Epic5で聴くショスタコーヴィッチの神髄

しかしまあ凄すぎるEpic5の音の正確性。コンサートホールに配置されているマイク位置まではっきりとわかります。ただCDだと確かめようもないので動画で検証してみることにしました。

今回はショスタコーヴィッチの交響曲第4番で検証。声楽が入らないクラシック音楽で最大規模を誇り特S級難度のオーケストラ曲。これ以上ないくらいの複雑でダイナミックレンジも広い曲ありなのでオーディオを検証するには最適な曲だと思います。

この曲はクラシックマニアでも最上級レベルのベテランでないと理解できな難曲なのですが、曲の解釈は考えずにオーディオ的に聴いていきます。この曲のスペシャリスト、木枯らし紋次郎、ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場オーケストラの動画で聴いていくことにします。

1:38 開始前

 まず動画を一時停止してもらって、各楽器の位置を確認してみます。これは、指揮者とオーケストラの意図をきっちりと読んでおく必要があるからです。レアな大編成の曲は、観客のワクワク感でコンサート会場は包まれていますので、その気持ちで見てみましょう。

まずティンパニは2台が中央。数多くのマレットが積んであることに注目です。ティンパニ奏者のこの曲に対する気合を感じます。シロフォンとグロッケンとの距離をみると奥行きをつけておきたいという意図ですかな。オケ曲で打楽器が大活躍する曲は限られるので、打楽器奏者も気合満タンですね。
 トランペットとトロンボーンは中央ひな壇。まあこれは普通。ホルンは8本、チューバ右奥側。この配置はこの曲の最適解。バイオリン群との対比をとるためと考えられます。
 ピッコロ奏者の位置は四管編成なのでかなり左側。ピッコロと他の楽器との掛け合いがとても多いのでこの位置は見渡しが良いと思えますが、アンサンブルは大変そう。アマオケでもピッコロ奏者はプロを雇う場合が多いですね。
 チェレスタは左45度の位置。実演では第一バイオリン群の後方におく場合が多いのですが、明確に聴こえてほしいという意図ですかね。またグロッケンと距離を離しており、音色の違いを感じてもらいたいという意図でしょうね。
 ハープは2台、右奥ですね。左に置く場合の方が多い思いますが、第一バイオリンとコンマスソロとの掛け合いのステレオ効果も考えてこの位置はよいかもしれません。
 弦楽器は両翼配置かと思いましたが、ビオラが右にくるヨーロッパ配置でスタンダードな配置。ここでマイク位置を確認しておくと面白いです。扇形に配置し、釣りマイクも見えます。

画像1

1:49 テーマ開始

 この動画の場合、交響曲第10番のスターリンのテーマで開始になっていますが、1:49からのいきなりトゥッティでテーマ開始が第4番です。配置は確認していたとおりに音が聞こえてくるのかざっとチェックします。Epic5ではトロンボーンが思ったよりやや右側で聴こえてきます。チェロとコンバスの低弦の配置は非常にうまくいっていますね。Epic5はこの奥行き表現が素晴らしい。
 録音エンジニアの腕が素晴らしいのか各楽器群がはっきりと明確に聴こえます。実演では前の席に座らないとここまで分離しては聴こえてきませんね。

16:00~ 強烈なフガートの始まり

 この曲の難所であり第一の聴きどころです。左から第一バイオリンから次々に各弦楽器に遷移していくところを、Epic5が正確にとらえています。弦の刻みがたまりませんね。

18:00 打楽器群が乱入、曲は混乱のうずへ

21:00 ダブルティンパニの最弱音から最強音へ

21:50 低弦から脅し音型で変奏したテーマへ

23:00 コーラングレのロングソロ

コーラングレの長いソロに伴奏する弱音で奏されるクラリネットと低弦がやや奥側から聴こえるます。ゲルギーも汗だく。ソロが多く事故が起こりやすい曲だから大変ですね。

24:30 コンマスのソロ

左側からくっきりコンマスのソロがはっきりと聴こえます。右奥から距離感を感じさせる聴こえるハープとコンバスがグットです。実演では、コンマスがソリスト級の人の場合、天井方向へ高域がとても美しく響きます。

26:30 ファゴットのロングソロ 

ファゴットのロングソロがはっきりと聴こえます。コントラバスのピチカートは右奥から。距離感よしです。伴奏に入ってくるオーボエとファゴット、チェロソロの距離感もよし。

