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煙草について思うこと (エッセイ・SS)

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煙草について思うこと(エッセイ・SS)
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煙草について思うこと

敢えて歴が何年、とは言わないが僕は喫煙者だ。 煙草は百害あって一利なし。 その通り。 そんなことはもちろん知っている。 百も承知だ。 世の中が喫煙者を締め出したい風潮にあることにも納得はいっている。 そんな風潮は理解しているので、僕は人知れずこっそり吸うし、なりふり構わずどこででも吸う人間は軽蔑している。 歩き煙草などもってのほかだ。 迷惑極まりないだけでなく、火種を持って歩くような危険行為、容認して良い訳がない。 ましてや近くに子どもがいればなおさら。 健康被害もさ

SS・煙草物語・1/7【introduction】(1087字)

先日、煙草に関する記事を書いた。 煙草に関する皆さんのお話や喫煙・禁煙体験等、沢山の素敵なメッセージの中で、下記のようなコメントを頂いた。 少ない文字数なのに、素敵なショートストーリーを読んだような気持ちになった。 “思うさんの物語もいつか聞かせて下さい。”とのことだが、物語と呼べるようなものはあるだろうか。 少し考えてみた。 意外と記憶に残っている、「煙草の銘柄×思い出」。 コメントをくれたCAおとうふさんのように洒落た文章は書けないが、順を追って書いてみる。

SS・煙草物語・2/7【hi-lite】(751字)

←「introduction」 僕と煙草との邂逅がいつだったのかは記憶にない。両親共に非喫煙者の為、煙草を目にするのは祖父母の家に遊びに行った時くらいだ。母方の祖父母はどちらも喫煙者。記憶を手繰り寄せてみると、少し薄い青色を思い出す。おそらくその家にあったのはhi-liteだったのだと思う。 * 小学校2年生の時、僕は髄膜炎という病気にかかり1~2週間ほど入院した。インターネットなど普及していないその頃、聞いたことがなければそれは一般人にとっては未知の病のようなもの。ま

SS・煙草物語・3/7【Peace】(882字)

←「hi-lite」 高校生になった頃。当時は煙草もまだ200円台。「親に頼まれた」と書かれた印籠を出せば未成年でも簡単に煙草を入手できた、おおらかな時代。興味本位で初めて買ってみた煙草はPeaceだった。何故それを選んだのかは覚えていないが、鳥のマークのパッケージがかっこよかった、程度のものだろう。思春期の子どものやることなど、そんなものだ。初めて肺に侵入してきた煙はお世辞にも美味しいものではなく、ただひたすらむせた。正直、何が良いのか全く分からない。大人とは、苦い、辛い

SS・煙草物語・4/7【Marlboro LIGHTS】(1386字)

←「Peace」 マールボロライトを吸い始めた僕は、大学に入っても相変わらず喫煙者であり続けた。当時の大学とは不思議な場所で、未成年や非喫煙者が大勢いるにもかかわらず10~20m置きにスタンド灰皿が設置されていた。昨今の分煙の世を考えれば冗談のような光景が広がっていた、2000年代初頭。据え膳食わぬは…ではないが、そうまでして灰皿が並べられると吸う本数も必然的に増える。「吸いたいんじゃない、吸わされているんだ。」と言わんばかりに、僕は吸っては吐いてを繰り返していた。原付バイ

SS・煙草物語・5/7【Marlboro LIGHTS MENTHOL】(1868字)

←「Marlboro LIGHTS」 大学を卒業した僕は海の無い県に引っ越し、飲食店を展開する会社で働き始めた。出社後、休憩中、退勤後に一服の、相変わらずのスモーキン’ブギ。「飲みにケーション」「タバコミュニケーション」などという時代錯誤な言葉遊びは好みではないが、その言葉の本質まではどうも否定しきれない。通常ならば言葉を交わすことのない上役と気軽に会話をするようになったのも、喫煙所ならではのものだろう。あくまで僕の場合の話だが、仕事上有利な立ち位置に身を置けたことに、煙草

SS・煙草物語・6/7【CHAMPIX】(1330字)

←「Marlboro LIGHTS MENTHOL」 思うところあって飲食店を経営する会社を退職した僕は、デザイン関係の仕事に鞍替えしていた。営業兼ディレクションといった仕事だが、パソコンを酷使する時間が延びるのに比例するように、煙草の本数は増える。相変わらずマールボロライトメンソールを吸い続けながら、2011年の3月11日を迎えた。 * 僕が住む街を襲ったものが未曽有の大災害であったこともあり、煙草の入手が一時的に困難になった。というより、煙草がどうとか言っていられな

SS・タバコ物語・7/7【iQOS~outro】(2012字)

←「CHAMPIX」 煙の匂いが苦手になってきた僕の前に現れた「iQOS」という名の煙草は、煙を出さない「加熱式タバコ」だという。「煙のようなもの」は出るが、その正体は蒸気。通常の煙草同様、紙筒に詰め込まれた葉の隙間にある水分を専用のデバイスで加熱し、その蒸気に煙草の成分が混ざったものを吸う。煙草という漢字表記も揺らいでしまうほどの技術革新だ。それらのパッケージには「煙草」ではなく「タバコ」「たばこ」という表記が使われていることが多いように思う。そもそもタバコは外来語。スペ