「ものづくり」という反動イデオロギー
【書評】情報の文明学(たけの書見台)
この工業の反動イデオロギーは、「ものづくり」という言葉に現れたのではないでしょうか。
非常に面白い視点です。
簡単におさらいすると、工業が王様の時代があり、そこから少しずつ情報産業が幅をきかせはじめるとき、王座にいる工業から、きっと何かしらの反動が出てくるだろう、と梅棹さんが指摘していた、というのが話のきっかけです。
で、その反動イデオロギーが「ものづくり」という言葉に結実したのではないか、と。
たしかに、その通りに感じます。そして、そこにある種の皮肉があるわけですね。
なにしろその「ものづくり」という言葉を生み出し、流通させ、世間一般にまで広めたのはメディア、つまり情報産業なのです。
結局の所、情報産業に向けた反動イデオロギーすら、情報産業のレイヤーに載せなければ、実質的な意味を持ち得ない。そういう現象として見て取ることができるでしょう。
これを、メディアの手のひらで遊ばれるしかない的悲壮感を持って眺めることもできるでしょうが、むしろこの現象に、工業と情報産業が共に歩んでいける余地を見出したいところではあります。
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