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『思考のエンジン』第五章「論理的ディスコースのダイナミズム」のまとめ

『思考のエンジン』第五章のまとめです。

この章には何が書かれているのか?

「よい文章」を書くための技術。その思想的整理が行われている。

そもそも何を持って「よい文章」とするのかには、当然のように権威が伴う。著者の見立てでは、西洋における「よい文章」とは、プラトンからの流れをくむ、論理的整合性を持つ文章。

本来そうした論理性は、西洋の中のごく一部の知的界隈の人々が組み上げたたものだったが、それをブルジョワジーが社会を統制するための原理として採用し、それがそのまま「西洋化」のシンボルになってしまった。

「いやいや、それはおかしいだろう」とさまざまな批判が為されてきたわけだが、ともあれ「よい文章」を、論理的整合性を持つ文章だと素直にしてしまうと、ロゴス中心主義をそのまま肯定することになってしまうので、なんとかしたい。その辺はデリダの試みが参考になる。

で、登場するのがアウトライン・プロセッサー。現在では「アウトライナー」と呼ばれることが多いツール。

このツールはまさに論理的整合性を持つ「アウトライン」を組み立てるのにベストなツールだと理解されやすいが、実際は違うと著者は述べる。

論理的なディスコースを解体し、新たなディスコースを脱構築するための非常に強力な武器

構造を「つくる」ためのツールというよりは、規定の構造をいったん「こわし」、そこから新たに組み建て直すことがアウトライン・プロセッサーの役割であると述べられている。

たしかに「アウトライン」に固執することは、文章を規範的・固定的にしてしまう。一方で、整えられたアウトラインは読みやすい。そこで、アウトラインをつくり、組み換え、つくり、組み換えという開かれたプロセスを通すことで、アウトライン形式のメリットを享受しながらも、論理的整合性に縛られない文章の書き方ができるようになる。

本文ではデリダの抹消記号を参照しながら話は展開していくが、もう少し踏み込んだ検討が欲しかったようにも思う。

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