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『良い戦略、悪い戦略』リチャード・P・ルメルト 村井章子訳 日本経済新聞出版

戦略の基本

戦略の基本は、最も弱いところにこちらの最大の強みをぶつけること、別の言い方をするなら、最も効果の上がりそうなところに最強の武器を投じることである。 p.20

ただし、現在の標準的な戦略理論では、この基本を引き伸ばして、優位性の獲得にまで押し広げられていると云う。

優位性が重要であることは、論理的に間違いがないことを踏まえ、中位の優位性にこだわる取り組みだけでは、良い戦略が本来的に意味出す卓越した強みを手にすることは出来ないと云う。

良い戦略とは

良い戦略とは、第一に、狙いを定めて一貫性のある行動を組織し、すでにある強みを活かすだけでなく、新たな強みを生み出す。だが規模の大小を問わず、同時にいくつものことをやろうとする組織がじつに多い。しかも、掲げた目標の多くが互いに無関係であるばかりか、ときには互いに矛盾することさえある。第二に、視点を変えて新たな強みを発見する。状況を新たな視点から見て再構成すると、強みと弱みのまったく新しいパターンが見えてくる。良い戦略の多くが、ゲームのルールを変えるような鋭い洞察から生まれている。p.20-21

端的に言えば、良い戦略とは

1,目標に向けた一貫性のある行動を組織に促し、既にある強みだけでなく、新たな強みを生み出す。

2,眼前の状況に対して、強みと弱みの新しいパターンを見出し、新たな強みを発見する。

ということになる。

また良い戦略は、3つの要素からなる基本構造から成る。

1 診断−状況を診断し、取り組むべき課題をみきわめる。良い診断は死活的に重要な問題点を選り分け、複雑に絡み合った状況を明快に解ほぐす。

2 基本方針−診断で見つかった課題にどう取り組むか、大きな方向性と総合的な方針を示す。

3 行動−ここで行動と呼ぶのは、基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動のことである。すべての行動をコーディネートして方針を実行する。

悪い戦略とは

対して、悪い戦略には4つの特徴があると云う。

空疎であること−戦略構想を語っているように見えるが、内容がない。華美な言葉や不必要に難解な表現を使い、高度な戦略構想の産物であるかのような幻想を与える。

重大な問題に取り組まない−見ないふりをするか、軽度あるいは一時的といった誤った定義をする。問題そのものの認識が誤っていたら、当然ながら適切な戦略を立てることはできないし、評価することもできない。

目標を戦略ととりちがえている−悪い戦略の多くは、困難な問題を乗り越える道筋を示さずに、単に願望や希望的観測を語っている。

間違った戦略目標を掲げている−戦略目標とは、戦略を実現する手段として設定されるべきものである。これが重大な問題とは無関係だったり、単純に実行不能だったりとすれば、まちがった目標と言わざるを得ない。p.49-50

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