思いの整理 /ブログであって、ブログでないもの/否定的なメッセージは言い方に気をつける

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2019/02/14 第434号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。 毎度おなじみの方、ありがとうございます。

今年は「読書量復旧」を、小さな目標として掲げています。

「目標」というか、まあそうなったらいいな、くらいの願いなのですが、そのために「読書手帳」なるものもつけ始めましたし、HonkureやR-styleでの書評記事も少しずつ増やしています。

で、そのおかげかどうかはわかりませんが、1月の読書を振り返ってみると、たしかに読書量は増えていました。

1月の読了本
『矛盾社会序説』
『FACTFULNESS』
『クリエイティブ・スイッチ』
『西田幾多郎 言語、貨幣、時計の成立の謎へ』
『意味がない無意味』
『グッドバイブス ご機嫌な仕事』(献本でいただいた本)

合計6冊。ここに、かなりの数の漫画とライトノベルが加わります。

これまでの私の人生の平均では、一年間に100冊程度読了が水準なので(漫画は除く)、だとすれば一ヶ月は7〜8冊というところですが、概ねその数字に近いところに着地しました。基本的には良い傾向と言えるでしょう。

もちろん、本を読むために新しい読書時間を神様が授けてくれたわけではなく、何か別の時間が削減されているわけですが、そのことはiPhoneのスクリーンタイムがはっきり示してくれました。ほぼ毎週、iPhoneを見ている時間が減り続けているのです(ちなみに、上記はすべて紙の本です)。

「体重を減らしたければ、運動しましょう」くらいに自明のことですが、本を読むには、やっぱりSNSとは少し距離を置く必要があるのでしょう。これはまあ、私が Twitter中毒すぎるせいかもしれませんが。

〜〜〜物を動かすコスト〜〜〜

以下の記事を読みました。

いろいろ物議を醸しそうな内容ですし、そうはいってもこれからの出版業界が向き合わなければならない問題でもあるわけですが、それはそれとして、「書籍を返品する物流費を減らす」という一文が目に止まりました。

よくよく考えてみれば、本を返品するときにも、当然「物を動かすための費用」(物流コスト)がかかります。でもって、返本が前提で納品が動いている日本の出版業界は、そのコストは「織り込み済み」になっています。しかし、「買い切り」にしてしまえば、そのコストを解放できます。

そもそもAmazonのような超効率的企業から見れば、日本の出版業界の物流は無駄が多いのでしょう。「売れるかどうかわからないけど、どうせ返品できるので書店に置いておく」という本のために動く物流は、あまり利益には貢献していなさそうです。そこにメスが入るのは、至極当然の流れでしょう。

とは言え、です。

もちろん、「買い切り」は利益率を改善するでしょうが、それと共に「どんな本を、どの程度発注するか」という根本的なビジネスのやり方をも変えてしまう点を忘れてはいけません。そのシフトによって、書店に並ばない(取り扱われにくい、入手しにくい)本が増える可能性はいつでもあります。

しかし、そうした手を打たない限り、厳しい状況はじわじわと増大していくだろうという予想もまた否定できません。着地点探しは、非常に難しくなりそうです。

〜〜〜Firefox Side View〜〜〜

最近、FirefoxのSide Viewをよく利用しています。

Side View - Firefox add-ons
https://addons.mozilla.org/ja/firefox/addon/side-view/

名前の通り、右(ないし左)サイドにページを開く機能で、ここにScrapboxの「デイリーページ」を表示させて使っています。

一つの画面で二つ以上のページを並べて表示させる機能であれば、Vivaldiのタイリングがなかなか優秀なのですが、一度固定化した(≒タイリングさせた)ページを組み替えるのが面倒、という問題があります。

その点、このSide Viewは、サイドバーのページを常に開きっぱなしにしておき、本体のページはいつも通り自由にウェブブラウジングできます。つまり、私の使い方であれば、常にタスクリストを表示しておけるわけです。で、これが存外に便利です。

最近は、Webブラウザ上で行う作業も多いですし、「脱線」もまたWebブラウザ上で起きるので、いつでも「今日の作業」が目に入る環境というのは、作業を進めていく上では良い「レール」となってくれます。

