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読者の利益を考える #burningthepage

本は死なない』の第11章「出版業界の革命的変化」より

電子書籍革命で最も重要な役割を果たすのは、書店でもなければ作家でもない。ましてや出版社でもない。読者である。

まるでドラッカーが書いたような文章です。でも、これはおそらくその通りでしょう。

すでに本を読んでいる人、そしてこれから本を読む人が鍵を握ることになってくるはずです。

本書では、米国人の多くが一ヶ月に一冊も本を買っていない、なんてデータが紹介されていますが、これは悲嘆すべき事態ではありません。もし、そういう人たちが一ヶ月に一冊でも本を買ってくれるようになるならば、状況は大きく好転します。ドラッカー的にいえば、ノンカスタマーに注目するのです。

日本でも、本を買う人は、とことん買う(読める分量以上の本を買う)、たまに買う、まったく買わないの3つの層に分けられるでしょう。電子書籍を積極的に利用しているのは一番目の層です。

もし、電子書籍が普及していき、アプリや音楽を楽しむような感覚で二番目、三番目の層にリーチできるようになるならば、一人当たりの売り上げは小さくても、全体のパイが大きくなることは十分考えられます。もちろん、二番目、三番目の層から一番目の層に以降する人なんかが出てくれば、御の字です。

そうした「未来の読者」にどれだけアプローチできるか。ここがポイントになってくるでしょう。

米国の出版業界は出版社、書店、作家の三者で形成されている。
(中略)
三者の関係は単純ではない。ある点を中心に複数の恒星が軌道上を周回する多重星系のように、相互に影響を及ぼし合いながら複雑な関係性を形作っている。だがその複雑な関係性が、最終的には読者にとっての利益につながっている。

そこで重要なのがここです。

出版社、書店、作家の全てが読者にとっての利益を考えて行動しているか。もし、これができていなければ、電子書籍の普及は大きな時間がかかるでしょう。逆に、読者にとっての利益を考えているところが一つでもあれば、そこが総取りすることになるかもしれません。

現代では、どの立場であっても、直接読者とつながることができます。電子書籍となれば、ウェブとの親和性も高まるわけで、その傾向はより一層強まるでしょう。

そのことを理解していないと、見当違いな施策に始終してしまうかもしれません。

書店は、販売の最前線であり、書い手としての読者と直に接する機会が多い組織でもあります。だから、読者にとっての利益は、イメージしやすいでしょう。

では、作家と出版社はどうでしょうか。全部が全部とは言いませんが、いささか怪しいところもあるでしょう。

出版社は書店に向けて仕事をし、作家は出版社の方を向いて仕事をする、という状況もきっとあったでしょう。

この二つが読者の方向を向いていなければ、未来の読者を掴まえることはできないでしょう。もちろん、どのタイミングからでも修正は可能です。今からでも、遅くはありません(たぶん)。

「読者のことを考えていない」施策というものが、具体的に何を意味するのかは、ここでは指摘しません。

ともかく、読者のことを考えて、ビジネスモデルなりプラットフォームなりを設計していかないかぎり、先行きは暗いであろうと書くに留めます。

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