友愛の三種類【ニコマコス倫理学⑫】

こんにちは、らるです。

こちらの本を参考に
ニコマコス倫理学を紹介してきましたが
今回で一区切りです。

最後は『友愛』についての話です。


妬み と 友愛

 アリストテレスは、嫉妬とは他者の善を悲しむことだと言っています。たとえば、他者が価値あるものを手に入れたとき、一緒に喜ぶのではなく、「なんであいつがあれを手に入れたんだ」と悲しむ。それが「妬み」と呼ばれる感情だというわけです。妬みについて、これほど見事で簡潔な定義をほかに知りません。  
 それに対し、友愛とは「相手が価値あるものを手に入れるといいな」と願い、それをお互いに願い合うことです。『ニコマコス倫理学』においては、「善」が大きなキーワードの一つになると再三述べてきましたが、友愛の議論においても「善」が中核的な役割を果たしているのです。

日本放送協会,NHK出版. NHK 100分 de 名著 アリストテレス『ニコマコス倫理学』 2023年 10月 [雑誌] (NHKテキスト) (p.107). NHK出版. Kindle 版.

人はみな、『善』を求めてしか行動しない
という話をしました。

そして、
他者の善を悲しむ = 妬み
他者の善を願う = 友愛

だというわけですね。

これは中々、キレイな定義だと思います。


友愛の3分類

そしてこの友愛には3つの分類があると言います。
とは言っても、これは
前回話した『愛』の分類に対応したものです。

(1)善きもの
(2)有用なもの
(3)快いもの

これらが愛される条件であり

それぞれが
①人柄の善さに基づいた友愛
②有用性に基づいた友愛
③快楽に基づいた友愛

に対応しています。

そしてこれらには、優劣があります。

予想がつくかもしれませんが

いちばんいいのは

①人柄の善さに基づいた友愛 です。

なぜなら、

②有用性に基づいた友愛
③快楽に基づいた友愛

これからは、相手の一部分、一側面に
着目している
のに対して

①人柄の善さに基づいた友愛

は、相手全体を愛することになります。

そして実は、人柄の善い人というのは
有用性も、快楽も与えてくれるもの
なんです。

 そういう人同士が親しい関係を取り結べば、相手への信頼関係のなかで心が開かれ、自ずと楽しい時間を過ごすことができます。また、そうした人たちは、困ったことがあれば、嫌な顔をせずに助けてくれる。相手の全体を認めたうえでの関係ですから、「いま助けたところで見返りがないからやめておこう」とはならず、困ったときには当然助けてくれるわけです。ですから役に立つ人でもある。単なるお人好しではない。  このように、「人柄の善さに基づいた友愛」を実現している人たちは、快楽も有用性もそのうちに兼ね備えている。それがアリストテレスの説明です。

日本放送協会,NHK出版. NHK 100分 de 名著 アリストテレス『ニコマコス倫理学』 2023年 10月 [雑誌] (NHKテキスト) (p.115). NHK出版. Kindle 版.

人柄の善い人と過ごせば

・楽しい時間が過ごせる=快楽
・困ったときには助けてくれる=有用性

というわけです。

やはり、人柄の善い人は
友だちにするには
とても理想的な友達だと言えそうですね。


前回も書いた通り
この「人柄が善い」になるのは難しいですし
当たり前ですが、そういう人と友達になるのも
難しいものです。

よって、人柄の善さに基づいた友愛 というのは
アリストテレス自身も
稀なものだ
、と言っています。

ですが、諦めることなく
日々、一つ一つの選択を大事にして
まず自分が、徳を身につけ
善い人格を目指すことが
理想的な友愛を実現するための
第一歩になるのは、間違いないでしょう。

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