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資産運用・FIRE・仕事・キャリアプラン

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資産運用・FIREを通じたライフマネジメント・仕事のキャリアに関するテーマの考察です。
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記事一覧

収入と余暇のトレードオフを乗り越える:最適なバランスの探求

1. はじめに  社会人であれば誰しもが、より多くの収入とより多くの余暇時間を望んでいることでしょう。しかしながら収入と余暇時間は大抵の場合、トレードオフの関係にあります。頑張って働くことで収入を高めることは出来ますが、代わりに余暇時間を失い、精神的に疲弊します。本稿では収入と余暇時間の最適化をテーマに、自身が望む趣味や余暇を楽しむのに必要十分な資金を出来る限り短い労働時間で稼ぐかを考察します。 2. 収入の最適化と足るを知る心の持ち方 社会人として働いていると仕事の価

キャッシュフローと税負担:高配当株とインデックス売却戦略の評価

1. はじめに  資産形成期の運用方法として格安インデックス投信への積立が主流となりつつありますが、高配当株(ETF含む)も一定の支持者が存在します。本稿では出口戦略におけるインデックス投信(分配金を出さないタイプ)の元本売却と高配当株(半期or四半期配当)の投資効率を考察します。 2. 投資効率を高める税金の戦略的繰り延べ 最初に結論を示すと、生活資金として利用する場合、投資元本の定期的な売却が精神的に苦痛ではない方はインデックス投信の定期売却の方が高配当より投資効率

誤解を解く:ロボアドは本当に低コストか?

 先日の日経にロボアドに関する記事がございました。内容が投資初心者のミスリードを誘う内容になっておりましたので私の見解を示します。  何がミスリードなのかというとタイトルの「手軽に低コストで分散投資」の太字の部分です。ロボアドは確かに手軽です。これは事実として正しいです。また多くのロボアドはポートフォリオ理論に沿ってアセットクラスの分散が効いている場合が多いので分散投資という表記も間違いではありません。  しかしながら「低コスト」という表記は明らかに間違っています。日経

ゴールベース資産管理シリーズ第一弾: 新潮流の探索

1. はじめに  野村證券の社員の方が執筆され日経から出版された「金融サービスの新潮流‐ゴールベース資産管理」という書籍が骨太の内容で本質的な点を的確に指摘する良書でありましたので紹介します。証券業に携わる方は一読することをお勧めします。 2. 野村證券に見るゴールベース資産管理 野村證券というと対面主体のゴリ押し営業でノルマが厳しくて体育会系の会社、というイメージをお持ちの方が多いかと思います。一昔前は回転売買やはめ込みの印象が強く、近寄りがたい印象でしたが、本書を通

アセットクラスとしてのクリプトの評価

1. はじめに  米国でビットコインETFの上場が話題となっています。仮想通貨も誕生から約15年が経ちました。その間に様々な出来事がありましたが、今日では無数のコインが生み出され取引されています。本稿ではクリプトは資産運用のおけるアセットクラスとして成立するか、というテーマで整理いたします。 2. 規制の限界:本質的価値への道 クリプト業界は当初の無法地帯から整理が進み、多くの国で取引所などのサービスを提供する場合にはライセンスが必要となりました。またグローバルでは金融

AI時代のファイナンシャルアドバイス: Vanguardの先見性とAdvisor's Alphaの役割通じて

1. はじめに  バンガードは日本人投資家には低コストETFのブランドとして認知されていますが、ロボアド(VPAS)や401kの受託など様々なサービスを提供しています。本記事では単なるローコストETFブランドを超えたバンガードについて「Vanguard Advisor's Alpha」を教材に理解を深めます。 以下はバンガード社のAdvisor's Alphaの概要ページです。 2. AIの進化と心の琴線に触れる行動コーチングの力 ファイナンシャルアドバイザーはクライ

オルカンvs S&P500

※2024年1月に執筆し投稿出来ていなかった記事となります。そのため一部の記載内容は既知となっている点をご了承ください。 1. はじめに  X界隈の株クラでは日常的にオルカンvs S&P500論争が繰り広げられています。新NISAの開始もあり、多くの方がこの論争の答えを求め情報収集に励んでいます。本稿ではオルカン派vs S&P500派の宗教論争に一定の帰結を与えることを目指します。 2. 論理最適解と過去実績最適解 最初に結論を示します。オルカンは論理的最適解であり、

