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「見」えない世界の先の先

「お前に見える世界が全てではない。」

とある漫画が教えてくれた。
世界はどこまでも広大で永遠に広がっている。
僕らの眼球で見える世界など、米粒にも満たない。
僕らの見えない世界で、「見えない」人が、「見えない」行動をし、「見えない」話をする。

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でも、本当に不思議だ。
主観的にも、今自分自身が見ている世界は、当たり前だが自分にしか感じられない。見る景色はその一瞬一瞬が全く異なるが、すべて自分の見ている世界なのだ。
何を言っているんだこいつは、と思うかもしれないが、今自分が見ている世界を俯瞰的に見る事は不可能で、どう口で他者に説明をしても、その他者の見る世界とはまるで違うわけで、当然理解されるものではない。

どれだけ頭で俯瞰的に、他者的に見ようとしても、見たものすべてが自身の脳に焼き付けられて、他者と違うことを因縁付けられてしまう。

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この他者の違いというものは、本来でいけば自身の目の前、つまり自分の目で見ている範囲にいる人間において、初めて感じるものだ。
「この子は私より可愛い」「この人の財布は高そうだから金持ちなのだろう」「肌の色が私と違う、おかしいのではないか」などなど。
世界は他者との比較によって、大小様々な人間同士の軋轢を生んだのだ。それは嫉妬や卑屈、はたまた差別や戦争に至るまで、多くのしがらみを生んだのだが、全ては目の前の「他者との比較」から始まっている。

そんな中、新たな時代が始まる。
「インターネット」の時代だ。

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1995年にMicrosoft社が「Windows95」という、個人で持てるコンピュータ、パソコンを販売し始めた。
今までのパソコンは、会社や一部のマニアでしか普及をしていなかったのだが、遂に家庭でもパソコンというデバイスが普及したことが凄いとされた。
だが、最も革新的で衝撃的だったのが「インターネット」だ。つまり、誰かも分からない世界の人間と個人間で繋がるようになったことが革命的だったのだ。

そして、このインターネットという新時代の目が、世界の俯瞰的な姿を写し出す。まるで知ることのなかった世界の裏側の姿をオンタイムで我々は見る事が出来る。
おそらく一生出会う事もない人と会話もできるし、何かを共有する事もできる時代。

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だが、同時に知らない、会う事もない人間の、背負い背負っている痛みや悲しみまでもが伝わる事になる。それを見て我々は「可哀想だ」「痛々しい」「我々は無力だ」と感じる。最近の若者が外との世界と繋がりを絶とうとするのは、外との異常で過剰なまでの様々な人間模様が垣間見てしまうためではないかと思う。
意識を向けなくてもよい事柄が自然と目の前に映し出されるようなコンテンツが腐るほど湧いて出ている。

そこでもう一つ考えるべきポイントがある。
そう、「他者との比較」だ。
多くの、繋がっているかも分からない歪な繋がりが、まるで監視されているかのような錯覚を感じさせる。あの子の方が可愛い、あちらの方が私のものより素敵だ、と呪禁のように頭の中で反復し、掛けられてもいない同調圧力に気圧されその圧力の波に飲まれないようにこちらも同様に反復する。

「私は彼ら彼女らに馴染めているのだろうか、溶け込むことが出来ているのだろうか?」そんなことばかりが頭をよぎり、まるで自分の人生を自分自身で生きていないような感覚に陥る。

そしてそれは、目の前に立っている他者だけでなく、世界中の他者との比較に規模が膨大した。
それもテレビや映画で映っている、我々からしたら雲の上の存在だけでなく、ごくごく普通の家庭の他者でさえ覗けてしまうようになった。
身近な人間にすら劣っているのではないか、と自身の価値を比べる必要の無いはずの身近な人間でも比較対象としてしまったのだ。

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このように、他人に左右される人生を、否が応でも感じてしまうのだ。もちろんこのネット社会から抜け出すことは可能であるが、同時に多くの利便性を失うことになる。もう我々は複雑怪奇にネット社会に絡まってしまっているのだ。

ただ、自身の見る世界は物凄く広がっていると現代の人々は感じるのだろうが、実際には元々広がっていた世界に新しいツールとしてのインターネットを介して、自ら飛び込んでいるだけなのだ。
結局身を投じているのであれば、とにかく情報を集め、他者との比較に負けないようにしなければならない。この考え方というものが「資本主義」であるのだ。

「資本主義」に生きる世界にいるのであれば、その情報戦に打ち勝ち、他者との比較に負けない確固たる自分を作る他ないのだ。
見えない先の先を見るために必要なのは「情報」だ。

その情報を誰よりも素早く的確に捉える、それが本来の人間のあるべき姿である。

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