恐ろしい再現力。もはや高級オーディオは無用の長物のようにすら思います。
●バイオリンソロ:イザイ無伴奏バイオリン第1番、第2番、第6番
ファニー・クラマジラン(Vn)
Epic5で試聴したときの衝撃は、この曲をトッパンホールで演奏してくれたクラマジランの音そのものであったこと。バイオリンの音をここまで忠実に表現できるとは思ってもいませんでしたが、Epic55ではさらに輪郭がはっきりとより自然に聴こえました。同様にKH120Aも解像度が高く奏者の動きがはっきりとわかるレベルです。

●最終結論
 最後の最後まで迷いましたけども、さしあたりニアフィールドのモニタースピーカーの方が必要だったので、今回はEpic5を購入することにしました。Epic5とEpic55はほとんど同じ系統というよりも、数学的に相似形の関係だといった方がより正確かもしれません。このためEpic5でマスタリングしても問題はないだろうと結論にいたりました。それとかなりデカいので幅広の専用スピーカー台が必要です。下の写真をよく見てくれたらわかりますが、スピーカー台を2台重ねています。

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↑ かなり大きな玉手箱がついてきます。

●注意点
 この精密な音を出力する目的のスタジオモニターは指向性が高いのでスピーカー位置、設置高さはかなりシビア。少しでも動かすと大きく変わります。それとスピーカー台は必須ですね。ReProduceさんはEpic55専用のスピーカースタンドを出すべきでしょう。
このスピーカーの設置はマニュアルの通りに設置しないと意味がありませんので設備が整った店でないと試聴すべきと思います。

●雑感
 アマゾンで購入するとブラックフライデーのポイントがお得なんですけども、ここまで熱心にやってもらって他店で買うのは仁義にもとる行為であるし、これほど立派な環境で試聴をさせてもらえる店は貴重なのでロックオンカンパニーさんで購入しました。結果、ロックオンカンパニーさんのご厚意でネット価格である132,000よりも少し安くしてもらって12万円台に。結局アマゾンで買うよりも安く買えました。

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