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『タカラ~ムの本棚』店主・タカラ~ムの本を読んだり読まなかったりな日常(2022/10/8~2022/10/14)

10月8日(土)


朝4時半起床。散歩に行って朝食。少し休憩してからラジオ体操。
今日は新宿歴史博物館で開催される「チベット現代文学フェス2022」に参加する。午前に映画「ティメー・クンデンを探して」の上映会、午後はチベット文学の翻訳者による座談会という構成。「ティメー・クンデンを探して」は、書籍を持っていて(積ん読)、映画になっているとは知らなかったのだが、今回のイベントの主催者のひとりであるチベット文学翻訳者の星泉さんのツイートで「映画が先でそれをノベライズしたのが小説」とおっしゃっていた。


会場の新宿歴史博物館は、丸ノ内線の四谷三丁目駅と都営新宿線の曙橋駅が最寄り駅なので、まずは新宿に出て、丸ノ内線ルートで向かうことにする。初めて行く場所ということもあり、かなり時間に余裕をもって現地に到着。開場時間まで30分以上あったので、近くを少しブラブラと歩いて、イベントの帰りに寄れそうないい感じの居酒屋がないか探してみたり、公園で時間を潰したりしていた。
映画「ティメー・クンデンを探して」は、歌劇「ティメー・クンデン」を映画化するために役者を探す監督一行がさまざまな村や町を訪ね歩き、「ティメー・クンデン」を演じたことのある人たちのオーディションをしていくストーリー。村から村、町から町へ移動する車中では同行している“社長”が自らの初恋物語を話すという構成になっている。冒頭に訪れた村で、監督は「ティメー・クンデン」の主人公であるティメー・クンデンの妃マンデ・サンモを演じたことのあるスカーフで顔を隠した女性と出会い、彼女の歌声に魅了されて映画の出演を打診する。彼女はティメー・クンデン役を演じたかつての恋人で現在は大学を卒業して町に出て教師をしている男に会って話を聞いてから考えたいと言い、監督一行に加わって役者探しの旅を続けることになる。
なんとも不思議な作品だ。映画に出演する役者を探して旅を続けるというロードムービーとかつての恋人同士だった男女にどのような過去があったのかという、やや謎めいた部分もある。重苦しい雰囲気はないのだが、全般的に暗い印象を受けるのは画面の色調の問題だろうか。合間に挟まれる社長の初恋話は、ともすれば重苦しさを感じさせてしまいそうな作品の中でユーモアでバランスをとっているとも言える。
役者探しと恋人の気持ち探しを続ける一行は、最後にティメー・クンデン役を演じたかつての恋人が働く町の学校へたどり着く。そして、恋人同士だったふたりは、互いの気持ちを確かめる。直接的にその場面は描かれないのだが、ラストのシーンで男の手に残されていたスカーフがすべてを物語っているように感じた。映画をみている間は、静謐で淡々と流れるストーリー展開でずっと頭の中にモヤッとしたものが留まっているように感じていたが、ラストは不思議と納得感があって、旅に同行した女性の謎めいた存在感からファムファタールものの作品をみたような気分にもなった。



午後の部が始まるまでの間に会場後方の物販コーナーで、まだ持っていないチベット文学の本を数冊購入して、2冊以上購入者特典のクリアファイルを入手。午後の受付まで1時間弱あったので、どこかでランチを食べようと会場近くを探し、担々麺を専門に出すお店で汁なし担々麺とビールをいただく。


