魔女の館の秘密 8
由香さんは優しく、たまに来るお客さんも、
優しい人が多かった。
私はすぐに仕事に慣れた、
主婦を何十年もしていると、
手際良くなんでもこなせるようになるのか?
仕事が簡単に思えた。
仕事を始めて2週間が過ぎたある日。
お店の奥で、
「バタン!!」と大きな音がした。
私は急いで見に行くと、
由香さんが倒れていた。
「由香さん!どうしたの?大丈夫?」
「ごめんなさい、急にめまいがして、
お腹も痛いの・・・」
「えっ!破水??」
「違うと思う・・・」
由香さんは真っ青な顔で苦しい様子だった、
救急車?でも私が車で運んだ方が早い?
私が迷っていると、
「救急車は呼ばないで・・・
大丈夫だから・・・」
と由香さんが小さな声で言った。
「でも病院に行ったほうがいいよ。
私の車で行こう!」
「じゃお願いします。」
私は由香さんをどうにか車に乗せて、
掛かり付けの産婦人科に向かった。
出来たばかりのきれいな病院だった、
由香さんは歩くことが出来ないほど痛みが強くなっていた。
車椅子で診察室まで向かい診察が始まった。
私は診察室の前のベンチで座って待っていた、
なんで救急車はダメだったのかな?
診察は以外とすぐに終わり看護師さんが出て来た。
「ご家族の方ですか?」
「いえ、同僚です。」
「ご家族と連絡取れますか?」
「ご主人はイギリスで、他の家族のことは聞いていないので…」
「少しの間入院してもらうことになったので、
家族と連絡とりたいんです。」
「えっ入院!
赤ちゃんは大丈夫ですか。」
「赤ちゃんは大丈夫よ。過労が原因で倒れたみたいです。」
「過労…」
旦那さんもいなくて、
いつも笑顔だったけど、
やっぱり大きなお腹で働くのは大変だったよね…
なんで気が付いてあげられなかったのかな?
私って鈍感…
病室に入ると由香さんは寝ていた、
さっきより顔色が良くなっていた。
日の光が由香さんの顔に当たっていたので、
カーテンを閉めて、
振り向くと、由香さんが起きていた。
「ごめんなさい起こしちゃった?」
「いえ、大丈夫、私少し入院することになって…」
「由香さんごめんなさい、
私、体調悪いこと気が付いてあげられなくて…」
「ううん、なみさんは悪くないから謝らないで、
私が夜遅くまで仕事していたのがいけないのよ…
心配かけてごめんなさい。」
「体調は大丈夫?何か食べたいものない?
ゆっくり休んで。」
「ありがとう寝たら体がスッキリした、
食べたい物はないけど、お願いがあるのいい?」
「お願い?」
つづく
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