あの青年は?
背が高くて細身で、スゴく色っぽい体型をしていて色白で、寡黙で恥ずかしがりやな青年と私はそこに居た。
ただただ沈黙の中に居るだけだったが、優しい雰囲気がフツフツと伝わってきて、物寂しい感じの目をしていたが、それは私を守って包んでくれるように感じた。
いったいこの気持ちはなんだろうとお互いに目を見つめ会っていた。
彼は急に照れた顔をして私から目をそらした。
少し顔を赤くしてそっぽを向いたその姿はスゴく可愛くてなぜか気持ちがウズウズした。
彼に近づいた私はその顔を優しく正面にむかせて目を合わせニコリと笑った。
照れて少しうつむいた彼は頬を赤らませて私を上目遣いで見つめてきた。
またちょっと下を向いた彼は本能に従うように私の肩に手をかけてそっと私を抱き寄せた。
彼の心臓がトクントクンとなっている。
その音が妙に心地よくて私の気持ちを包んでくれた。
近付いた彼の顔をマジマジと眺めていると、私と同じようにまばらで少ししか生えてない髭が目立っていた。
肌は白く、まるで女性のように可愛らしい顔をした彼は私と同じ、女性化している男性だった。
その身なりは少女漫画に出てくるような白馬の王子様のようで、清く美しくそこに居た。
胸がときめく私は彼の胸に顔をうずめた。
暖かくそして優しく包んでくれるその体、それは寂しい感情を抱いていた私の心を包んでくれる。
そこに静かな時が流れ互いのかすかな息遣いがその空間に聞こえていた。
気持ちを確かめ会った二人は更に唇を重ね深い愛の中に落ちていった。
優しい時間だった。
ただ肉体を重ね合わせ互いの温かさを確認していたその時間、長い時間のようですぐに感じられた。
私も彼も、唇を離すと目尻から涙がこぼれた。
「離れたくない」
そんな気持ちが胸の中に広がっていく、こぼれた涙が波紋を描くようにゆっくりとじんわりと私の心の中に広がっていった。
だけど彼はその場にスクッと立ち上がり私に背を向けた。
決して言葉を発することもなく、そのまま立ち去ろうとする。
行ってほしくなかった。
だけど彼は何も言わず歩みを進めている。
「いかないで」
そう言葉にすら出来ず、ただただ彼の背中を私は見つめることしかできなかった。
彼はいつの間にか私の視界から消えていて、そして目の前にはただ真っ白な空間が広がっていた。
だがそれは日々訪れる闇の帳の中にスーッと包まれていき、いつの間にか私の世界は闇の中に落ちていた。
深いそんな闇の帳は急に誰かの手によってバサリと剝がされ、私の視界に光を流し込んできた。
・・・
私は目覚めた。
私はそこにいた。
いつもの布団の中には誰かのぬくもりがあったように感じた。
寂しい感情は無かった。
少し嬉しかった。
誰だかわからない名前も知らない青年だった。
だけど彼は私を受け入れてくれていた。
心も体も受け入れ、私を包んでくれた。
彼はいったい何者なのだろうか?
いつか会えるのかな??
私を受け入れてくれる理解者?
これが本当ならいいな
目を覚ました時の気持ちは寂しくはなかった。
きっと彼はどこかにいる。
私と同じように、名前も知らない、声も知らないその人を探しているのかもしれない・・・
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