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宮城県の暴力団情勢

現在の暴力団情勢

〇概況
 2019年末の宮城県の暴力団情勢は行政からの公開情報に乏しく不明である。周辺情報に基づき活動が見られる系列としては山口組系、山口組離脱系(※)、住吉会系、稲川会系、関東関根組系である。うち最大勢力は住吉会系であり県内勢力の半数以上を占めている。
※神戸山口組、絆會を指すが執筆時点で情勢が極めて流動的な為、詳細は不明。

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 宮城県の直近の暴力団構成員等は全国的傾向と同様に推移しており、同傾向に基づく2019年の推計値は600名程度である。
※注 全国の暴力団構成員等の増減傾向を2005年の宮城県の暴力団構成員等数に乗じて2019年の数値を推計している。


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〇全国における割合
 前述の推計に基づき宮城県の暴力団構成員等を600名と仮定すると、全国の2.1%程度を占めている。県内人口、GDPが全国に占める割合と比較すると、暴力団構成員等が比較的多い地域であると推察される。※出典:①②

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暴力団勢力の推移

〇構成員等数
 宮城県の暴力団構成員等の数は1972年に1700人であった。昭和~平成中期にかけての推移は不明であるが、2005年に1830人と報告されててる。その後約1800人程度で推移したが暴力団排除条例が施行された2011年以降減少傾向を強め2016年以降は1000人を下回っていると推察される。
【構成員等数の変遷(概数)】
1972年   1700人
2005年 1830人
2010年 1800人
2015年 1060人
※出典:③

2012年末時点で宮城県内の暴力団構成員等約1,400⼈の内、500⼈以上が仙台市に居住している。これは35%程度の割合である。※出典:④

〇団体数
 団体数は2006年に50団体、2009年に40団体が確認されている。構成員等数が相当減少していることを踏まえると、2019年時点で20団体以下に減少していると推察される。

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県内組織の変遷

〇概況
 1988年時点で大手広域3団体(山口組・住吉会・稲川会)の勢力は少数であった。東北地方は的屋が強い地域であったが宮城県も例外ではなく、「西海家」と「東京盛代」が2大勢力として認知されていた。以下映像(1986年)に東京盛代(6:49~)、西海家(8:22~)が確認出来る。当時の暴力団社会において独立かつ一定の存在感を持っていた事が分かる。※出典:⑥

 1990年頃より大手広域3団体の東北進出が加速した。1991年に西海家が住吉会の傘下入りを決定。ならって東京盛代も同様に住吉会の傘下に入った。
それぞれ現在の住吉会傘下である西海家(仙台)、西和一家(石巻)として存続している。※()内は本部所在地

 1993年には住吉会を中心として大手広域3団体が県内の8割以上を占める寡占化に入った。2007年には住吉会55%、山口組29%、稲川会9%と報告されている。2017年には住吉会系が県内の70%以上を占めるとされ、住吉会が最大勢力という構図が2020年現在まで至っている。
※出典:③

主な抗争事例

・2007年3月 山口組宅見組系 × 住吉会西海家系(仙台抗争)
・2015年11月  山口組大同会系 × 神戸山口組山健組系(山神抗争)
 ▶2015年~2016年にかけて宮城県下で散発的な衝突が発生した。
  その後抗争のエスカレートは確認されていない。
出典:報道事例より

近年のトピック

〇暴力団排除条例
 2011年4月1日暴力団排除条例が施行された。繁華街で特に取締りを強化する暴力団排除特別強化地域は宮城県内では定められていない。

〇国分町における取締り
 2020年8月に仙台市の繁華街である国分町の客引グループが摘発され、背後に北海道の暴力団が関与しているとされ捜索を受けた。【参考:捜索時映像】。2018年にも沖縄出身者を中心として暴力団の関与が疑われる客引グループが摘発されており、暴力団が国分町の客引きを資金源としている可能性が高い。※出典:⑤

考察

 宮城県の暴力団情勢については公開情報が乏しく2020年時点の情勢は推察の範囲に留まる。しかし2011年の暴力団排除条例施行を切っ掛けに暴力団勢力が減少傾向にあることは確実である。宮城県は東北地方最大都市の仙台市及び最大歓楽街である国分町を抱え、暴力団が資金獲得活動を図りやすい素地を持っている。みかじめ料の授受を暴力団側及び事業者側双方、直罰規定にて取り締まる暴力団排除特別強化地域が国分町に定められておらず、導入の余地があると考える。また準暴力団(半グレ)の活動が宮城県下においては限定的と思われるが、他大都市圏で取締りを受けた勢力が流入する可能性は十分あり警戒が必要である。

(出典)

①内閣府「県民経済計算」https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kenmin/files/contents/main_h28.html
②総務省統計局「人口推計」https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2019np/index.html
③宮城県議会及び県下市町村議会会議録より

④仙台市 「暴力団排除の推進」
http://www.city.sendai.jp/shiminsekatsu/kurashi/anzen/anzen/machi/boryoku/sete.html
⑤「東北一の歓楽街、国分町「客引き包囲網」 グループ幹部を10月に逮捕 仙台市は条例案提出」 産経新聞 2018.12.14 07:00
 東北一の歓楽街、仙台市青葉区の国分町で、迷惑な「客引き」に対する包囲網が敷かれつつある。県警は10月、県迷惑防止条例違反容疑で、客引き組織のリーダー格の男らを逮捕。組織トップの逮捕は初めてで、背後には暴力団の関与も透けて見える。逮捕された3人は沖縄県出身の男ら。国分町で男らを中心に通称「沖縄グループ」を形成、通行人にキャバクラ店などを斡旋。(中略)東日本大震災以降、国分町での客引きの勢力図は激変。捜査関係者によると、震災が起きた平成23年以降、同町で検挙された客引きの約6~8割が宮城県外出身者。捜査関係者は「国分町での『復興バブル』に加え、一部客引きらの間で『仙台は店からのバックマージンが高い。数千円もらえる
⑥YouTube みのむし先輩
https://www.youtube.com/channel/UC53TPUNHmEr5_ZPP1rNw-jQ


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