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将棋ウォーズ対局日誌 その11 プロ棋士の先生に誉めて頂いた思い出の1手

 今回は、以前に、あるプロ棋士の先生に、ご指導を頂いたご縁があった際、将棋ウォーズでの私の過去対局をご覧になって、誉めて頂いた1手があったので、それをご紹介させて頂きます。

 自分の人生の中で、テレビの向こうや本の中でしかお会いすることがなかった日本将棋連盟の現役のプロ棋士の先生に、自分の対局した将棋をみて頂き、しかも誉めて頂けるなんて、夢にも思っていなかったので、すっごく嬉しかったのを、今でも鮮明に覚えています。

□苦しい局面でのラストチャンス

 将棋ウォーズでの10秒将棋の対局で、お相手の方も私と同じ段位の方でした。私が先手番です。相手の方が振り飛車だったため、私が居飛車穴熊の対抗型の戦型になりました。

 以下の図は、後手が△6七馬と指した局面です。この馬を▲同金と取ると、△7八銀と打たれ、次に△8九竜や△8九銀成までの詰めろをかけられます。△1九竜と△5八成桂の存在が強力で、先手にはもはや有効な受けはなく、受けても1手1手の寄り形となります。

 つまり、この局面で馬を取ると負けが確定します。かといって、取らないと次に△7八馬と取られ、この手も詰めろになり、負けが確定します。

 取れないからといって、他に受けるならば、①▲7九金や②7九銀を打つくらいしかありませんが、①ならば、△7八馬→▲同金→△6九銀打ち、②ならば、△7八馬→▲同銀→△6八成桂とかで、自然に攻めを繋いで来て、先手はそのまま受けなしになりそうです。つまりもはや、自玉には、有効な受けはないことになります。

第一図 取れない馬

 この局面で、先手は、もう1つ気にしないといけない危ない筋があります。それは、△8九竜→▲同玉→△7八馬→▲同玉→△6八金→▲8九玉→△7八銀→▲9九玉→△8九金(今の後手には、この最後に8九に打つ留めの金が無いから、この金が打てずに詰まない。逆に言えば、あともう1枚金や飛車を渡すと詰む形。つまり、金や飛車は渡せない)の竜切りからの即詰みの筋です。

 いま改めて局面を眺めると、例えば、この局面で、▲7一竜→△同玉→▲8三銀などと、飛車を渡して相手玉に詰めろをかけるような攻めを行うと、すかさず△8九竜から自玉が先に詰まされて負けてしまうということです。

 馬も取れず、有効な受けもないため、ではこの局面は、先手の負けが確定なのかというと、実は、そうでもなく、まだ可能性のある手段は残されていました。どんな局面でも、簡単に諦めては駄目なことが良く分かります。

 実は単純な話しで、自玉に受けはないけど、まだ自玉は詰めろじゃない。だったら、この瞬間に、相手玉を攻めるしかない!という発想です。対局中は、もし先手が勝つとすれば、ここで行くしかない、と思っていました。

□誉めていた頂いた思い出の1手

 この局面は、勝てるとすれば、詰めろか王手の連続で攻めていきそのまま相手玉を受けなしにするか、相手玉を詰ますか、あるいは、その攻めていく過程で、△6七馬か△1九竜を取れるかという厳しい制約です。しかも、途中で金や飛車を相手に渡して相手の手番にしてはいけない(先手玉が詰まされるから)、という条件付きです。

 まず、▲7二銀と打ちました。この手は、次に▲8三金までの詰めろなので、後手は何か受ける必要があります。後手は△同金上と銀を取りました。そして、先手は、▲同桂成りと金を取り、後手も△同金と成桂を取りました。

第ニ図 勝負の詰めろとなる銀打ち

 この局面が、ポイントとなる局面です。私が指した次の1手が、先生に誉めて頂いた思い出の1手です。

第三図 次の1手は?

 私は、▲8三銀と打ちました。竜を働かせないと、玉を引きずり出さないと話にならないという発想です。実際に、有効な王手をするには、このくらいしか手がないです。対局時にも金は渡せないと思って、銀を打ったと思います。

第四図 誉めて頂いた思い出の1手

 10秒将棋ですし、対局中は、もはや自玉には受けはないので、穴熊の自玉が詰まないこの一瞬のワンチャンにかけて行けるだけいくしかない。もし、逆転で勝つとしたら、これしかない。もし、届かずに負けたらそれはそれで仕方ない。くらいの心境で指していました。

□逆転に成功

 後手は▲8三銀打ちを同玉と取り、先手が▲8一竜と王手して、△8二銀打ちと受けた局面が以下です。

 だいぶん後手玉を攻めては来ましたが、とにかく、まだ条件は変わっていないため、先手は、王手や詰めろで攻め続けるしかありません。

第五図 玉を上ずらせ竜で下から王手

 上の図から、▲6五角→△7四歩→▲7五桂→△7三玉と逃げた局面となり、そこで、ある筋に気がつき▲6七金と、相手の馬を取り、下の図の局面になりました。

 最初の第一図の局面では、馬を取ると△7八銀で先手の負けでしたが、この局面で△7八銀打ちには、先手から絶好の切り返しの1手があります。まるで手品みたいですが、将棋は、局面が少し変わっただけで、全然違う結論になってしまうことがあることが良く分かります。

第六図 玉の位置をみて馬を取る

 相手の方が気がついていて、他には手がないからと、形作り的にあえて当初予定の銀を打ったのか、気がついてなくて打ったのかは分かりませんが、△7八銀を打たれたため、▲4六角と王手竜取りに角を打ちました。この手が非常に厳しく、先手の勝ちの局面となりました。

第七図 逆転の王手飛車

 後手は角の王手を6四に合駒か歩つきで受けるか、玉が逃げるしかありませんが、いずれも▲1九角と竜を取り、後手は要の攻め駒がなくなり、もはや後手からの有効な早い攻めがありません。

 逆に先手は、強力な盤上と持ち駒の攻め駒があり、有効な早い攻め筋が複数あるため、先手の勝ちの局面となりました。結果もこのあといくばくもなく、後手玉を詰まして先手が勝ちました。

 この一局の終盤戦では、穴熊の玉の硬さ・遠さを活かし、一瞬のスキを付いて攻めに転じ、当初、6七と1九にいた相手の強力な攻め駒である馬と竜を取り除き、自玉を安全にしてから攻め勝つという、最高の逆転勝ちの手順を実現することが出来ました。

□今回のまとめ

 今回は、過去にプロ棋士の先生に誉めて頂いた思い出の一局を振り返りました。この将棋コラムを書いたことで、また一生の思い出の作品になったと思っています。

 先生その節はご指導頂き、本当にありがとうございました。あのときの感動、まだ覚えています。

 このように、将棋では、諦めなければ、意外とまだ手段が残されていることがあるので、局面、局面で、何か手はないかと、考えることが大事だと思っています。そして、その際は、盤面全体を広く見て捉えて考えることで、何か良い手や手順が見つかる可能性があると思っています。

 そんなにいうほど強くはないですし、棋力との兼ね合いもありますし、、なにより対局相手もいるわけですし、、言うは易く行うは難しで、そうそう毎回上手く指せるとはいかないのですが。。😅

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最後までお読み頂きありがとうございました。😊

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