午後は、このイベントを主催するチベット文学研究会が不定期に発行している「SERNYA」(セルニャ)という冊子についての話とラシャムジャ「路上の陽光」(星泉訳/書肆侃侃房)の朗読、チベット文学翻訳者による座談会という流れで進むのだが、まずは特別ゲストとして現在来日中のチベットの詩人であり舞台演出家としても活動されているプチュン D ソナム氏が登壇して挨拶があった。朗読の際にはチベットの演奏家の方(名前を忘れてしまった)が演奏した尺八の音楽をBGMに訳者の星泉さんが「路上の陽光」の収録作品から一節を朗読され、その後の座談会は、チベット文学の翻訳者であり冊子「SERNYA」の編集チームでもあるメンバーが、「路上の陽光」、「チベット幻想奇譚」(星泉、三浦順子、海老原志穂編訳/春陽堂書店)、ツェラン・トンドゥプ「黒狐の谷」(海老原志穂、大川謙作、星泉、三浦順子訳/勉誠出版)、ラシャムジャ「雪を待つ」(星泉訳/勉誠出版)、ツェワン・イシェ・ペンパ「白い鶴よ、翼を貸しておくれ」(星泉訳/書肆侃侃房)の5作について話をした。いろいろ面白い話があって、「チベット幻想奇譚」では、チベットの作家の書いた幻想小説を13篇収録しているのだが、刊行後に収録作を書いた作家に書籍刊行を連絡したところ、「事前に言ってくれれば新作を書いたのに」と言われ、その後数人からは実際に新作が送られてきたりしたそうだ。そうなると続編の翻訳刊行が期待されるが、そこは既刊の「チベット幻想奇譚」が売れてくれないと難しいかもしれない。
その後もいろいろな話が飛び出して、あっという間に終了時間。フェスは明日10/9まで行われるが私は初日のみの参加。賑わっている物販コーナーなどを横目に会場を後にする。
その足で目をつけておいた会場近くの居酒屋へ。まずは瓶ビール(サッポロ赤星)を注文しメニューを眺める。海鮮メインのお店でいよいよ旬を迎えつつある生牡蠣があったので注文。その他は鰹の刺身と梅水晶というラインナップ。途中で“梵”という福井の日本酒を頼んだ。




2軒めにはもつ焼きの店を選ぶ。中に入ると店内はプロ野球のオリックスにまつわる写真やグッズが飾られていた。店主の推しチームなのだろうか。生ビールを注文し、つまみにはもつの天ぷら、もつ焼き(ガツ、ナンコツ)、鶏皮ポン酢を注文する。もつの天ぷらはこの店の推しメニューらしく美味しかったが、個人的に気に入ったのは鶏皮ポン酢。焼き鳥居酒屋でよく注文するメニューなのだが、他の店は茹でた鶏皮をポン酢で和えているところをこの店は炭火でカリカリに焼いてあって、これば実に香ばしくて美味い。1軒目も2軒目もいい店で当たりだった。


いい感じにほろ酔いで帰宅。就寝読書は「ループ・オブ・ザ・コード」。読み終わるつもりだったが疲れと酔いですぐに寝落ちしてしまった。

10月9日(日)


朝4時半起床。散歩に行って朝食。少し休憩してからラジオ体操。昨日の「チベット現代文学フェス2022」の物販コーナーで購入した分を含めて、我が家のチベット文学はだいぶ充実(というか現代文学に関してもほぼほぼ集まっているのでは?)したので記念写真を撮っておく。しかし、いつ読むのだろうか。もしかしたらずっと読まないままということもある。