ビットコインETF承認による変化

※2024年1月に執筆し投稿出来ていなかった記事となります。そのため一部の記載内容は既知となっている点をご了承ください。 1. はじめに  先日SECがビットコインETFを承認しました。これによって伝統的な金融市場に仮想通貨が参入したことになります。本稿ではETF承認の影響、今後の動向について整理いたします。 2. 短期的な資金流入 昨年後半からETF承認期待もあり、ビットコインの価格は上昇を続けていました。今回の承認を受け、短期的にビットコインの価格は更なる上昇が期

リタイア計画と収益順序リスク:FIRE戦略の再考

1. はじめに  昨年末、FIR関連の記事を2本投稿しました。今回もFIREに関連したお話です。投資家の方は収益率の「順序リスク」(Sequence of Returns Risk)という言葉をご存じかもしれません。本稿では順序リスクについてFIREと絡めて考察します。  過去のFIRE関連の記事は下記を参考ください。 2. 資産取崩し期のリスクとそのタイミング:収益順序の真実 収益率の順序リスクは資産形成期にはあまり影響はありません。一括投資の場合、無影響です。積立

賢明なる投資家への道: 生涯投資の哲学と戦略

1. はじめに  2024年がスタートし新NISAが開始しました。オルカンは既に1,000億円以上の純資産を増やしました。想像以上に新NISAマネーが市場に流れ込んでいます。この勢いで10年・20年と運用を継続出来れば、多くの投資家はその果実を享受できます。  しかしながら、歴史はそうならないことをデータで示しています。意気揚々と長期投資を決意した投資家が荒波に飲まれ、途中で離脱してしまうことが過去のデータから分かります。本稿では「長期投資の継続」をテーマに心構えや豆知

労働市場の新潮流:サラリーマン債権とサブスクリプション契約の革新

1. はじめに  一般に資本は「金融資本・人的資本・社会資本」に分類されます。本ブログでは主に金融資本に関して様々な角度から考察していますが、今回は「人的資本」に関して整理いたします。 2. サラリーマン債権:労働者の権利と価値の再定義 ピケティの「21世紀の資本」でr>gが示されて以降、多くの方がr収益を得るために人的資本から得た収益を金融資産に変換するゲームに勤しんでいます。これが一般人が資本主義ゲームで生き残る唯一の手段だからです。  本稿では金融資本のベース

AI時代の労働と資本: 分配の新しいパラダイム

1. はじめに  高度なAIの普及により人間が担う労働が減少するという説が様々なメディアで展開されています。AIの発展によりこれまで人間が担っていた労働は相対的にAIにシフトしていくことは確実ですが、その後の労働市場・社会福祉の在り方については定かではありません。  本稿ではAIが労働の中心に据えられた未来の「分配」についての考察、投資家の取るべきアクションについて整理いたします。 2. 労働の終焉: 新たな分配構造へ 「働かざる者、食うべからず」という言葉がありま

蟻とキリギリス、働いたら負けか?

1. はじめに  ネットの世界には「働いたら負け」と言う名言があります。界隈でニートを肯定する文脈や生活保護を示す文脈で用いられます。ここに「「「」という新たなパワーワードが追加される可能性が浮上してきました。 2. 貯めたら負けの世界 記事では以下の解説がありました。  「金融資産も加味して」という点が反響を呼んでいます。日本の社会保障制度は限界を超えており、見直しは不可避ですが、この方法は到底ベストとは言えません。 「働いたら負け」という言葉の背景には、働けば

FIRE後のロードマップ

1. はじめに  日本でも資産運用の機運が高まり最近はFIREを目指す方が一定数を占めます。特に若年層ほど日本の社会構造・未来に期待が持てず、自己防衛的な観点からFIREを目指す傾向にあります。  本稿ではFIRE達成後に着目し「FIREライフスタイル・資産の取り崩し」を主眼に汎用的なフレームワークが適用出来ないか整理します。前提として日本居住でのFIREといたします。 2. FIRE後の模索 X(旧Twitter)などのSNSの投資アカウントを眺めるとFIRE達成済