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『人を賢くする道具』「第7章 ものには、それが収まるべき場所がある」のまとめ

この章には何が書かれているのか?

全体を通して、情報整理の手法の発展とその難しさが検討される。

まず、次の二つの情報整理道具が対比される。

  • ウートン特許の机(引き出しがいっぱいある机)

  • 縦型ファイルキャビネット

二つの違いは、「階層構造」を作れるかどうか、という点が大きい。単にフラットに並べるだけでは人が「どこに何がおいてあるのか」を思い出せなくなるので使えない。

一方で階層構造作ることで、その階層を辿ることで情報を見つけやすくなる。これは人間の脳のチャンクと関係しているだろう。階層構造を作ることで、一つの階層を認知で把握できる数に限定できるという寸法だ。ただし、著者も指摘しているように、これは「ある規模」までならばうまくいくが、それを越えると破綻するとある。作業部屋に集まってくる資料くらいの整理は可能だが、それを越えるとなると階層が膨れ上がりすぎて手に負えなくなるのだろう。

そこで別の視点が模索される。それがマガキンズ金物店だ。このお店は30万種の品物を扱っているのだが、それらの品物を用途に合わせて分類し、それぞれの区画に専門知識を持った担当者が配置される。

お客は、自分が欲しいものが並んでいそうな場所に行き、あとはその担当者に相談すれば、必要なものを見つけてくれるか、あるいは必要なものが見つけられそうな担当者の場所に誘導してくれる。

この場合、お客はお店の階層構造のすべてを把握している必要はない。「在る程度」近い場所に行けば、その後は担当者(一種の知的エージェント)がアシストしてくれる。

著者はこの構図こそが、情報を(もっと言えば知識を)分類するときに役立つのではないかと提案する。

でもって、2023年の現代から言うとそれはまったくその通りだろう。現状は、ChatGPTなりBardなりに自分が知りたいことの輪郭線を伝えることができたら、あとは彼らが一種の知的エージェントとして振る舞ってくれる。答えをそのままくれることも多いし、答えに含まれるキーワードを手がかりに別の質問をすることもできる。

もちろん、現状で完全に満足できる働きができるわけではないが、探し手が階層構造と直接対峙しなくてもすむ「整理」というのが行われつつあるとは言えるだろう。

面白いのは、著者は空間配置を利用するナビゲーションシステムを否定しているのだが、一方でその利用方法を研究が現代でも行われている点だ。空間を知覚する能力は、人間の能力の中でもかなり「根深い」ものなので、それを利用することは有用であるように思う。一方でそれは、たしかに無限に誓い情報は扱えないのかもしれない。

この辺の話がどのように着地するのか。今から楽しみである。

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