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構造で整理する、構造を整理する / リミテッドなノートをつくる / 記事のネタはどう得られるか

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2024/01/15 第692号


はじめに

Scrapboxに新しい機能が追加されていました。

◇Scrapboxの新規作成と検索ボックスの融合 | 知的生産の技術

ページを新規作成し、タイトルを入力しているとその語句が検索ボックスにも反映される、という機能です。単に反映されるだけでなく、検索結果の総数も横に表示されるようになっています。

これまでのScrapboxでは、新規作成ページからページを作ると、タイトルを決めた後になって同じページ(あるいは似たページ)を作っていたことがわかる仕様になっていました。だから、できるだけ新規作成ページからではなく、ページリンク経由で新しいページを作る方が便利だったのです。

そうしておくと、どこかのページでブラケットを作り、新しく作ろうと思っているページのタイトルを入力していると、似たタイトルのページがサジェストされるので、既存ページの有無が確認できるからです。

今回のこの機能によって、わざわざ既存ページのリンクからページを生成することなく、既存ページの有無が確認できるようになりました。地味ながら便利な機能です。

しかも、新しいボタンやショートカットキーを覚える必要がありません。ユーザーがごく普通に新規ページを作ったら、その上部に──しかも使い慣れた検索ボックスに──いくつか文字列が表示されるだけです。

「地味で便利な機能を、ユーザーへの負荷をできるだけ小さい形で実装すること」

こういうScrapboxの精神は大好きです。

〜〜〜気が変わる〜〜〜

このメルマガでも、うちあわせCastでも何でもいいのですが、自分がやっている何かしらのノウハウを紹介すると、だいたい次の週くらいにはそこから「ズレる」傾向があります。紹介したノウハウをアレンジしてみたり、まったく違ったやり方を試してみたりと、何かしら変化が生じるわけです。

おそらくですが、外に向けて発表したことで、心の中に区切りが生まれたのでしょう。情報としても外部に保存されたわけですから、スナップショットも残ったことになります。だから、ちょっと変えてもいい、という気持ちになるのかもしれません。

逆に言うと、そうして発表しない限り、私はずっと「最中」にいる状態なのだとも言えるでしょう。

もちろん、ある程度の期間そのノウハウを続けていて、もうそろそろ一区切り付きそうだという感覚があるからこそ、「よし、ちょっと発表してみるか」という気持ちになっているのでしょうから、発表すれば即気持ちが切り替わるとは言えません。時間というのはどうしても必要です。

ただ、時間があればそれだけで気持ちの区切りが生まれる、ということでもないでしょう。それは人類が数々の儀式を絶やすことなく続けていることからもわかります。

その意味で、ノウハウをトランジットし続けていくためにこそ、定期的な発表という儀式は必要なのだと思います。

〜〜〜アイコンを上書きする〜〜〜

最近ちょこちょこ使っているMacのBikeというアウトライナー。

最初は手に馴染まなかったショートカットも徐々にマッスルメモリーにインプットされ、使い勝手も上がっていたのですが、どうしても気になることがありました。アイコンの色がひっかるのです。

私が使っているアプリのアイコンは青系のものが多く、青の補色であるオレンジも少々混じっています(私がFirefoxを好んでいる理由はもたぶんここにあります)。

しかし、Bikeのアイコンは黄色です。これがかなり目立つのです。command + tabでアプリを切り替えようとしたときに、視覚的にすごく主張してきて、それだけがどうしても気になっていました。

だからやっぱりWorkflowyがいいな〜と思っていたのですが、ふと閃きました。アイコンの画像を上書きすればいいんじゃね? と。

以前、Macのファイルやフォルダのアイコンを上書きしたことがあったので、同じ手法を使えばできるはずと思ってやってみたら、ビンゴ。

◇Macのアプリのアイコンを上書きする | 倉下忠憲の発想工房

かなり簡単に書き換えることができました。大満足です。

でもって、こういうのが「パーソナルコンピューター」だよなと思います。だって、私のための環境であり、私のためのデスクトップなのですから、私好みに書き換えられて当然、というのは少々傲慢かもしれませんが、ある程度融通が効いて欲しいと願うのは行きすぎたものではないでしょう。

皆さんはいかがでしょうか。コンピュータを初期状態からどれだけ「カスタマイズ」して利用されていますか。よろしければ、倉下までお聞かせください。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。今週は、構造と整理について、時限式のノートのつくり方、記事のネタ集めについてお送りします。

「構造で整理する、構造を整理する」

まずは、アウトライナーを使っているときの話をします。

たとえば、アイデアメモを書き留めていく使い方をしているとしましょう。着想を走り書きメモとして書き留める形か、タイトル+本文のような形で書くか、いくつかタイプはありますが、なんにせよ一つの階層にそれらを並べていくことになるでしょう。

・A
・B
・C
・D
・E
・F

これらが一定の長さになると、つまり項目の総数がある程度増えてくると、「関連するもの」が見つかるようになります。ここではBとCが関係していると思えたとします。それを構造を使って整理するならば、以下のような形がありうるでしょう。

・A
・B
・C
・D
・E
・F

項目Bを折り畳んでおけば、見た目はすっきりします。

・A
・B
・D
・E
・F

一件落着。そしてまた、アイデアメモを書き続けていくことになります。

当然のように、そうして書き続けていけば、さらに関連するものが見つかります。今度は、GとBか関連するものだったとします。その際は、GをBに入れるか、BをGに入れるかが選択肢ですが、深く考えずにGにBを入れたとしましょう。

・A
・D
・E
・F
・G
・B

再び項目Gを綴じておけば見た目はすっきりします。

・A
・D
・E
・F
・G

一件落着です。

では、上記のような「処理」を続けていったらどうなるでしょうか。もっと言えば、そうした処理の先に項目「G」を開いたらどうなるでしょうか。

きっと悲惨な光景を目にすることになるでしょう。メチャクチャ深い階層、粒度がまるで整っていない兄弟項目。それらを目にしても、なんら頭の中が整理されたような感覚を受けないもの。そうしたものが並んでいるはずです。

このような状態は、なぜ生まれたのでしょうか。そして、どうすればそれを回避できるのでしょうか。

■チャンク化

まず「階層」の力を取り上げましょう。

アウトライナーを代表とする再帰的リストを扱えるツールは、複数のアイテムを一つのグループとして扱う操作によって、脳の認知を補助しています。脳もまた、複数の項目を一つのものとして扱う「チャンク」を行っているらしいのですが、それと同じ情報作用を発生させるのが再帰的リストです。

人間が一度に認識できる対象は限られているので、複数の対象をあたかも「一つのもの」として扱うことで、認知的な負荷を下げる。それが再帰的リストの作成で行われていることです。

実際、アウトライナーで複数の項目を集めてグループを作り、それを折り畳めばずいぶんすっきりした感覚が得られるはずです。バラバラに散乱していたものがうまく片づいたような感覚。アウトライナーはそうした感覚を与えてくれます。

これは、「階層構造」という装置(あるいは表現)を使うことで情報を整理した、と言えるでしょう。

■すっきりは得られるが

一度だけのアクションを見れば、上記の話はまったくその通りなのですが、現実の私たちの継続的アウトライナーの利用を見てみると、その通りというわけにはいきません。最初に提示したエピソードのようなことが起こります。

では、なぜ起こるのか。

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