今日は松戸のせんぱくBookbaseに行く。先週入荷した「ニューヨーク・ネル 男装少女探偵」(ヒラヤマ探偵文庫)と「翻訳文学紀行Ⅳ」(ことばのたび社)を間借りしている棚に並べるのと、これまでずっと入れ替えていなかったその他の商品を新商品に入れ替えるのが目的。今回新しく並べるのは、15年以上前に早川書房から刊行されていた少年少女向けの海外文学叢書「ハリネズミの本箱」シリーズの作品たち。刊行時にリアルタイムで購入していたもので、一部は親戚の子どもとかにプレゼントしてしまったのだが、いくつか残っていたものがあったので、それを格安で並べることにした。その他、ヒラヤマ探偵文庫から近々に新刊が出るとのことなので、既刊の「写真集 1906年のロンドン」を追加発注していて、それも今回松戸の棚に並べることにする。「写真集 1906年のロンドン」はオンラインでは比較的すぐに売れたのだが、値段がネックなのか下北沢の間借り棚でもまったく動きはない。しかし、下北沢と松戸の棚に関しては、そこで購入してもらうのも嬉しいが、こういう本を出している人たちがいるということをアピールする場として活用していきたいと思っているので、少しでも知ってもらえればそれで良し。
途中の高速パーキングでランチに野菜たっぷりの皿うどんを食べ(写真撮り忘れ)、お昼すぎに到着。いつもは金沢で生活している店長もこの三連休はこちらに戻っていて店に立っていた。お互いの近況などをボチボチと話す。棚の商品を整理し、新刊や新規に設置する本を並べたりしながら、せんぱくBookbaseのオンラインショップで購入した方向けのラッピングだったり、店内ワークショップとして考えているという水引の話をしたり、金沢の本屋事情などを話していた。そうこうしているうちに常連さんらしき子ども連れのお客さんが来店されたので、それを機会に店を後にする。


帰りは夕食の買い物をする予定があって、その前に少し時間を調整する必要もあったため、高速のPAに寄って「ループ・オブ・ザ・コード」の続きを読む。もう残りわずかなので一気に読む。ふたつの一見関係のなさそうな事件が、物語の登場人物たちが有する心の中のトラウマによってつなぎ合わされてラストに向かっていく流れは、読んでいて正直あまりピンとこなかった部分もあった。全体的にはスリリングな展開のサスペンス小説として楽しめる作品でもあり、読み応えもあったように思う。
途中のスーパーで夕食用のお惣菜とケーキなどを購入して帰宅。
「ループ・オブ・ザ・コード」を読了したので、次は何を読もうか考える。いろいろと積んである本があって迷う。とりあえず今日は疲れたので就寝読書はなしで寝る。

10月10日(月)


朝4時半起床。散歩に行って朝食。少し休憩してからラジオ体操。
今日はスポーツの日で祝日。もともとは1964年の東京オリンピック開幕式が行われた10月10日を記念して体育の日として制定された祝日だったが、いつの間にか10月第2月曜日が祝日となるように改定されて、必ず三連休になるようになった。10月10日が祝日になるのはけっこう久しぶりな気がする。というか、いつの間に体育の日がスポーツの日になったのか。
土日にお出かけしていたので、週イチの買い出しは本日出かけることになった。スーパー2軒と農産物直売所、ホームセンターと巡る。途中、昨日が父の命日だったこともあってお墓参りにも行く。
帰宅して午後は休養日。例によってひきこもり生活である。夕食はスーパーで購入した刺し身の盛り合わせとお惣菜で簡単ごはん。冷酒で晩酌。
で、「ループ・オブ・ザ・コード」の次に読む本だが綿矢りさ「嫌いなら呼ぶなよ」(河出書房新社)を選んだ。綿矢りさを読むのはずいぶんと久しぶりで、最近はどんな感じの作品を書いているのだろうかと期待している。また、並行して海外文学作品も何か読もうと思っているが、そちらの選書はまだこれから。


ということで就寝読書は「嫌いなら呼ぶなよ」

10月11日(火)


朝4時半起床。散歩に行って朝食。少し休憩してからラジオ体操。
今日は午前に1本、午後に3本のオンライン会議。午前は30分程度の軽い内容だったが、午後は3連続でけっこう濃度の高い打ち合わせだった。それでも途中モンちゃんが会議に登場して参加者が和んだのでよかった。
仕事中、ベランダでは干した布団でモンちゃんが日向ぼっこしてて、そっちは個人的に和んだ。


業務終了後はボンヤリと動画をみたり、ピラール・キンタナ「雌犬」のレビューを少し書いてみたりする。
就寝読書は「嫌いなら呼ぶなよ」

10月12日(水)


