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ナレッジベースで考える / 思考法と行動法 / 思考というプロセス / 枯れたノートツールを使う

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2023/05/22 第658号

はじめに

スタートしたばかりの「うちあわせCast」は完全無料体制で録音できていたのですが(Anchorのおかげです)、現状は録音体制を維持するためにいくらかのコストがかかっています。経費発生です。

とは言え、もともと「うちあわせ」くらいの軽い気持ちではじめた番組なので、サブスクリプションで課金を求めるのはちょっと違う気がしていました。それに忙しかったら収録はお休みするので、継続的な発信がお約束できないのも気にかかるところです。

というわけで、まあいいかとスルーしていたのですが、「買い切りでいいじゃん」というアイデアを思いつきました。一回だけ支援してもらう。要するに募金です。Wikipediaとかでもたまにありますね。

で、たまたま少し前にStripeにアカウントを作っていたので、それで500円の支援ができるアイテムを作ってみました。

stripe:うちあわせCast募金

ついでにnoteでも500円で買える記事も作りました。

◇うちあわせCast募金|倉下忠憲

特に何かしらの「コンテンツ」が含まれているわけではありません。ただただ純粋に「うちあわせCast」の運営に募金していただくだけです。

一瞬「何か、おまけのコンテンツを作ろうか……」と考えていたのですが、結局そうやっていたらなかなか実行できなくなるのは明白です。なので今回は思い切ってストレートに募金だけを募集してみました。たぶん倉下の活動では始めてのことだと思います。

あまり金銭に関して細かいことを言いたくない性格をしているのですが、それで継続性が損なわれるのはよくないことでしょう。それ以上に「ネットの活動は無料でやるべきで、金銭を得ることは不純」みたいな考え方はやっぱり不健全だと思います。

オンラインサロン+インフルエンサー的な界隈だと、よくわからないものに「値段」がついていたりするわけですが、今回の試みはまったく何も「売って」いません。ただ募金を募っているだけです。ねずみ講も情報商材も虚栄心もまったく関係ありません。純粋な厚意の話です。

そういう単純なものの方がわかりやすくていいよな、と個人的には思います。もし単純に支援していただけるのであればよろしくお願いいたします。

〜〜〜Macのステージマネージャー〜〜〜

MacOSをアップデートしたので、「ステージマネージャー」という機能が使えるようになりました。

◇Mac でステージマネージャを使って App やウインドウを整理する - Apple サポート (日本)

一つのデスクトップにすべてのウィンドウを並べるのではなく、いくつかの領域(ステージ)に切り分けて、それぞれにウィンドウを配置しておく、という機能です。

この機能をオンにすると、右(ないし左)側にスタンバっているアプリケーションのサムネイルが表示され、それをクリックするとアプリが入れ替わります。つまり、今表示されているアプリがステージに引っ込み、クリックしたアプリがむにょーんと前に表示されるのです。

特に「すごく使いたい」という気持ちはなかったのですが、せっかくOSをアップデートしたのでこの機能を使っているのですが、Macはそもそも仮想デスクトップ機能があり、それぞれのデスクトップにアプリケーションのウィンドウを配置して使っているので、ステージマネージャーと合わせて使うと少し混乱します。左右という平面に加えて、「奥行き」が生まれたようなものなのです。

で、まったく個人的な意見ですが、二つ程度のアプリケーションの切り替えであれば、わざわざこの機能を使うまでもないなと思います。たとえばテキストエディタとターミナル、みたいな組み合わせなら普通に並べておくだけで問題ありません。

ただ、大きく広げて使うウィンドウが3種類以上存在しているなら結構便利かもしれません。デスクトップがごちゃごちゃするのを避けられます。

とりあえずOSの操作感覚としては結構目新しさを感じますが、それでもイノベーティブとまでは言えません。まったく新しいUIの開発はかなり難しいのでしょう。

〜〜〜続けるために大切なこと〜〜〜

執筆業を続けて10年以上になりますが、これまでの経験からしみじみと思うのは「危ないビジネスや危ない人に近寄らない感覚」って大切だな、ということです。

もちろん仕事をしているのですから、大ヒットを狙える力が重要そうに思えます。しかし、そうしたものは個人の努力以上に運(時機)の影響が大きいものです。頑張るだけでヒットできるなら世界中のクリエーターは出塁しまくっているでしょう。

結局できることと言えば、自分なりに精いっぱいの仕事をしていくだけです。そこでヒットが生まれたら「ラッキー」くらいに思っておく。そういう感覚があれば続けていけるのだと思います。

逆に言うと、続けていかないとなかなかヒットも生まれません。で、そうした継続に致命的な影響を与えるのが「危ないビジネス」や「危ない人」です。具体的にそれがどういうものなのかはここでは言及を避けますが(気になるならミナミの帝王やクロサギやウシジマくんを読んでみてください)、そういうものに近づいてしまうと、継続が頓挫する可能性が跳ね上がります。

むしろ逆向きの構図で捉えるといいかもしれません。健全なビジネスは地味な成果を続けていく中でたまに生まれるヒットがあり、危ないビジネスは高い利益を続けていく中でたまに生まれる大きな落とし穴がある、という対比です。そして、落とし穴にはまると、それまで築いていたものがボロボロと崩れていきます。そうなると後は「場替え」しか手は残されていません。

今「高い利益」と書きましたが、これは単純に高額の収入を意味するわけではありません。そうではなく、提供している価値に対するリターンの比率が高すぎる、ということです。あるいは、提供している価値に盛られた幻想が大きすぎる、と言い換えてもよいでしょう。

だからこれは、単純に詐欺的なものだけを差しているわけではありません。その意味で「危ないビジネス」というよりは「不健全なビジネス」と表現するのが近いでしょう。

そうした不健全なビジネスやそれに関わっている人は常に「場替え先」を探しています。いろいろ手を伸ばしているのです。だからこそ、それを避ける感覚を磨いておくことが大切になるのでしょう。

さて、あなたはどうでしょうか。身近で「不健全なビジネス」の匂いを嗅ぎ取ったことはありますか。そしてそれはどのような匂いだったでしょうか。よろしければ倉下に教えてください。

というわけでメルマガ本編をスタートしましょう。今回は、「考える」ことに関わる四つのエッセイをお送りします。

ナレッジベースで考える

前回は、「ナレッジベースは考えるための場所である」を確認しました。知識の保管庫として捉えるのではなく、活動の最前線である"基地"だと捉えるのです。

再々書いていますが、これは重要なポイントです。ナレッジという品物があり、それをどんどん取り込んでいけばいい、という捉え方は「基地」ではなく「倉庫」のメタファーでしょう。そうした用途で用いるなら、ナレッジベースではなく、ナレッジストレージと呼ぶのがふさわしいはずです。

しかし、そうして知識をどれだけ蓄えたとしても新しい知の創出には至れません。PKMの本義は満たせないわけです。

もちろん、ナレッジストレージが不要というのでもありません。よく整備されたナレッジストレージは知の創出に役立ってくれます。この点にややこしさがありそうなので、先に整理しておきましょう。

■コードとプロダクト

たとえばプログラマがいるとしましょう。コードを書き、プログラムというプロダクトを完成させる人です。

そうしたとき、プログラミングに必要な知識をナレッジストレージに取り込んでいくのは有用でしょう。頻繁に調べる記法などをまとめておけば時間短縮に貢献しますし、コードの部品を保存しておけばそれを呼び出して使い回すことができます。効率的です。

こうした知識の倉庫は間違いなく便利な存在ではありますが、そのイメージを引きずったままPKMのナレッジベースを捉えてしまうとズレが生じます。

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