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2-2. 混合物の分離と精製

こんにちは、おのれーです。

前回、物質は「純物質」と「混合物」の2つにまず分類されることを学びました。しかし、物質の性質を調べていくときには、混合物のままだと分かりにくいことが多く、純物質に分離してから実験を行います。

今回は、混合物から純物質を取り出すには、具体的にどのような操作が必要なのかを見ていきたいと思います。

■なぜ、混合物のままだと性質が分からないのか?

混合物は、いくつかの純物質が混ざり合っているものです。したがって、混合物の性質を調べても、どの成分が原因となっているかは、そのままだとわかりにくいことが多いです。

例えば、「食塩水はしょっぱい」ということは、「食塩」がしょっぱいことを知っているから、「水」の性質ではないということはわかると思いますが、もし「食塩」も「水」も私たちにとって未知の物質だったとしたら、どちらがしょっぱくしているのかは分からないはずです。また、どのくらい食塩が入っているか、その濃度によって、しょっぱさは変わってきます。

下に示すのは、水・エタノール(純物質)、水とエタノールの混合物を加熱していったときに、どのように沸騰するかを調べたものです。

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このように混合物は、混じっている物質や、その割合によって性質が変化します。しかし、純物質であれば、融点・沸点・密度などの性質は、物質それぞれに決まっていて、一定の値を示します。

したがって、物質の融点・沸点・密度を測定することで、その物質が純物質か混合物かを調べることができます。

また、分離する際、不純物が少しでも混ざり込んでいると、純物質そのものの性質を示さないことがあるので、できるだけ不純物を取り除いてより純度の高い物質を取り出すことが必要です。このような操作のことを「精製」とよんでいます。


■混合物を分離するには、どのような方法があるか? 


混合物を分離・精製するためには、純物質がもつ固有の性質(融点、沸点、溶解性など)を利用します。下に、よく用いられる方法を取り上げたいと思います。

(1) ろ過 →動画:NHK for School
ろ紙を用いて、ろ液と沈殿を分離します。粒子の大きさの違いを利用しており、ろ紙の目の大きさより小さい粒子はろ紙を通り抜けてろ液となり、大きい粒子はろ紙上に残ります。
 例)砂の混じった海水を、砂と海水に分離する

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(2) 蒸留 →動画:NHK for School 
液状の混合物から揮発性の液体を蒸発させ、冷やすことで再び液体として分離します。物質の沸点の違いを利用しています。
例)海水から水だけを分離する

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余談ですが、ウイスキーなど「蒸留酒」とよばれるお酒は、アルコール濃度の低い原酒を何回も繰り返し蒸留してアルコール濃度を高めてつくります。下の写真は、実際にウィスキーの蒸留所で撮った、蒸留装置の写真です。こんな大きな装置で蒸留しているのですね、、

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また、その昔、工業用アルコール(成分はエタノールとメタノール)を蒸留してエタノールを取り出して飲もうとした人が、完全にメタノールを分離できずに失明したという話があります。メタノールは有毒な物質(メチルアルコール=目散るアルコール)ですので、飲用や消毒には絶対に使わないでくださいね!

(3) 分留 →動画:NHK for School
物質の沸点の差を利用して、2種類以上の液体の混合物から各成分を蒸留によって分離する操作です。
例)ワインから水とエタノールを分離する

(4) 抽出 →動画:YouTube
混合物に溶媒を加えて、目的とする成分だけを取り出す操作です。溶媒への物質の溶解度の違いを利用しています。
例)お茶の葉をお湯につけて、お茶の成分を溶かしだす。

(5) 再結晶 →動画:YouTube
固体をいったん高温の溶媒にすべて溶解させてから冷却し、温度による溶解度の違いを利用して、固体の不純物を取り除く操作です。
例)少量の塩化ナトリウムが混じっている硝酸ナトリウムから、硝酸ナトリウムの純粋な結晶を分離する。

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(6) 昇華 動画:YouTube
固体が直接気体になる変化を昇華といいます。また、固体→気体→固体の一連の変化も昇華とよびます。この変化を利用して、昇華しやすい性質を持つ物質を、混合物から分離する方法を昇華(法)とよんでいます。
例)ヨウ素が混じった砂からヨウ素を分離する

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(7) クロマトグラフィー →動画:YouTube
混合物をろ紙上の一点につけ、ろ紙の下端から溶媒をしみこませていくと、溶媒の移動と共に成分の物質が分かれていくという操作です。物質の種類のよって、溶媒に運ばれる移動速度が異なることを利用しています。
例)インクに含まれる色素を分離する

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今回はここまでです。いろいろな操作が出てきてやっかいですが、一番は実際にやってみることです。なかなかその機会がないという人は、紹介した動画も活用してみると良いかと思います。


最後に、ワンポイントチェック

次の(1)~(5)の混合物を分離するのに最も適切な操作を(ア)~(オ)から、また、その操作名を(a)~(e)からそれぞれ選んでみましょう。
(1)海水から水だけを取り出す。
(2)お茶の葉から有効成分を取り出す。
(3)砂を含むヨウ素からヨウ素を取り出す。
(4)少量の塩化ナトリウムを含む硝酸カリウムから、純粋な硝酸カリウムだけを取り出す。
(5)原油からいくつかの成分を取り出す。

【操作】
(ア)おだやかに加熱し、生じた気体を冷水を入れたフラスコで冷却する。
(イ)高温の水に加えたあと、固体と液体に分ける。
(ウ)加熱すると気体を生じるので、これを冷却して液体として取り出す。
(エ)加熱を続け、特定の温度で蒸発した気体を順次取り出す。
(オ)高温の適当量の水に溶かしたあと、この水溶液を冷却する。

【操作名】
 (a) 蒸留  (b) 分留  (c) 再結晶  (d) 抽出  (e) 昇華法



[こたえ]
(1)ウ、a
(2)イ、d
(3)ア、e
(4)オ、c
(5)エ、b

次回は、もう一度元素の話に戻ります。お楽しみに!

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