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「いつかやること」リストって、どう扱う?

以下の記事を読みました。

「いつかやる」タスクは、どうするべきなのか? - 情報管理LOG

これについて、本稿でも少し考えてみます。

まずはGTDのおさらいから。

三つの行き先

GTDの中で、「すぐに行動を起こすべき?」という自問にYesという返答がなかったものの行き先は三つあります。

「ゴミ箱」
「いつかやる/多分やるリスト」
「資料フォルダ」

まずポイントは「ゴミ箱」の存在です。「すぐに行動を起こすべき?」という問いにNoと答えたもの全てが「いつかやる/多分やるリスト」や「資料フォルダ」に入るわけではありません。やる必要を感じないことは、ゴミ箱に入るわけです。あたりまえ? まあ、そうかもしれません。

で、GTDでは、「現時点ではどうにもできないが、忘れてしまいたくない」物事や「今はできないけれども、できればいいな、だから忘れたくない」物事をリスト化します。

そして、リスト化とは、単なる列挙ではなく、一つの属性のグルーピングでした。つまり、そのリストには、「現時点ではどうにもできないが、忘れてしまいたくない」物事が含まれていると共に、「現時点ではどうにもできないが、忘れてしまいたくない」物事ではないものは含まれていないことになります。

そういう状態が維持されていることが、それがリストであることの意味です。

何がそこに入るのか

「いつかやる/多分やるリスト」について、もう少し考えてみましょう。

「いつかやる」の部分に関しては、開始時期が決められない、ということでしょう。開始時期が決められるなら、それはカレンダーに記録されるはずですし、開始時期を決められなくても再検討したいタイミングが決められるなら、それは備忘録ファイル(43フォルダ)に送られるはずです。

そういうのが決められないものが、「いつかやる/多分やるリスト」には入ります。でもって、繰り返しになりますが、そういうものが決められるものは「いつかやる/多分やるリスト」には入っていないことが、リスト化の意味です。

では、「多分やる」に関してはどうでしょうか。これは日付うんうんというよりも、コミットメントの強度ということでしょう。やりたい気持ちはある。しかしそれはプロジェクトとして選ぶほど強いものではない。そのような物事が「いつかやる/多分やるリスト」に入ることになります。そして、そうでないものはこのリストには入れないのが、リスト化ということの意味です。

リストの扱い方

さて、このリストをどのように扱うのか。これについては『全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』に以下の解説があります。

このリストの確認は週次レビュー(86ページ参照)の中に組み入れていこう。
また、「いつかやる/多分やるリスト」と似ているものの、定期的に確認する必要はなくて、特定の活動をしたいときにのみ確認したい物事もあるだろう。
「プロジェクトリスト」「連絡待ちリスト」「いつかやる/多分やるリスト」は、忘れない頻度で確認し、更新していけばよい。

これらの記述からわかることは、「いつかやる/多分やるリスト」は定期的に(主に週次レビューにおいて)確認することが、推奨されている、ということです。

問題は、この「確認」です。

確認というと、なんとなく上から下を一通り眺める、というような印象を覚えるでしょう。しかし、最後の引用には「確認し、更新していけばいい」とあります。つまり、眺めるだけではだめなのです。

では、何をするのか。

もう一度リスト化について思い出しましょう。リストとは、ある属性によるグルーピングです。でもって、「いつかやる/多分やるリスト」に入っていていいものは、「現時点ではどうにもできないが、忘れてしまいたくない」物事です。

よって、各項目を一つひとつチェックしていき、そうであるのかを確認する必要があります。で、もしそうでないものが混ざっているなら、リストの移動が必要です(それが一番厳しい意味でのリストを使う、ということの意味です)。

・現時点でどうにかできるようになった→次の行動リスト
・やりたい気持ちが高まった→プロジェクトリスト
・再検討したい時期が見えてきた→備忘録ファイル
・関心が極めて薄くなって、別に忘れてもいいと思えるようになった→ゴミ箱

こうした作業を行うことが「更新」の意味です。私がよくリストについて「混ぜるな危険」と言っているのも同じ意味です。

判断は下すこと

ここで、デビッド・アレンの手厳しい意見を紹介しておきましょう。

「いつかやる/多分やる」と「あとで判断する」は大きく違う。たまに「あとで判断しよう」というものを「いつかやる/多分やるリスト」に片付けて安心している人がいる。しかし、こういう人は、「時間ができたときにどうするか判断しよう」と自分に言い聞かせて、とりあえずそこに置いているだけだ。このようなやり方はお勧めできない。私の経験からすると、そのような人があとで"判断"することはほとんどない。

耳の痛い話です。でもって、GTDのワークフローが「自問とそれに対する答え」という形になっているので、「いつかやる/多分やるリスト」に「あとで判断する」ものを入れてしまうことを止めることはできません(判断の誤謬を抑止できない、ということ)。

「いつかやる/多分やるリスト」に含まれるべきものは、自分がその物事に対して考えたあと、「現時点ではどうにもできないが、忘れてしまいたくない」と判断を下したものです。何も考えなかったのではなく、一通り考えた後で、「これについては、今は考えないようにする」とジャッジメントを下したものです。

で、週次レビューでは、このリストに記載されている項目について、再び同じ自問を繰り返して、ジャッジメントを下していくことが必要となります。

さいごに

というのが、一応の理論というか理屈です。

ポイントは、「いつかやる/多分やるリスト」は「あとで判断するリスト」ではない、ということでしょうか。判断を後回しにしたものが積み上がると、そのリストを目にするのが嫌になってくる、というのはごく自然な反応なので、このリストの扱いが難しいのもよくわかります。

あと、人は自分が抱えたものの価値を高く取らえ、それを捨てることに拒否感を示すバイアスがあるので、「あとで判断する」ものを入れなくても、「いつかやる/多分やるリスト」が肥大化してしまうこともあります(これはかなり個人差があるでしょう)。

たぶんですが、この、「いつかやる/多分やるリスト」は更新の時系列というか、押し出しファイリング形式にしておいて、長らく注意を向けていないものは、自動的に消えるとか、字が薄くなるとか、消す提案をプログラムがしてくれる、とか、そういうインターフェースがあったらいいのではないかと思うこの頃です。

※この記事はR-styleに掲載した記事のクロスポストです。


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