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見た目の年齢について思うこと

僕は自他共に認める、いわゆる「老け顔」だ。

と、いうようなことを、若い頃は飄々とした態度で言う事は出来なかったように思う。

今となってはその感覚は薄れたが、恐らくそれなりにコンプレックスを感じていたのだろう。

(本記事を読んで頂いている方で、コンプレックスを抱えていらっしゃる方、不快に思われる方はこの時点でページを閉じて頂きたい。
特定の人物を傷つける意図の内容は無く、僕自身に関することのみを書いてはいるが、それでも気になる方はいると思うので。)

若いのに老け顔。

そうは言っても20歳の頃に60歳の顔をしていた、とか、そんな大袈裟なレベルではない。

少し上に見られる、という程度のものだ(と思う、思いたい)。

老け顔の人は恐らく、老け顔ならではのエピソードをいくつか持っているのではないかと思う。

本稿では、僕が経験した中から厳選した3つのエピソードを挙げてみたい。
少々長くなるが…

【1】初めての美容院にて

幼少期、僕の髪は父親が切っていた。とは言っても別に父親が美容師という訳ではなく、一般的な会社員だった。

もちろん、素人の割に卓越したカット技術など持っている訳でもなく、髪を切られた翌日は学校に行くのが少し恥ずかしかった。

床屋や美容院にほとんど行ったことのない僕は、散髪翌日の友人達がにキレイな頭で登校してくるのを多少羨ましく思っていた。

中学に入り多感な時期に足を踏み入れた頃、僕は母親に直談判した。

「もう家で切るのは嫌だ。美容院に行きたい」

親からすれば悲しくなるような訴えだったとは思うが、親も観念したのか僕に1000円札を数枚渡してくれたのだった。

初めての美容院。

オシャレな美容師さんに「今日はお休みですか?」などとオシャレな質問を投げかけられ、それに対して僕も「そうなんです」とオシャレに返す、といったテレビで見るようなオシャレな光景を思い浮かべながら、あまりオシャレではない自転車はオシャレな店にオシャレに到着した。

とにかくオシャレな場所、それが美容院。

細かい描写など覚えてはいないが、今だに僕の心に刻まれている初めての美容院での会話は次のようなものだった。

美容師:「学生さんですか?」
僕:「はい!学生です!」
  (…学生さん?僕は中学生。「中」学生だから、
   学生さんで間違いないだろう)
美:「どこ大ですか?」
僕:「…〇〇中学校です…」
 (中学生に見えないんだ…と心の中に湧く熱いものを感じながら)
美:「あ…〇〇中…中学生か…」

言葉の上では小学生も中学生も学生の一種ではあるのだが、主として大学生や専門学校生を指すその単語が、僕にはよく分からなかったのだ。
理解さえしていれば、傷は浅く済んだかもしれない。

今思えば、「さっき受付で名前や電話番号だけじゃなく、生年月日も書いただろうが!気を遣ってくれよ!」である。
しかし当時中学生だった僕の頭にはそんな強気で真っ当な言葉は浮かばなかったのだ。

【2】楽器店にて

場面は変わって高校受験を控えた中学3年のある日のこと。

「お金の掛からない公立高校に入れたらエレキギターを買ってあげる」
悪魔の契約である。
親が僕の鼻先にぶら下げた甘いニンジンに見事に踊らされた僕は、合格の保証も特に無いまま下見と称して楽器店にいた。

美容院の悲劇 season2スタートである。

店員:「どんなのお探しっすか?エレキっすか?」
僕:「あ、はい、エレキギターを。受験終わったら買いたいなと思ってて」
店:「あー、受験生!頑張んなきゃね!センター試験はもう終わったんだっけ?」
僕:(センター試験?なんだそれ。
  試験をやる〇〇センターみたいな場所があるのか?)
 「あ、えぇっと、センター試験(?)は…えぇっと、えぇっと…」
店:「どこ大狙ってんの?専門?」
僕:「…〇〇高校です…。」
 (ここで悲劇の再来に気付く)
店:「あ…〇〇高校…高校受験か…中学生か…」

もう、ただの再放送である。
10代の僕は、自分が老けている自覚を着実に強めていくのだった。

【3】ガールズバーにて

社会人になり、上司に人生初の「ガールズバー」なる場所に連れていかれた時のこと。
カウンター越しにお酒を作ってくれるのは綺麗なお姉さん達。

会話もひとしきり盛り上がったところで、自然な流れで「例の質問」が出る。

店員:「えー、いくつなんですかー?」

僕の年齢を聞いたところで彼女の人生にとって何の利益もない。
日本一つまらない質問をさっさと終わらせる為、女性の背後に漂う美容師や楽器屋店員の亡霊を振り払い、普通に答えようとする僕。