朝4時半起床。散歩に行って朝食。少し休憩してからラジオ体操。
今日は午前に1本、午後に1本のオンライン会議。午後は意見交換会のようなディカッション中心の内容でけっこうみっちりと2時間コース。終了後にすぐに業務を終了して、予約していた歯医者に行く。
就寝読書は「嫌いなら呼ぶなよ」

10月13日(木)


朝4時半起床。散歩に行って、と思って支度して玄関を出たらなんと本降りの雨。モンちゃんは行く気満々で外に飛び出したのだが、いやいやこの雨では散歩は無理。なので今日は散歩はなし。朝食を済ませて少し休憩してからラジオ体操。
今日も午前に1本、午後に1本のオンライン会議。本日の内容はいたって普通。今後の業務の進め方や制度に関する勉強会。
就寝読書は「嫌いなら呼ぶなよ」

10月14日(金)


朝4時半起床。散歩に行って朝食。少し休憩してからラジオ体操。
午前にオンライン会議が1本。今回は社内の課題について、どのように対応していくかをディスカッションする定例会議なのだが、正直不毛な会議だと感じる。課題はたくさんあるけれど、それらを個別に淡々と対応して改善していくという流れになるのは仕方ないが、根本的にどうすればいいのかという視点が薄い。私自身も自分からそうした提案をできていないことには忸怩たる思いはあるので、後ろめたい気分にもなる。さて、どうしたものか。
午後は早めに仕事を切り上げて母の通院の送迎。病院の駐車場に車を止めて綿矢りさ「嫌いなら呼ぶなよ」を読む。これは面白い。史上最年少で芥川賞を受賞してから20年くらい経ち、年を重ねて作家としてもベテランとなっている綿矢りさだが、久しぶりに読んでみてその小説の巧みさが確実にレベルアップしていると感じる。本書は4篇を収録する短編集だが、全編にわたってとにかく黒い、黒い黒い。綿矢りさのブラックな部分が存分に発揮されている。そして何よりワードセンスがすばらしい。リズム感もいいし、登場人物の心理的な葛藤もヒヤヒヤするくらい読者に刺さってくる。デビュー作の「インストール」から芥川賞受賞作「蹴りたい背中」、映画化もされている「勝手にふるえてろ」や「かわいそうだね?」といった作品をこれまで読んできたが、どんどんスケールアップしているように思った。まだ読んでいない他の作品にも興味がでてくる。
先日訪問した山梨県道志村の「もくめ書店」さんが、NHKの朝のニュースでとりあげられて紹介されたというツイートをみた。私は最近ほとんどテレビをみなくなっていて、リアルタイムで放送をみることができなかったのだが、偶然にも加入していた「NHKプラス」で検索したら見逃し配信されていて視聴することができた。それまで一軒も本屋がなかった道志村に子どもたちが本に触れ合える場所を作りたいという店主の酒井さんの思いだったり、実際にさまざまな本に触れて楽しむ子どもたちの映像をみて、改めて「もくめ書店」の素晴らしさを感じ、先日実際に伺った時に感じたお店の雰囲気の良さを思い出した。さっそくTwitterの引用で視聴した感想を酒井さんに送った。秋の紅葉の時期の道志村も素敵なのでとの返信。すぐにでもまた行きたくなってしまった。頻繁に行ける場所ではないのだけれど、定期的に通いたい場所だなと思う。
母の通院が終わりスーパーに寄って買い物をして帰宅。夕食は鍋。実は昨夜も鍋だった。これから鍋料理の回数が増えるだろう。我が家ではたいがい鍋をすると2,3日続けて食べることが多い。ちょっとずつ具材を追加したり、最後に冷凍うどんを入れたりご飯を入れて雑炊にしたりして食べきる。今日が2日目なので、明日の夜が最終日になるだろう。うどんにしようと思う。


就寝読書は「嫌いなら呼ぶなよ」

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