王子さま 1
白馬に乗った王子さまはこの世にはいない。
そんなことはわかってる。
ドラマのような展開も、
漫画のような出会いも無いってわかってる。
でも心のどこかでそれを求めている女の人は多いでしょ?
現実に漫画のような出会いがあったら、
誰だって恋に落ちると思わない?
私は持田麻美、25歳の会社員。
彼氏はもう3年もいない。
次に殿方と付き合うなら結婚も視野に入れようと思うと、
なかなか1歩が踏みだせない。
みんなは私をクールで愛想が無いと思っているようだけど、
本当の私はとてもナイーブで、
傷つくことが怖いから「つんけん」とした態度で、
誰にも心を開かない女なのだ。
なぜこんな女になったのか?
それは3年前の失恋が原因。
短大を出て調理師の免許を取得して、
私は介護施設に就職。
小さな介護施設だったけど、
人手が足りなくていつも忙しかった。
短大で2年間のほほんと、
過ごした私が毎朝5時に出勤するのは大変だった。
何度も辞めようと考えたけど、
ここを辞めて次どうするの?
親に怒られるよ、
みんなに迷惑をかけるよ、
次の仕事が楽しいとは限らないよ、と心の声が聞こえてきて、
私さえ我慢すればいいんだ!と自分に言い聞かせてがんばっていた。
そんなある日、いつも野菜を運んで来るドライバーさんが変わり、
30代前半の少しイケメンドライバーになった。
背の高い人で、
腕まくりすると筋肉質で小麦色の長い腕が見えた。
その腕を見て私はドキドキした。
ドライバーが変わり1ヵ月が過ぎた時に、
いつも二言三言しか話したことが無いのに、
その日は彼の方から話しかけて来た。
「朝早くて大変な仕事だよね、
若いのに偉いね!」
「えっ!いえ、仕事なんで・・・」
私は上手く返事が出来なかった。
そしてその次に来た時も彼は私に話かけてくれた。
私は彼が来る日が楽しみになり、
口下手な私は家で話しを考えて、
次に会ったらこれを話そうと鏡の前で練習までしていた。
だんだん彼と上手く話しが出来るようになり、
私は毎日が楽しかった。
そんなある日、仕事が終わりエプロンを外そうとして、
ポケットに手を入れると、
見覚えの無い小さな紙が入っていた。
つづく
もっと飛躍する為の活動資金宜しくお願い致します。