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二種類のやること整理 / コアとフレームの循環的決定 / 壁法リターンズ / RSP:xmlのitem内の探索 / WorkFlowyのSend Toハック」

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2023/02/13 第644号

はじめに

ポッドキャスト、配信されております。

◇第百二十一回:Tak.さんとMinutesと手書きについて 作成者:うちあわせCast

ひさびさのうちあわせCastは、インスピレーションを受けた新しい企画と、最近の二人のアナログツールについてお話しました。謎のシンクロニシティーが発揮されていてなかなか面白かったです。

よろしければお聞きください。

〜〜〜新書大賞〜〜〜

中央公論.jpにて、2023年の新書大賞が発表となりました。

◇新書大賞|中央公論.jp

1位から3位は、『現代思想入門』『映画を早送りで観る人たち』『人類の起源』の三冊。ちょっとした自慢ですが、この三冊は倉下は既読です。どれも面白かったですね。

4位以下のラインナップはこんな感じ。

・『世界インフレの謎』渡辺 努(講談社現代新書)
・『聞く技術 聞いてもらう技術』東畑開人(ちくま新書)
・『スピノザ』國分功一郎(岩波新書)
・『22世紀の民主主義』成田悠輔(SB新書)
・『80歳の壁』和田秀樹(心理・教育学)(幻冬舎新書)
・『人権と国家』筒井清輝(岩波新書)
・『ファスト教養』レジ-(集英社新書)
・『日本共産党』中北浩爾(中公新書)
・『司馬遼太郎の時代』福間良明(中公新書)
・『陰謀論』秦 正樹(中公新書)
・『田中耕太郎』牧原 出(中公新書)
・『他者と生きる』磯野真穂(集英社新書)
・『中国哲学史』中島隆博(中公新書)
・『射精道』今井 伸(光文社新書)
・『新疆ウイグル自治区』熊倉 潤(中公新書)
・『マスメディアとは何か』稲増一憲(中公新書)
・『会話を哲学する』三木那由他(光文社新書)

さすがにこの全部は読んでいませんが、『聞く技術 聞いてもらう技術』や『スピノザ』はお勧めできる一冊です。

こんな感じで毎年一回作られるランキングは、何が一番優れた本なのかを決めるというよりは、「へぇ〜、こういう本も出てたんだ」と再確認する上でもたいへんありがたいものです。皆さんもぜひチェックしてみてください。

〜〜〜アリスまでもう一歩〜〜〜

ふと思い立って、ChatGPTさんにお願いしてみました。僕の秘書のように振る舞ってくれませんか、と。

◇ChatGPTさんとの会話「秘書ごっこ」 - 倉下忠憲の発想工房

使い勝手がよいわけではありませんが、ある程度「それっぽい」ことをしてくれます。音声入力だけで「タスクリスト」を管理してくれるのです。もちろん、siriやアレクサなども似た機能がありまさすが、文章の自然な理解の程度で言えば、ChatGPTの方がはるかに上手です。特に「四番目のタスクは終了しました」という文言だけでリストを修正し、修正したリストを表示してくれるところなんかは実に気が利いています(窓の近くにいる人に「暑いですね」と言うのに似ています)。

あとは、タスクを登録したり、スケジュールをセッティングするだけでなく、全体のタスク量を調整してくれたり、予定の甘さを指摘してくれたり、そろそろ確定申告の準備を始めたほうがいいよとそれとなく諭してくれたりするAIが生まれれば、かなり「アリス」に近づいてくるでしょう。
*『アリスの物語』に登場するAIのことです。

今から楽しみです。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のストレッチ代わりにでも考えてみてください。

Q. 有効な人工知能が登場したら、何を手伝ってもらいたいでしょうか。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。今週は少し長めの記事2つと、ノーマルサイズの記事3つでお送りします。

二種類のやること整理

前回は、「心の整理」について考えました。タスクという情報を整理することで、自分の心を整理していくこと、ある種の決定を行うこと。それがタスク管理における心の整理です。

その話を踏まえて、今回は「やることの整理」について考えていきましょう。

■ 「やること」の整理

前回までの話をまとめると、「やることの整理」と呼びうる行為には二種類の"高さ"があることがわかります。

まず、たくさん存在している「やること」の中から今(ないし今日)やることを選ぶ、という整理です。デイリータスクリストを作ったり、その順番を整えて実行したいものから上に配置していく、といった作業がこのレベルの「やることの整理」です。

言い換えれば、そこで行われる「やること」の整理は、もうすでに「やること」だと決まっていることを配列するものです。もちろん、そうした整理ですら三体問題くらいの難しさが発生することもありますが、それはレアケースでしょう。たいていは、サブウェイでメニューを選ぶ程度の難しさに留まります(これが難しい人もいるのは承知しています)。

■「やること」地獄な現代

上記のレベルだけでタスク管理を理解していると、どこかの時点で躓いてしまうでしょう。なぜなら、現代社会は個人の「やること」が際限なく増えるベクトルを持っているからです。

ここでなぜそうなっているのかを探求するのはやめておきましょう。端的にキーセンテンスだけを並べると、集団ではなく個人に責任が置かれるようになったから、消費・広告が強力に人を動員するようになったから、個人がエンハンスされすぎているから……、あたりが挙げられるかと思います。

なんであれ、ごく普通にメディアと世間に接しているだけで、いろいろなことが「やること」として降りかかってくる、というのが現代社会生活であるように思います。

そうした状態において、すでに存在する「やること」をどう整理(というか配置)するのかを考えるだけはまったく足りません。もっと上流の(あるいは低級の)「やること」整理が必要です。

■はたして「やること」なのか

そうした"高さ"における「やることの整理」は、目の前にある情報(あるいは頭に浮かんでいる情報)が、はたして自分の「やること」なのかどうかを考える作業を意味します。「やること」にするのか、しないのか。それを決める行いとしての「整理」です。

この「やること」の整理は、ある意味できわめて簡単であり、別の意味できわめて難しくあります。

まず「難しさ」から考えていきましょう。何がどう難しいのか。

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