逆に、ここにTwitterなどを表示させてしまったら、生産性に致命的なダメージが発生しそうです。要注意ですね。

〜〜〜いかなる本を書くか〜〜〜

一時期、「タスク管理概論」的な本、つまりタスク管理のマニアックな話や体系的な話をまとめた本を作ろうと考えていたのですが、ふと冷静に身の回りを見渡してみると、そもそも「タスク管理とはなんぞや?」という人の方が多いことに気がつきました(たぶん、かなり遅めの気づきです)。

どう考えても、「タスク管理とはなんぞや?」という人に、「タスク管理概論」を提示するのは好手とは言えません。「インターネットって何?」という人に、シャノンの情報理論を提示するようなものです。そもそも、まず手にとってもらえないでしょう。だったら、投げる球を変えるしかありません。

「タスク管理」という概念が普及していないならば、マニアックな話や学問的体系よりも、まずもっと多くの人にそれを知ってもらい、実践的体験を重ねてもらう方が大切でしょう。たとえば、そう、「タスクリストのつくり方」というような、実践的な話をするのです。

というわけで、今はそちらの方向での企画案を考えています。たぶん、これはこれで──すでにタスク管理を実践している人にとっても──面白い本になりそうな予感があります。

〜〜〜うまいタイトルのつけ方〜〜〜

たまたまAmazonで、「ファスト&スロー」を検索したら、面白いタイトルの本を見つけました。

おそらく、KDPによるセルフパブリッシング本でしょう。で、このタイトルのつけ方が実にうまいな、と感じた次第です。

Amazonで本を探すときは、かなりの部分、タイトルを使って検索します。で、上の本のように著名な本のタイトルを含んでタイトルをつけておけば、そのような検索のときにヒットしやすいのです。

書店では、似た内容の本を集めて「コーナー」が作られるので、それを意図した本作りもきっと行われているでしょうが、このタイトルづけは、もっとダイレクトにそれを狙った方法と言えるでしょう。検索時代の類書作り、なんて言い方もできるかもしれません。きっと今なら、『「FACTFULNESS」に学ぶニュースの読み方』とかがイケそうです。

まあ、もともとの本の版元や著者から苦情が飛んでくるリスクはあるわけですが……。

〜〜〜見つけた本〜〜〜

今週見つけた本を三冊紹介します。

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 「宇宙は何でできてるの?」
 「ビッグバンの時には何が起こったの?」
 「ダークマターって何?」
 「宇宙で僕らはひとりぼっちなの?」
 まだこんなにも解明されていない宇宙の謎を、
 世界最高峰の解説+超わかりやすいマンガで読む!
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 本書は、ビデオゲームを一つの芸術形式として捉え、その諸特徴を明らかにすることを試みる。スペースインベーダー、ドンキーコング、テトリス、パックマン、スーパーマリオブラザーズ、ドラゴンクエスト、電車でGO! ――多くの事例をとりあげながら、ビデオゲームを芸術哲学の観点から考察し、理論的枠組みを提示する画期的な一冊。
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 >>
 生産性を高めるために何が必要なのか。「イノベーション」「教育・人的資本投資」「働き方改革」「経営の質」「規制改革」「グローバル化」「都市・地域経済」「財政・社会保障」―。気鋭のエコノミストが、広範な視点から、エビデンスに基づいて生産性と経済政策をめぐる論点を整理。真に有効な処方箋についての考え方を提示する。
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〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のストレッチ代わりにでも考えてみてください。

Q. 「常識を疑え」が常識になったら、私たちはどうしたらよいでしょうか。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週もやや大きめの一記事を含めた、三記事でお送りします。

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2019/02/14 第434号の目次
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○「思いの整理」 #BizArts3rd
 GTDが実際に何をやっているのかを考察します。

○「ブログであって、ブログでないもの」 #やがて悲しきインターネット #これからのブログの話をしよう
 これから10年のブログに向かう思索です。

○「否定的なメッセージは言い方に気をつける」 #情報発信の作法
 いかに伝えるかは、かなり大切です。

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

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○「思いの整理」 #BizArts3rd

前回は、GTDとタスクシュートについて紹介し、その中でGTDが〈思い〉の整理であると書きました。

今回は、その点について掘り下げます。

GTDは、二つの情報処理系を持ちます。

一つは、有名な「ワークフローとそこから生まれるリスト」です。

inboxという〈箱〉に「気になること」をすべて保存し、それを「これは何か?」という問いを重ねることで、しかるべき着地点(リスト)へと導く。GTDと聞いて、ぱっとイメージされるのがこのワークフローでしょう。

