『ウェブはグループで進化する』(ポール・アダムス)
※当記事は、メルマガWRM第98号(2012/08/13)からの転載です。
副題が"ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」"である本書は、タイトル通り現代の情報伝達の形を考える上で重要な役割を持っています。
いくつかの分野を引きながら、私たちのコミュニケーション・ネットワークがどのような形をしているのか、それはどんな性質を持っているのかを解説してくれる一冊です。
専門的で込み入った話はほとんどないので、分かりやすい入門書として位置づけられるでしょう。
さて、まず「ソーシャルウェブ」という言葉からみていきましょう。
Twitter、Facebook、Google+といったサービスはSNSに分類されています。ソーシャルネットワークサービス、の頭文字を取ったものですね。このSNSの普及以降、ウェブ上で「ソーシャル」という言葉を頻繁に見かけるようになりました。頭にソーシャル付けておけば流行っぽいだろう現象です。
しかしながら、socialという単語は、「社会の」とか「社会的な」という意味の言葉です。
つまり、「ソーシャル〜〜」という言葉は、「社会的〜〜」という意味になります。「ソーシャルネットワーク」も「社会的人間関係」となり、社会的でない人間関係ってなんだよ、みたいなツッコミも発生してきます。
あるいは「ソーシャルメディアの社会性の是非」みたいなよくわからない言葉も見かけます。もともと社会性があるものなのですから是非もへったくれもありません。
実際「ソーシャルネットワークサービス」とは、ウェブ上で構築されるソーシャルなネットワークを提供するサービス、というぐらいの意味しかありません。ただ、「ウェブ上で」という言葉が省略されがちなので、ややこしくなりがちなのです。
なので、ウェブソーシャル(ウェブ上の社会)という言葉や、ソーシャルウェブ(社会化するウェブ)という言葉が出てきたのは大変ありがたいところです。
さて、本書のテーマは大きく三つあります。
一つは、ウェブがソーシャル化してきていること。表現を変えれば、私たちは「社会」を__現実世界でそうしてきているのと同様に__ウェブ上に構築しようとしている、とも言えます。
二つ目は、インフルエンサー理論への反対、あるいは懐疑。大多数の人に影響を持つ人(インフルエンサー)なんてホントにいるの? あるいは頼りになるの? ということです。これはマーケター向けの話になっています。
三つ目が、私たちの行動は周り(環境)に影響されるということ。これはこのメルマガのジブンのトリセツで扱っている行動経済学のテーマでもあります。
乱暴にまとめると、次のようになるでしょうか。
私たちは頻繁に情報を交換する、あるいは「日常」を共有する人たちに影響を受ける。そして、それはリアルだけではなくネット上の人間関係にも及ぶ。そのネット上の人間関係は特殊なものではなく、私たちのリアルの人間関係とそれほど大きく違ったりはしない。その特徴は小さなグループがたくさんあるということだ。だから、マーケターはそのグループに反応してもらえるような情報提供をしよう。
さらに、次のような提案もなされています。
人々がスマートフォンなりタブレットなりを持ち、日常的にSNSを使い始めれば、企業もそれに併せた形で情報提供を行わないと効果がでないし、むしろ初めからそれを意識した「コンテンツ」を作らないと情報が人々に届くことはないだろう。
本書の内容は大きく頷けるものばかりです。ただ、話題が豊富であるが故に、一つの話題についての掘り下げがやや浅い点と、本当に「インフルエンサー理論」は退けてしまって大丈夫なのかという疑問が、私の引っかかるポイントです。
このあたりはもう少し検討が必要になるでしょう。
以上のようなことをまるっと踏まえると、次のような疑問が私の中で立ち上がってきます。
「ソーシャルウェブ時代に、私たちはどのように振る舞えばよいのだろうか?」
これについては、本書や関連書籍を漁りながら考えていこうと思います。
以上です。
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