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『ドードー鳥と孤独鳥』レビュー

姉妹本『ドードーをめぐる堂々めぐり』とともに

『ドードー鳥と孤独鳥』

川端裕人:著

🦤

この素晴らしい装幀でこそ包み込める、厳粛で、壮大な生物史の物語。

遺伝子、ゲノムから細胞、生物、命、生物相、土地、気候、環境、そしてすべての歴史の、めぐるめぐる堂々巡りの旅路。
これは本当に一言では説明も紹介もしづらい、心をゆさぶる物語。
そう、フィクションだからこそ書くことができた物語。しかし、とても現実的、知的、史実的で、コロナ騒動を経た「今」だからこそ書かれるべきだったのではないか。そして、川端裕人という著者の仕事歴、作品歴、大げさに言ってしまえば氏のこれまでの人生経験があってこそ書かれえたのではないかとも思える、著者の集大成とも受け取れる作品でした。

「絶滅することで永久に生き続ける」という逆説

絶滅、絶えて滅する。もう二度と出会えない。はるか過去に生きていた生物に心引かれる少女タマキ(ボーちゃん)を語り部に、この物語は語られはじめます。
彼女と同じく人の輪に入りにくく孤立しがちで動物好きのケイナちゃんとは、小学4年生の出会いの時からお互いをカタワレと思えるほどの親友どおし。級友たちからはちょっと変わった二人として敬遠されていても、二人でいれば平和で幸せで、自然環境が多く残る百々どど谷で生きる生物たちの観察をして楽しく生活していました。
ある日、タマキの父親の蔵書から、「絶滅動物」について調べた二人は、お互いに自分自身のことをドードー鳥、孤独鳥と考えるようになります。

ドードー鳥は有名な「不思議の国のアリス」にも登場した、かつてモーリシャス島に存在したものの、人間の手により絶滅させられた、「絶滅」の代名詞ともいえる飛べない鳥。

一方の孤独鳥は、モーリシャス島も属するマスカリン諸島のロドリゲス島に存在したドードー科の鳥。まぬけでのろまと表されたドードーとは違い、美しい立ち姿と群れない習性から孤独鳥と呼ばれたが、こちらも人の手により絶滅させられています。

「ドードー鳥と孤独鳥って……似てるよね」
「そうだね、ふたりに似てる」

百々谷の豊かな自然につつまれ、平和に過ごす二人の少女、ドードー鳥と孤独鳥は、その周りに様々な絶滅動物たちの息吹を感じ、姿を幻視するのでした。

しかし、幸せで平和な日々は長くは続きませんでした。
ある日、孤独鳥ことケイナちゃんは、ドードー鳥ことボーちゃんの前から姿を消してしまったのです。

ドードー鳥と孤独鳥、飛べない鳥の小さな両翼は、お互いに別々の道を歩みながらも、少女のころに心に定めた思い。「絶滅」の周りをどうどう巡りし、20年の時を経てまた巡り会うことになります。
方や、絶滅生物に詳しい科学ジャーナリスト。
方や、絶滅生物のDNAを調査するゲノムサイエンティストとして。

生物史に埋もれた過去から現代までの歴史に沿うように二人の物語は堂々巡りしつつも、らせんを描いて新たな象限へと広がっていきます。

その進む先、未来にはいったい何があるのか……。は、是非、本書を読み、失われた生物史のロマンを体験していただければとおもいます。

🦤 🦤 🦤

いんやあ、よかったー。まじ良かったですよこれ。
こういう現実の調査や現代の生物科学を下敷きにしている物語って、書き手としてはめちゃくちゃ難しいはず。
本当と嘘のさじ加減が難易度高いし、はなっから荒唐無稽にはできないですし、なかなか感動的にしにくいと思うんですよね。

でも、単なる史実をまとめたノンフィクションではあり得ない心象の深掘りとイマジネーションの広がりを書き込めるのはフィクションならでは。
これって、その両方の実力を兼ね備えている川端裕人さんの、まさに真骨頂なんじゃないかなと思いました。

そして、読み心地がほんとうに良いのです。語り手がサイエンスライターでもとジャーナリストってこともありますが、文章表現がとてもうまく(言うまでもなく、川端裕人さんの以前の職でもあります)、科学的な描写も適切で、ウエット過ぎずにすっきりと、精妙で知的な女性の心理や、絶滅種への想い、自然への想いが見事に描かれています。

これが、この美しく高級感あふれる装幀でつつまれている幸せ☆
おもわず背筋をしゃんとのばして、自然の中で読みたくなってくる、そんな素敵な本でした。

装丁家の山田英春さま、そして発行してくださたった国書刊行会さま、良い仕事されてます。そしてそして、このような素敵な物語を書き切ってくださった著者の川端裕人さま、ありがとうございます☆

※なおこの本の姉妹本に『ドードーをめぐる堂々めぐり』があります。

https://note.com/rasen/n/n7e73cea22053

こちらはノンフィクション版。
これも良いですよー☆
できれば両方読むと面白さ倍増! 知的探求心くすぐられまくり! 自然科学・生物史好きにとってもおすすめです☆


※電子書籍版も出てるようですがこれはぜひ紙で読みたい素敵装丁☆

追記:

この素晴らしい装幀について、版元の国書刊行会さまが制作小話を公開してくださいました。

こちらもぜひどうそー☆


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