28:00 銅鑼・銅鑼・銅鑼 

ここではかすかに右奥から聴こえてくる銅鑼の音の広がりに刮目。

29:40 第二楽章の出だし

 ビオラが目立つところがあんまりない曲ですけど、ここではっきり聴くことができます。セカンドバイオリンとの掛け合いのところの位置を要チェック。立体的ですね。

31:58 マーラー風

 ここんところは、マーラー歌曲の『パドヴァの聖アントニウス』の流用かな。フーガーぽい弦楽アンサンブルが込み合っているところを鮮明にとらえております。実演でこれくらい細かく聴けたらいいでしょうね。Epic5の解像度に感謝します。

37:00 ショスタコの有名なチャカポコ

 ウッドブロックは実演ではもっと奥から聴こえて来ますが、右奥から近めにくっきり聴こえてきます。楽しいですね。

37:50 ティンパニの弱音

このティンパニの弱音でホールの広がりをとらえたいですね。ホールの大きさがわかりますかね。ここでもファゴットソロが大活躍。ここからしばらくクラリネット、オーボエ、フルートの絶妙なアンサンブル。各楽器音がきっちりととらえられていますね。

41:00 トランペット&トライアングル

トランペットの距離感のある音いいですね。トライアングルの入ってくるところは実演ではもっとはっきり聴こえてくるところだけれども。これはミキシングの加減で音量をおとしてますね。あるいはイコライジングかな。

42:00 コントラファゴットとファゴット

ここで着目したいのがコントラファゴットとファゴットの音色の違いですね。ぶいぶい言わしているのがコントラファゴットです。Epic5は低音の木管楽器をうまく再現してますね。

42:30 低弦の見せ所

コントラバスの音が右から左の壁に跳ね返ってくる反響音をよくとらえています。この奥行きたりませんね。

43:10 バイオリン群 

バイオリン群のデタッシェの音型を主導とする各楽器群の掛け合い。正確に反響がかえってきているのがわかります。かなり立体的。すごい再現能力。買ってよかったEpic5。

46:00 オケ、トゥッティに移る

ここはコンサートでは濁るところだけれどもマイキングがいいのか各楽器群のバランスがよいですね。

47:00 バスクラとピッコロのソロ

右奥と左側からの対比が明確。ピッコロはかなり左にいますね。

49:00 ファゴットソロ 

ここではファゴットソロとコンバスのバイオリン群との距離感を聴いてみたい。それにしてもショスタコはファゴット大好きですね。

52:00 シロフォン 

シロフォンは実演で高音がキンキンと聴こえる箇所だけど、これはマスタリングでやわらかく調整しているのかもしれないですね。

52:00 トロンボーンソロ。

音量的に存在感のある楽器なので実際の配置よりも少し手前に聴こえます。

56:00 ショスタコ火山爆発

最大の聴き所であるショスタコ火山の大爆発。ダブルティンパニがかっこいい。ティンパニ、大太鼓をマルチマイクにしているので、くっきり聴こえます。実演だとホールの残響の影響でモコモトとなりますけどね。
他、トランペットがベルアップしてくるところの音響の直進性はどうかというところ。これも捉えているね。素晴らしい。

1:01 ここは我慢だ。拍手したら負けの鬼門

チェレスタ・ソロ。もともとチェレスタの音は小さいのだけれども高い音域なのでホールで良く通ります。最弱音ながらよくとられていますね。観客もよくわかっているますね。かなり静かにしておられます。クラシック音楽の聴衆のなかでもショスタコマニアは熱心な集団で有名。音楽に対する敬意がまるで違います。曲の終わりはこうでなくては。よくわかっているじゃん。演奏者と観客の一体感。これぞクラシック音楽の神髄と言えます。 

●総評

 この複雑極める音響を実演ではなかなか明瞭に聴くことができないし、この曲を理解していないで録ると無茶苦茶な録音になりがち。これほどマイクをたくさんおいて各楽器間のバランスよく収録されているのは、録音エンジニアがスコアを深く読み込んでいて録音している証拠ですね。かなり優秀な方のように思えます。

 左側では第一バイオリンとピッコロを際立させて、右側ではチェロとコントラバスの奥行きをつけて録音されているので、中央にくる木管群と金管群とのバランスがよいです。また、ファゴット、コーラングレ、バスクラリネットは丁寧に収録されていて好印象。コントラファゴットも明瞭にとれているとは脅威の解像度ですね。

キモとなるダブルティンパニには、マイクを複数たてて弱音から強音までくっきり録られておりEpic5という小さなスピーカーでも明確に聴こえます。
 ポピュラー系の人たちは、Epic5は低音に不満という人もいるようですけども、クラシック音楽的には合格点です。おそらくEpic55だとさらに低音の輪郭がはっきりするものと思います。


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