一見このワークフローが中心のように思われますが、実はこれを支えるもう一つの情報処理系がGTDにはあります。それが、「高度」です。

※「高度」について詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。

GTDの「高度」は、6段階のレベルを持ちます。

高度0:<次に取るべき行動>
高度1000:<プロジェクト>
高度2000:<コミットメント>
高度3000:目標とゴール
高度4000:<ビジョン(構想)>
高度5000:<目的・価値観>

まず、実際に取れる具体的な行動を見つめる視点(高度0)。次に、そうした行動を生み出す発生源となるプロジェクトを見つめる視点(高度1000)。そこから、さらにそれを生み出すより高い視点へとどんどん上昇していき、最後には(人生の)目的や自分自身が大切にする価値観(世界観)という一番高い場所に辿り着きます(高度5000)。

GTDが面白いのは、一般的なセルフマネジメントではこの最高高度から話をスタートさせるのに対し、むしろ重視しているのは高度0である、<次に取るべき行動>だという点です。つまり、ボトムアップの思想がGTDにはあります。

どれだけ素晴らしいビジネスモデルを思い描いても、机の上が散らかっていたのでは、企画書を書き始めることもできません。それに、日常生活に「気になること」が散らばっていたら、集中力を発揮させるのも難しいものです。だからまず、(些事に思えるような)「気になること」を適切に処理していきましょう、とGTDの提唱者であるデビッド・アレンは説きます。

私はこの考え方に、全面的に賛成します。おそらく、一定の真実すら含まれているでしょう。しかし、ツッコミどころがないわけではありません。それについては後述します。

さて、この二つの情報処理系から、GTDの二つの思想を読み取ることができます。

・「気になること」は必ず分類できる
・すべての「視点」は階層構造下に配置できる

まず、一つめです。GTDが提示するワークフローは、以下の着地点を持ちます。

・次に取るべき行動リスト
・プロジェクトリスト
・カレンダー
・いつかやるリスト
・備忘録ファイル
・連絡待ちリスト
・資料
・ゴミ箱

ワークフローを見る限り、「気になること」は、必ずこのどこかに着地します。「その他」も「例外」もありません。自分の頭に思い浮かんだ「気になること」は、絶対にこのどこかに落ち着くことになっています。

つまり、上のリストセットには、完璧な網羅性があります。MECEなリストセットなのです。

この前提があるからこそ、私たちは「水のような心」に近づくことができます。なにせ、これらのリストセットには収まりきらないものがあったら、「あれ、他にも何かあったんじゃなかったっけ」という疑念が消えません。それはGTDが求める心の状態とは程遠いものです。

どんな「気になること」であれ、必ず上記のリストセットのどこかには位置させられる。それがGTDの思想の一つです。

もう一つの思想が、階層構造です。

とは言え、GTDのリストセット自体は階層構造にはなっていません。せいぜい「プロジェクトリスト」と「次に取るべき行動リスト」が情報的に親子関係になっているくらいで、その他はバラバラな状態です。

しかし、「高度」は違います。高度は、綺麗な階層構造になっています。

「目的・価値観」から「ビジョン(構想)」が生まれ、「ビジョン(構想)」から「目標とゴール」が生まれ、「目標とゴール」から「コミットメント」が生まれ、「コミットメント」から「プロジェクト」が生まれ、「プロジェクト」から、「次に取るべき行動」が生まれる。これは明確な親子関係と言ってよいでしょう。

当然のように、階層が上に行くほど、要素の数は減り、最後に残るのは「私」という主体ただ一つとなります。その「私」の下に、いくつかの「目的・価値観」がぶら下がり、それぞれの下にまたいくつかの「ビジョン(構想)」がぶら下がって、それが「次に取るべき行動」まで続いていく。そんな階層構造がこの「高度」の視点にはあります。
※だからGTDを何かのツールで実施すると、「視点」の階層構造が生まれます。

さて、なぜこの二つの思想が、「思い/行動」の整理には必要なのでしょうか。

まず注意を向けたいのは、私たちの「気になること」は大量にあり、しかも粒度がバラバラだ、ということです。そのままの状態では、とても脳は処理しきれません。処理しきれないと常に「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」という感覚がつきまといます。