その時だ。
僕の言葉を制止し、「世界一つまらない」でお馴染みの、誰も得をしないあの質問返しを上司が発するのだ。

上司:「コイツいくつだと思う?(ニヤニヤしながら)」

もうデジャブ確定である。
ちなみに当時の僕は25歳。
もちろん老け顔を克服することなく、絶賛進行中である。

しかし、この店員が発したのは意外な一言だった。

店:「案外若いですよね!肌ツヤも良いし!」

(お?初めてのパターンか。当てられちゃったりして。)

店:「ちょっとだけ大人っぽくは見えるけど、私は騙されない!」
 「意外と若くて、35歳!私、人を見る目あるから!」

おい、と心の中で思った。
初めての攻撃パターンだった。
期待させておいて落とすタイプのやつだった。

その「人を見る目」とやらはどこに付いているのだ。
今度その特殊能力ヒューマンアナライザーEYEを人に自慢する時には、
「※見た目年齢と実年齢の乖離判定は除きます」
と、注釈を入れておくことを強くお勧めする。
でないと誰かが傷つく。
争いの火種になりかねない。
食糧問題や温暖化問題、少子化問題にも拍車がかかる。

…と、ここで冷静に考える。
25歳が35歳と判定された、それだけの出来事ではない。
この事件(ヤマ)は今までとは性質が違う。
明らかにもっと重大な、闇深い何かが隠されている。

さあ、紐解いてみよう。

大人っぽく見える(老けて見える)けど実はそこまでいっていない、で35歳。
つまり少なく見積もってもプラス4-5歳は上に見えていたということ。
この時点で見た目アラフォー確定。

そしてさらに僕は気付いていたのだ。
そんな数字を弾き出しつつも、彼女達は気遣いの職業である。
保険を掛けた数字が35歳(見た目は40歳)なのだ。
 そうなると当時25歳の僕が、本当の本当は何歳に見えていたのか。
当時の僕は怖さゆえに計算することから逃げた。
涙がこぼれないように。

【総括】

それから十数年。
さすがにもう見た目年齢などどうでも良い。
こんな風にネタに出来るくらいには、何とも思わなくなってしまった。
というより、この歳になるとそんなイジリをしてくる人もいない。
皆、一様にオジサンになってきているのだ。

願わくば、一度でいいから、コンビニでビールを買う時、居酒屋に入る時、未成年を疑われて身分証明書の提示を求められる経験をしたかったものだ。

今となっては老けていることのメリットも実感している。
いわゆる「落ち着いて見える」という錯覚が起きるため、仕事上、こんな人間でも信用を得るまでの時間を短縮出来るのだ。
それだけではない。
例えば他にも、…他にも、、その他には。。。
…賢明な読者様にはその他のメリットはご自分で勝手に想像して、いや、察して頂きたい。

【おまけ】

蛇足ながら、ある公式を記しておく。
10歳の子供が30歳に見えるのと、70歳の人物が90歳に見えるのでは意味合いが全く違う。
何かしらの指標があれば、自身の「老けてる度(%)」が算出できるのではなかろうか。

(見た目年齢-実年齢)÷見た目年齢×100=老けてる度(%)

【計算例】
本稿エピソード1 美容院編より
見た目20歳として、実年齢13歳の場合
(20-13)÷20×100=35
老けてる度合いは35%

本稿エピソード2 楽器店編より
見た目18歳として、実年齢15歳の場合
(17-15)÷17×100=11.76
老けてる度合いは11.76%

本稿エピソード3 ガールズバー編より
※お世辞を加味した場合
見た目35歳、実年齢25歳の場合
(35-25)÷35×100=28.57
老けてる度合いは28.57%

※お世辞を加味しない場合
見た目40歳、実年齢25歳の場合
(40-25)÷40×100=37.5
老けてる度合いは37.5%

状況、時代、服装などにより数値は様々である。
着ているものがTシャツかスーツかでもだいぶ変動するだろう。

※根っからの文系人間が全く根拠もなくふざけて作った公式なので、信用しないで頂きたい。
あくまで遊びとして活用頂きたい。

ちなみに、数値がマイナスになればそれは童顔判定ということになる。
童顔の方は、それはそれで悩みもあると聞くが。

あくまで自分に甘い自己採点だが、今日現在の僕の数値は10%程度。
やっと実年齢が追いついてきたぜ。多分。

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