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母さん

午後20時。
母さんの携帯のアラームが鳴る。
薬の時間だ。
癌になって摘出したが、転移しない為に今も薬を飲んでいる。
アラームの音を聞くと胸がギュッと苦しくなる。
母さんから癌の連絡を受けた時、俺から出た言葉は「ごめんなさい」。
親不孝な事をしていることは重々承知だった。
それでも自分の人生を誰かの期待に応える為に
使うことができなかった。
ごめんね。

反対してたが、今では俺のライブ映像も音源もいち早く聴こうとしたり、見たりしようとする母さん。
機械音痴で未だにボタン式の携帯を使う母さんにはそこまで辿り着く事もきっと一苦労だろう。

目先のお金や人気に囚われすぎるバンドは終わると思っている。
どこまでいっても誰が聞いているのか、何を歌いたいのかを追求したいと思う。
それでも承認欲求が残っていたり、でかいステージを目指す理由はきっと母さんに恩返しをしたいから。

あなたが産んだ子供をいつか存分に自慢してくれ。
いつかじゃないな。
急げ俺。

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