「処理しきれない」とは、全体が見えないことを意味しますし、それはつまり見えない敵と戦うのと同じような苦しさがあります。かといって、すべてを覚えきれるように暗記術を学ぶのは回り道すぎるでしょう。

そこで、情報の圧縮です。チャンク化とも呼べます。

高度0から少しずつ視点を上げていけば、最後には必ず人間の認知で扱える程度の個数に落ち着きます。<目的・価値観>が100個も200個も並ぶ、ということはないでしょう。せいぜい5~10個程度になるはずです。で、それくらいの数ならば、人の認知は処理できます。

そして、それ以外の要素すべてが、その<目的・価値観>の下にぶら下がっている、というのがGTDの高度の視点です。つまり、その5~10個を把握すれば、全体を把握したのと同じ(ような)心理的効果が得られます。

水のような心(≒安心)はここから生まれるのです。自分は、自分に関することをすべて手中におさめている、という感覚。それが鍵なのです。

もしこの階層構造が完全なものでないとしたらどうなるでしょうか。<目的・価値観>という傘では網羅できない「気になること」があるとしたら、私がすべてを把握するためには、それらのはみ出たものも一緒に把握しなければなりません。しかし、その数が多ければ、成し遂げることはできず、安心もまたやってきません。

だからこそ、高度のピラミットは完全でなければならないのです。少なくとも、そうでなければ、水のような心は得られないでしょう。

このことは、ワークフローの話とも関わってきます。

先ほど確認したように、ワークフローはあらゆる「気になること」を処理できると想定されています。むしろ、そうでなければならないのです。

もし、ワークフローが処理できないものが出てきてしまえば、リストの網羅性が崩れるだけでなく、ピラミッド構造も崩れてしまいます。これはGTD的に危うい状況です。

だから、GTDを実施するためには、自分の頭に湧き上がる「気になること」を、ワークフローで処理できる形に「変換」しなければなりません。たとえちょっと違う気がしても、「とりあえず」どこかのリストに入れてしまうことが必要なのです。

それができなければ、完璧なGTDは回せません。そして、──私が想像するに──それができる人とできない人はやっぱり分かれそうです。

その昔、GTDのワークフローを、コインソーターにたとえたことがあります。

上からコインを入れると、サイズによって自動的に選別されて、しかるべきコイン置き場に流れ着く。そういう機械のことです。

今思えば、あのたとえは不十分なものでした。コインソーターにおいては、選別される対象はすでに具体的な実体を持っています。そして、それが変化することはありません。

しかし、GTDの「気になること」を選別していくワークフローでは、むしろワークフローを始める前までは、「気になること」はまだ漠然とししており、そこに自問をぶつけることで、具体的な実体を形成する、というイメージの方が近いのです。その過程があるからこそ、「変換」が可能となります。つまり、「これは、プロジェクトということにしておこう」ということが起こるのです。

そもそも、コインソーターに関しても、それが日本の硬貨用のものだったとして、500ウォンを入れたらどうなるのか、という問題があります。おそらくは500円玉のところに入り込むことになるでしょう。GTDは、基本的にそれで良しとしますし、そうでなければ、成立しない仕組みになっています。

先ほど書いた、"「気になること」は必ず分類できる"という思想とは、つまりはそういうことです。

タスクシュートは行動を扱い、行動は常に実体を伴うので、その整理はあまりややこしくはなりません(≒ややこしさには一定の上限があります)。

しかし、「思い」は別です。脳内はとっちらかっており、しかも私たちは時間的な近さや、その粒度にかかわらず「気になって」しまいます。その「気になること」を、整理しようと思えば、一定の秩序系が必要で、脳の処理能力を考えれば、そこにツリー構造を与えるのは理に叶っています。

が、問題はそのツリー構造を作るために(そして維持するために)、見えない変換が働いている、ということです。

その見えない変化がまったくないか、あるにしても数が少ない人ならば、GTDとうまく付き合っていけるでしょう。しかし、そうでないならば、GTDだけではやがて苦しくなってくるはずです。

なにせ私たちは、(先週号で書いたように)スタートとして混沌なのですから。

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倉下忠憲

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倉下忠憲

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